第46話 『炭酸の思い出と消えた足跡』
街について!
あっと言う間に話題にのぼる。
ギルドに、隣接する居酒屋で、たまにはこの様な店での、食事も風情が、あっていいものですな。
話す三人を、当巻に見つめる大勢の視線ぎ刺さる。
明日から、大迷宮の場所でも聞いて回りますわよ。
シオン様、先に休むと言って二階の部屋へと行った。
その後、ギルドの中でも血の気の多そうな者たちがレオンとジュンの机に集まる!
「お前達、どこから来た! 昼間の騒ぎで偉そうにしやがって……こんなエルフのガキがよぉ!」
男が嘲笑いながら鼻先を突き出してきた瞬間、ジュンは寸前まで顔を近づけ、鋭い眼光で男の顔面を真っ向から睨み返した。
一触即発の空気が漂い、緊迫したその時――。
「何の騒ぎだ!」
凛とした声とともに騎士団第一隊長が現れると、威勢のよかった冒険者たちはクモの子を散らすように退散していった。
隊長は三人に対し、この国の国王・バラガサイータルとの正式な晩餐会を「後日執り行う」という通達を伝えにきたのだった。
――翌朝。
ジュンとレオンは、昨夜の晩餐会の件をシオンへと報告した。
「あら、そんなことがありましたの?」
シオンは扇子をパチンと閉じると、少し不満そうに首を傾げた。
「しかも『後日』って、一体いつのことですの? せっかく、昨夜おふたりで楽しそうに夕食を召し上がっていらした頃、わたくしは創造主様の足跡の手がかりを探していたというのに。その途中の密林で、禍々しい死霊を纏った魔物を見つけて屠ってきたところですのよ? ですので、今日にでも先へ向かおうと思っていましたのに……。」
まさかの凄まじい夜の成果に、レオンとジュンは冷や汗を流す。
「そ、そうでしたか、シオン様! では私が……」
「いや、僕が王城へ行って、今日にしてほしいと伝えてきます!」
焦って立候補するふたりに対し、シオンは優雅に微笑みながら言い放った。
「いいえ。これから『三人で』参りますわよ。」
言った次の瞬間――。
バシュッ……! と視界が歪み、三人はすでに王城の目と鼻の先(門前)に立っていた。
「「「く、くせ者ーーーーッ!!!」」」
目の前に突如として現れた三人に対し、腰を抜かしかけた門番が大声を上げる。
その悲鳴を聞きつけ、城内から槍を構えた兵士たちがゾロゾロと湧き出すように集まってきた!
「な、なんだ!? 敵襲か!?」
「槍を構えろ! 囲め囲め!」
物々しい雰囲気に包まれる中、騒ぎに気づいたあの騎士団第一隊長が前線へと駆け込んできた。
「静まれ! 槍を収めろーーーっ!!」
慌てて兵士たちを制止する第一隊長の叫び声が、王城の前庭に響き渡る。
「これはこれは……賢者シオン様、剣聖レオン様、そして……神聖ジュン様!? 一体どうされたのですか!?」
急すぎる訪問(というか空間跳躍)に額の汗を拭う隊長へ、シオンは事も無げに微笑みかけた。
「実は、急ぎこれから旅立たなければならなくなりましたの。せっかくのお呼び立てではございますけれど、お別れのご挨拶に参りましたのよ。」
「な、なるほど……! しばしお待ちください! おい、誰か皆様を城前の花壇にある東屋まで丁重にお案内しなさい! 私はその間に王様へご報告してくる!!」
隊長は兵士たちに手早く指示を飛ばすと、大慌てで城の奥へと走っていくのだった――。
「シオン様、綺麗な花壇ですな」
「まあまあですわね」
「あーあ、誰かコーラとか持ってきてくれないかなぁ」
「ジュン、なんですの? そのコーラとやらは」
「あー、あれですよ。コカの実を煮詰めて、シュワシュワの炭酸と甘味で味付けした飲み物なんですょ
こっちに来てから飲んでないから、思い出したら無性に飲みたくなっちゃいました。とびきり美味いんですよ!」
「ソーダ!」
「……炭酸だけに!」
「?」
「……あ、いや、なんでもないです。そういえば炭酸って確か、天然でも湧いている場所があったような無かったような……。今度見つけたら知らせますね!」
「……炭酸だったら、ソーダでも良いのか……?」
そんな話をしていると、なんと国王自ら、大慌ての様子でやって来た!
「誰か、お茶を!」
バラガサイータル国王が叫ぶ。
「まったく、気が利かぬ連中だ」
そう吐き捨てると、国王はこちらに向き直った。
「これは賢者シオン殿。我はバラガサイータルと申す。このたび我が国の護衛騎士と荷馬車を救っていただいたと聞き及んでおり、お呼び立てしたのだが……急な旅立ちだとか!」
「……」
「誠に残念だが、もし今しばらくお時間があるなら、簡単ではございますが中でくつろいでいかれよ」
「シオン様、それでしたら少しお話をしていきませんか?」
ジュンの提案にシオンが頷き、三人は王城の中へと入って行った。
「最近、ああいった類の魔物が頻繁に出て困っておりましたので、実に助かりました」
「昨晩、その出処を見つけましたけれど、あれは魔素溜まりから湧き出ていましたわ。相当な数がいましたけれど、魔素溜まりごと排除しておきましたから、もう出ることはないと思いますわ」
「な、なんと……!」
国王と取り巻きたちが驚きで騒ぎ立てる。
「魔物は五十前後でしたかしら。少し遊んで差し上げましたのよ。ところで、この辺りに大迷宮などはございませんこと? ……足跡がなくなってしまいましたので」
(実は昨夜、シオン様が魔素溜まりを粉砕した際、探していた創造主様の足跡まで木っ端微塵に吹き飛ばしてしまっていたのだった)
「国王? 何の足跡ですか?」
「シオンが……いいやいや、こちらの話ですわ!」
国王の側近が口を開いた。
「確かにあの森の山脈にある洞窟から、大迷宮へと通じる抜け道があると聞いたことがございます。……ですが、誰も確かめに行った者はおりませぬ!」
「おぉ、それはありがたい情報だ。感謝する」
レオンが頷く。
お茶を飲み干すと、シオンが立ち上がった。
「それでは、これで失礼いたしますわ」
言い終わるやいなや、三人は国王たちの目の前から一瞬で姿を消したのだった――。
(第47話へつづく)




