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何回、転生させたら気が済むんですの!?  作者: 一雲一人


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第56話 草原の果てしなき丘陵

一行が出発してしばらく進むと、目の前に巨大な転移門が見えてきた。


「到着いたしましたぞ、シオン様」


レオンが呟いたそのとき、天井からなのか、シャンシャンシャン……と鈴の音が徐々に大きく響き渡り、門がゴゴゴゴと重厚な音を立てて開き始める。


そこは『観測者の間』。この場所に佇む観測者の名は、アスラ・アルデヒド。


本来であれば「飛龍のお供を連れていること」という試練の問いがあったはずなのだが、門が簡単に開いたのは、レフトとライトがすでにその答えを知っていたからだった。


ふたりは調子のいい声を上げる。


「観測者さん、何か話したいことがあるなら聞いてあげるよ!」


「しばらく誰とも話してないから、話したくてウズウズしてるでしょ?」


図星を突かれた観測者は、その透き通った身体の額から冷や汗を流した。これにはシオンも驚きを隠せないでいる。


「この先には何がありますの?」


シオンが尋ねると、観測者はタジタジになりながら告げた。


「この先、しばらく行った先の草原に……集落があるはずだ。さして苦労はせぬはず、創造主様がしばらく寛いでおられた里だからな」


「そうですか。それでは失礼して行ってみましょう」


言い残すと、アスラ・アルデヒドはすうっと気配を消した。


シオン様御一行が創造主の足跡を追って先へ進んでいくと、確かに見渡す限りの美しい丘陵地帯へと辿り着いた。


「こんな広々とした草原なら、飛龍の姿になっても何の障害もありませんわね。レフト、ライト、少し羽を伸ばしてもよろしくてよ?」


シオンが優しく声をかけると、二人は歓声をあげて本来の巨大な姿へと戻り、気持ちよさそうに大空へと飛び立った。


高く上空へ舞い上がった二人が、風に乗って叫ぶ。


『あの丘の先に、町が見えますよ! ちょっと様子を見てきます!』


「おい、待て待て!」


レオンが制止する間もなく、二人は勢いよく空の彼方へ姿を消してしまった。


「……素敵な草原ですわね」


シオン様がうっとりと呟いたかと思うと、なんとその場で異空間から慣れた手つきでティータイムセットを取り出し始めた。


「えっ……シオン様、街に行かないんですか……!?」


ジュンが思わずツッコミを入れていると、様子を見て戻ってきた二人が、草原に突如現れた白いテーブルと豪華なケーキセットを目にするやいなや──瞬時に愛らしい人型(妖精姿)へと変身した。


二人は目を輝かせ、「シオン母さん、私たちの分も……!」と言わんばかりの愛くるしい仕草でじっと見つめてくる。


「ふふ、お座りなさいな」


シオン様が優雅に腰掛け、ケーキを皿に取り分けて二人の前に差し出した。ジュンも諦めたように苦笑しながらシオン様からティーカップを受け取り、二人の前にそっと置く。


「それでは……街の様子はどうでしたか?」


「はい! ここから丘をふたつ超えたすぐ先にありました! でも、街の大きさは観測者が言っていたような『集落』というより、かなり立派な街になっていましたよ。きっと観測者のデータが古いんじゃないでしょうか?」


「なるほどな。ではライト、その街には城壁があるのか?」


レオンの問いに、二人が首を横に振る。


「ううん、無かったよ!」


「なるほど……。もし創造主様がしばらく寛いでおられた場所なのだとしたら、魔獣の類いは出ないのかもしれませんな」


「そうかもしれませんわね」


そんな会話を交わしていると、街の方角から5人ほどの影がこちらへ向かって走ってくるのが見えた。


「シオン様、向こうからこちらへやって来る者がおりますよ!」


ジュンの声にシオンが振り返ると、広大な草原の真ん中で優雅にティータイムを楽しむ異様な集団に向かって、相手は「おーい!」と声を張り上げている。


ジュンは立ち上がり、少し距離を詰めて声をかけた。


「どうかされたのですか?」


やって来た5人は息を切らしながら、目の前の光景に呆気にとられて口々に叫んだ。


「こんな場所でテーブルと椅子……!? 一体何をしているんだ!?」


「誰なんだお前たちは? 旅人か!?」


「この上空に飛龍が飛んでこなかったか!?」


さらに、ジュンの尖った耳を目にした一人が「……エルフか!?」と目を丸くする。


その問いに対し、シオンたちは一瞬で、しかし事もなげに答えてみせた。


「景色の良い場所でしたので、少し休憩をしながらティータイムを楽しんでおりますのよ」


シオンが優雅に微笑むと、レオンが立ち上がりいつもの重厚な口調で堂々と胸を張る。


「我々は旅の者だ。こちらは賢者シオン様、アザゼルの神聖ジュン、ピクシーの双子ライトとレフト、私が剣聖レオン、そして──この者がスライムのリップだ!」


レオンの紹介に合わせて、リップがぷるんと揺れながら一言。


『ヨロシク〜』


「「「「「ひぇえええええっ!?」」」」」


その瞬間、5人はガクガクと膝を震わせ、その場に盛大にへたり込んだ。


巨大な飛龍の影を警戒してわざわざ追いかけてきた割には、まさか「喋るスライム」を目撃して腰を抜かしてしまうとは、何とも情けない連中だった──。


「でお前たちは何者なのだ?」


レオンがへたり込んだ5人に向かって問いかけると、彼らは腰を抜かしたまま必死に言葉を絞り出した。


「わ、我々はこの先にある街の者で……空を飛んでいる大きな翼を持った龍を見かけて、追ってきたんだが……!」


「おー! そうかそうか!」


その言葉を聞くやいなや、ライトとレフトが嬉しそうに声をあわせ、その場でドカンと本来の巨大な飛龍の姿に変身してみせた!


「「ひぇっ…………!?」」


目の前に突如現れた圧倒的な巨龍の姿を目にした瞬間、5人は息を呑み、そのまま見事なまでに白目を剥いて気絶してしまったのだった。


「あらあら……情けない方々ですわね」


シオンが呆れたように呟くのと同時に、二人は「食べかけのケーキ!」と言わんばかりに、速攻で可愛らしい羽衣を首に巻いたピクシーの姿へと戻っていた。


「まあ、仕方がありませんわね」


クスリと笑ったシオン様が優雅に指先を払うと、気絶した5人の体がふわリと宙に浮かび上がり、そのまま宙に担ぎ上げられる形となった。


こうしてシオン様御一行は、気絶した5人をぷかぷかと浮かせながら、悠然と街の中へ入っていくのだった──。






(第57話へつづく)

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