↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
何回、転生させたら気が済むんですの!?  作者: 一雲一人


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
58/71

第58話 『荒野のガンマンとライト兄弟』

町長室に入るなり、ミルドレッド町長は手下の兵たちに「このガンマンのチャールトンを牢屋へ入れろ!」と命じる。

……が、裏ではチャールトンの耳元で「すまんが、少しの間だけ辛抱してくれ……」と必死に小声で囁いていた。


「皆様、大変申し訳ない! このような無様な失態をおかしたことを深くお詫び申し上げます! ……ところで皆様は、本日はどのようなご用件でここへ来られたのでしょうか?」


頭を下げる町長に対し、シオン様が優雅に口を開く。


「草原を歩いておりましたら、こちらに若者たちが走って参りましてね。なんでも『龍がどうこう』と騒いでおりましたので、気になって少し立ち寄ってみたのですわ」


「ああ……それでしたらもしや、隣町で『飛行機』とかいう乗り物を研究している兄弟が飛ばしたものと、勘違いしたのかもしれませんな。重ね重ね申し訳ない」


すると、その言葉を聞いたライトが「ねえねえ!」と可愛らしい声で尋ねた。


「その兄弟って、どこで実験をしてるの!?」


町長のミルドレッドは、「あちらの丘の傾斜を使って、坂道を駆け下りながら何かやっているようですよ」と付け加えた。

ライトはなぜか、その兄弟の名前が自分と同じ「ライト」というだけで、興味津々なご様子である。


「見てみたいのですか?」


シオン様が優しく微笑んで問いかけると、ライトは嬉しそうに頷いた。


「では、少し見に行ってみましょうか」


こうして一行は町を出て、指定された丘へと歩みを進めた。



やがて見えてきた丘陵地帯では、翼の短い奇妙な乗り物(飛行機)に乗り、下り坂を勢いよく駆け下りていく二人組の姿があった。


「おーい! 君たち!」


ジュンが声をかける。


「君たちが『ライト兄弟』かい?」


「そうだ! それがどうしたんだ!?」


「いやね、その翼の短さじゃ浮き上がらないんじゃないかなと思ってさ」


いきなり通りすがりに知った風な口を利かれ、兄弟はムッとして言い返した。


「ハッ! 素人が知ったようなことを抜かし上がりやがって……!」


「だって、ほら!」


ジュンはライトの背中を指さした。だが──ライト兄弟の目には、可憐な羽衣にちょこんと付いた、ただの可愛らしいイミテーション(飾り)にしか見えていなかったのだろう。


「最低でも、体に対してこれくらいの比率がないとダメなんだよ!」


大真面目に熱弁するジュンに対し、兄弟は「こいつ、服の飾りを指さして何を熱くなってるんだ……?」と言わんばかりに、呆れ果てた視線を送るのだった。



だが──可憐な羽衣を纏ったピクシー姿の蝶々のような小さな羽を見せられたところで、人間が乗る機械の翼の参考になるはずもなく、納得いくわけがなかった。


すると、何を思ったのかライトが誰もいない広々とした丘の上で、ドカンと本来の姿へと変身してみせた!


ドスンと地響きを立てて現れたのは、美しくも圧倒的な威容を誇る巨大な飛龍(ドラゴン)。ライトは自慢そうに胸を張り、優雅に立ち尽くしている。


突然現れた規格外の巨獣に、ライト兄弟は腰を抜かしそうなほどの動揺を隠せなかった。……が、物作りへの執着からか、二人の視線は恐怖よりも、その背に広がる巨大で美しい翼へと吸い寄せられていた。


兄弟は恐る恐る歩み寄るとその綺麗な翼に触れる。


「ほらね?」


そこへジュンが誇らしげに付け加えた。


「この身体の大きさと、翼の面積の比率……これこそが、空を飛べる最大の秘訣なんだよ!」


「なるほど……! 翼の表面積が圧倒的に足りなかったのか……!」


目の前の巨大なドラゴンと説得力ありすぎる翼の比率を前に、ライト兄弟は深く納得するのだった──。



レオンが不思議そうにジュンへ尋ねた。


「ジュン、お前はあの羽や機械の構造を知っているのか?」


「もちろんさ! 以前いた世界では、あんな機体どころか、もっと大きくてライトやレフトくらいの翼を持った飛行機が、空をたくさん飛んでいたんだからね」


「ほう! そうであったか!」


感心するレオンの横で、シオン様も上品に頷いてみせた。


「ええ、私の知っておりますその『飛行機』という乗り物も、まん丸い形をしていて、私の移動速度と同じくらいで飛んでおりましたわ!」


「それUFOでしょ!!」


シオン様のどこかズレた飛行機認識に対し、ジュンは思わずド直球のツッコミを入れるのだった──。


「だけどさ、今度はレフトの蝶々の羽のままで飛んで見せてよ」とジュンが言った。


レフトはピクシーの姿のまま、蝶々の羽をパタパタと動かして飛んでみせた。


「なぜ飛べるか分かるかい? これはね、4枚羽だからなんだよ!」


そう言うと、レフトはさらに言葉をつけ足した。


「だから、その飛行機も一枚羽だと強度が弱いから、重ねて二段の羽にすれば少しは飛べると思うよ!」


それを聞くなり、二人は一目散に坂を下って帰っていった。


(あーあ、言っちゃいましたね……)


しかし、ジュンの物知りぶりには毎回驚かされる。


「な! ジュン兄ちゃんはしゅごいでちゅねー!」


そう言って、肩に乗っているリップに顔を近づけた瞬間――リップの「ぷにゅぷにゅパンチ」が顔面にヒットした!


痛がるレオンの横で、ジュンは少し照れくさそうに笑っていた。


「さて遊んだし、そろそろ歩きますか? シオン様」


レオンは、リップに叩かれた頬を撫でながら言った。


「どうしましょうか? ここも少し面白そうですけどね」


シオンのその言葉を聞いた瞬間、(あ、これ完全に居残りになるやつだ……)と、ジュンとレオンは顔を見合わせ悟った。


「でしたら、僕が街に行って宿屋があるか確認してきます」とジュンが提案した。


だが、シオンは首を振る。


「あそこの街へ行っても、美味しそうなものがあるとは思えませんわ! この辺り……そうね、あのライト兄弟が降りて行った方で野営でもいたしましょう」


そうして、話はあっさりとまとまった。


少し歩くと、十数軒の家が立ち並ぶ街外れの田舎にたどり着いた。


そこからさらに離れた、丘と丘の間に挟まれた隠れ場のような場所――周囲からは何も見えない絶好のポイントに陣を取る。


シオン様はいつものように異空間ストレージからバサバサと道具を取り出し、それをジュンとレオンが並べていく。

その楽しそうな様子を見て、ライトとレフト、そしてリップもいそいそと手伝い始めるのだった。





(第59話へつづく)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。