第44話 『名付けは多数欠で』
「シオン様ーーーっ!!」
頭の中に、神々からの必死すぎる叫び声が直接響き渡った。
シオンが優雅に眉をひそめる。
「うるさいですわね……脳裏で叫ばないでくださる? で、飛龍がどうかしましたの?」
「それが……身体は小さくてとても可愛いのですが、まさかの双子なのです!!」
さらに脳内通話の画面(シオンが改造した双方向モニター)越しに確認すると、性別は男の子と女の子だという。
シオンは面倒そうに扇子をあおぎながら、事も無げに告げた。
「あら、双子ですの? 名付けなど面倒ですから……ライトとレフトでよろしいのではありませんこと?」
すかさずジュンとレオンがツッコミを入れる。
「ええっ!? シオン様、いくらなんでも適当すぎませんか!?」
「左と右の英語なだけですぞ! 飛龍の名前にしては簡単すぎます!」
「あら、右・左よりは現代風でよろしくってよ?」
そこへモニター越しに神々も参戦してきた。
「シ、シオン様! 『ルビー』&『サファイア』などはいかがでしょうか!?」
さらに、どこから聞きつけたのか魔王代理のバンガルまでもが乱入してくる。
「余にも名付けさせろ! 『バルール』と『ガルール』だ!」
レオンも真剣な顔で提案する。
「いや、騎士らしく『ベーク』と『ジーク』はいかがでしょう!」
一方、ジュンは静かに夜空を見上げ、ロマンチックに呟いた。
「僕は……『ステラ』&『コメット』が良いと思うな」
全員が譲らず、好き勝手にネーミングを主張し始める。
結局、朝になっても話し合いは全くまとまらなかった。
「……埒が明きませんわね。多数決で決めましょう」
シオンの一言で、全宇宙を巻き込んだ多数決が行われることになった。
しかし、「どの国の民で多数決をとるか」で再び揉めたため、天界のアイテムを使った厳正なるくじ引きで決めることに。
「シオン様! こんなところで遠隔会合をしている場合ではありませんな! 天界へ向かいましょう!」
「そうですよ、シオン様! 直接行きましょう!」
レオンとジュンに拝み倒され、シオンは二人を転移陣で天界へと送り届けた。
天界に到着するや否や、ジュンは宮殿にあった「純金製の綿棒」を1本拝借し、先端にこっそり赤い色を塗って手の中に隠した。
「はい! この一本だけ赤く塗られた金色の綿棒を引いた国の民で、多数決を行いましょう!」
ジュンの用意した運命のくじ引き。
厳正なる抽選の結果──見事に赤いくじを引き当てたのは、人間界のザートナル国王であった!
「まさか余が引き当てるとは……!」
指で残った綿棒をつまみ、冷や汗をかくザートナル国王。
こうして飛龍の名付け多数決は、ザートナル王国の人間界で取り仕切られることとなったのだった。
──そして、人間界のローザ伯爵領。
なぜかレオンとジュンも当然のように着いてきていた。
「せっかく故郷の近くへ戻るのですから、たまには顔を出しなさい」という流れになり、三人は現在、シオンの実家であるローザ家の城に滞在していた。
豪勢な食堂で、シオンの両親であるガリレオ伯爵と妻カーメラとの食事会が開かれる。
「おお、シオン! 久しいな、よくぞ戻った!」
ガリレオ伯爵が感極まった様子で迎える。
「あら、たまたま近くを通りかかっただけですわ」
シオンは優雅にハーブティーを口に運んだ。
(……まあ、ここのご両親とはあまり関わりがございませんからね。何しろ途中で何度も転生しておりますので、ぶっちゃけ顔もハッキリ覚えておりませんわ)
1万年以上、そして既に107回もの転生を経て、実家の記憶すらほとんどロストしているシオン様であった──。
さて、ザートナル王国の街中には、飛龍のネーミング候補と「誰が考えたか」が明記された巨大な掲示板が張り出されていた。
それを見た国民たちは、口々に噂し合う。
「おい見ろよ、この『ライト&レフト』って名前……シオン様のご考案だぞ!」
「言わずもがなだな……! 我らが選ぶべき道はひとつしかない!」
シオン様の圧倒的な威光(と過去の無双ぶり)を知る民衆の心は、投票前からすでに完全に決まっていたのである。
──そして迎えた、運命の発表日!
「パカパカパンパンパーン!!」
ファンファーレとともに、高らかなラッパの音が王都じゅうに響き渡る。
壇上に立った兵士が、緊張した面持ちで開票結果を大声で読み上げ始めた。
「これより、双子の飛龍のお名前結果を発表いたします!」
「エントリーナンバー1! 神々ご考案、『ルビー&サファイア』……3票!」
(※神々本人が隠れて人になりすましの票)
「エントリーナンバー2! レオン様ご考案、『ベーク&ジーク』……3票!」
(※レオンの熱血騎士ファンたちの票)
「エントリーナンバー3! 魔王代理バンガル様ご考案、『バルール&ガルール』……ぜ、ゼロ票!!」
(※バンガル絶望で立ち上がれない)
「エントリーナンバー4! ジュン様ご考案、『ステラ&コメット』……58票!」
(※ロマン派の若者たちから大健闘)
「そして……エントリーナンバー5! シオン様ご考案、『ライト&レフト』……」
一拍置き、兵士は喉が千切れんばかりの大声で叫んだ。
「……1万票ーーーーーっ!!! 決定ですね〜! 満場一致で決定です!!」
「うおおおおーーーっ!!」
王都じゅうに地鳴りのような歓声が響き渡った。
……事実、この国の国民たちは「ライト」と「レフト」が単なる【右】と【左】という意味だなどとは、露ほども知らなかったのである。
「『ライト&レフト』……なんという神秘的で響きの良いお名前なんだ!」
「さすがシオン様! ハイカラで素晴らしいセンスでおられる!」
街の至る所で、国民たちが感動に目を潤ませながらそう語り合っていた。
こうして、神々の思惑も、魔王代理の野望も、ジュンのロマンもすべてなぎ倒し、双子の飛龍の名は『ライト』と『レフト』に正式決定したのだった──。
この後の天界
決まったぞ!ライト&レフトだ。
若手神たち??
三至高神どっちがライトですか?
その後、神々達の天界で、揉めに揉め、ライトがオス飛龍でレフトがメス飛龍に決まったのでした。
(第45話へつづく)




