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何回、転生させたら気が済むんですの!?  作者: 一雲一人


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第47話 『食後のデザートの名前』

三人は昨夜、シオンが魔素溜まりごと魔獣を排除した場所まで空間移動していた。


「シオン様、ここで遊んだのですか……?」


ジュンがあ然とつぶやく。


「えぇ! 実に楽しかったですのよ」


「この有様なら、でしょうな……」


レオンが呆れたように溢すと、ジュンがすかさず重ねた。


「完全に派手にやらかしてますよね! あの山、かろうじて残っていてよかったですよ」


「あら! そうですわね」


シオンは何事もなかったかのように微笑むと、目的の洞窟の入口へとやって来た。


「シオン様、灯りをお願いしますぞ。……あまり眩しすぎないようにお願いしますね」


「わかっておりますわ!」


「では、参りましょうか」


一歩足を踏み入れると、中は思いのほか狭かった。

「ずいぶん狭いですわね」


「確かに。こんな狭い入口から、本当に大迷宮へとつながっているのでしょうか……?」


レオンが不思議そうに首をひねる。


ジュンは心の中で(レオンは体が大きいから尚更狭く感じるんだろうな。僕にはちょうどいいくらいだけど)と思ったが、

「どれがちょうどいいんですの?」

「あ! いや、なんでもありません!」

鋭く突っ込んできたシオンに、ジュンは慌てて手を振った。


「それにしても、あの王様……なんと言いましたかしら。ハーブティーしか出しませんでしたわね。王宮の中へのお誘いだったので、少し豪華な食事でも出してもらえるかと期待しましたのに」


「確かに」


「この狭い場所じゃ、落ち着いて食事もできませんね」

「確かに」


「わたくし、まだ朝食をとっていませんのよ!」


「確かに」


「……この洞窟、広げますか?」


あいづちを打っていたレオンが提案すると、シオンが不敵に微笑んだ。


「そうですわね!」


ズズズ……とシオンが言った瞬間、洞窟の壁と天井が豪快に遠ざかっていく!


「あーれー! いつ見ても迫力が半端ない……」


「確かに」


空間が一気に広がり、豪勢な広場のようになった。


「……近くに何かいますかね?」


「確かに。……広げた空間の向こう側、洞窟の狭い奥に一体だけ反応があります」


ピョン、ピョン!


「ん? あ! スライム……? 初めて見ました! 可愛いっすね。ちょっと触ってもいいですか?」


「好きにしなさい」


シオンは興味なさそうに答えると、広げた空間で慣れた手つきで食事の準備を始め出した。


スライムに興味津々のジュンを、レオンが横目で見つめる。


(あれの何が可愛いんだ……? 噛みつかれるぞ?)


「レオンさん、噛みつく口も歯もありませんよ」


ジュンが二、三度ツンツンとつついた。


するとその時、スライムがジュンの指の動きに合わせるように体の一部を細長く伸ばし、指先にそっと重ねてきた。


ジュンは驚きと、意思疎通できた喜びで目を輝かせる。


「シオン様! このスライム、連れて行ってもいいですか?」


「ジュン、後で食べるおつもりですの?」


「いやいや! 食べませんって! ペットにするんですよ」


「構いませんけれど……食べればプルンプルンで美味しいらしいですのよ?」


「確かに。……美味そうですな」


二人の言葉を聞きつけたのか、スライムが焦って汗(のような体液)を飛び散らせたように見えた。


「ダメですって! 可愛いんですから!」


危うく食後のデザートにされかけたスライムは、こうしてギリギリで命拾いをするのであった――。


これまで食後の洗い物はレオンが率先して行っていたのだが、毎回数枚の食器を割ってしまうため、見かねたジュンが作業を引き継いでいた。そのおかげで皿が割れることはなくなったのだが、今後はなんと、このスライムが食べ残し処理と食器の掃除を引き受けることになる。


食事中、膝の上で大人しくしているスライムに、ジュンは自分の食事からパンを一切れ分けてやった。

すると、パンはスライムの体内にスッと溶け込むように取り込まれていく。


(すごい! その神秘的な消化の仕方に、ジュンは思わず目を見張る)


「面白い……面白すぎる!」


食後、ジュンが洗い物を始めると、その脇でスライムが自ら食器を体内へと取り込んでいくのが見えた。


しばらくしてスライムが体外へ吐き出した食器は、汚れ一つなくピカピカに磨き上げられている。


その綺麗になったお皿を見て、ジュンはスライムが自分の手伝いをしてくれているのだと確信し、嬉しくなるのだった。


ふと、シオンがその食器を見つめ、感心したように声を漏らした。


「……このワイングラスの輝き、驚きですわ! ジュン、そのスライムに名前をつけてあげ――」


「僕が名付けますから! ご安心ください!」


シオンが言い終わる前に、ジュンは慌てて割り込んだ。

「あら、そうですの? 分かりましたわ」


シオンはそれだけ告げると、特に気にした様子もなく口をつぐんだ。


(あぶない……! 任せていたら、絶対シオン様は『センター』とか『ママプリン』とか名付けるに決まってるんだから!)


ジュンは胸をなでおろしながら、心の中でそう呟くのだった。


「さて、そろそろ出かけますか」


ジュンの肩に乗ったスライムは、すっかり肩に馴染むように体を平らにして、まるでくつろいでいるように見えた。


歩きながら、ジュンはスライムの名前をあれこれと思い巡らせる。


「いい名前を思いついたのだが――」


「いいえ、結構です! 僕が責任を持って名付けて、お世話しますから!」


口挟もうとしたレオンをジュンは速攻で制した。


「うーん……『アクア』! うん、いいぞ! これにしようかな!」


「それ、ただの『水』ではありませんの?」


ジュンがつぶやいた途端、シオンがすかさず口を挟んだ。

「それなら『リプル』の方がよっぽどいいと思いますわ。『さざ波』という意味ですけれど」


「流石シオン様。私はグラスを綺麗にするから『グラス』が良いかと思ったのですが……シオン様提案の『リプル』、可愛いですな!」


レオンのネーミング(グラス)の酷さに引きつつ、ジュンは激しいショックと戸惑いを隠せなかった。


(適当に変な名前をつけると思っていたのに……僕の『アクア』の安直さよりも、遥かに良いネーミングじゃないか……!)


予想外のセンスを見せつけられ、ジュンはぐぬぬと悔しそうに唸る。


「じ、じゃあ……シオン様がそこまで言うなら! リプルにしておきますよ!」


こうして、危うく食後のデザートにされかけたスライムは、「リプル」という可愛らしい名をシオン様から授かり、正式にこの一行パーティーの一員となったのだった――。




(第48話へつづく)

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