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何回、転生させたら気が済むんですの!?  作者: 一雲一人


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第39話 『禁域の入口』

王都を後にした三人は、北を目指していた。

目的地は、誰も帰ってこないと言われる禁域。


王の言葉では、そこは広大な湿地帯らしい。


だが、シオンには別の目的があった。


「……やはり、この辺りですわね。」


ふわりと宙へ舞い上がる。


低空を滑るように飛び、水面や木々の隙間を見渡す。


何もない。


そう思えば、今度は一気に上空へ。


眼下に広がる森と湿地を見渡しながら、魔力感知を最大まで広げる。


「また上ですの!?」


レオンは思わず空を見上げた。


「何を探しているんだ?」


「創造主様の足跡ですわ。」


あまりにも自然な答えに、レオンは聞き返すことすら諦めた。


シオンは何度も高度を変えながら飛び続ける。


高く。


低く。


そして、水面すれすれまで降下した、その瞬間――


「……見つけましたわ。」


シオンの視線が、一点で止まる。


空中に、極めて薄い光の粒子が線となって続いている。


他の二人には、まったく見えない。


その痕跡は湿地の奥へと続き……


禁域入口の古びた立て看板、その目前で――

ぷつり、と消えた。


「ここで終わり……?」


レオンが首を傾げる。


しかしシオンは静かに首を横へ振った。


「いいえ。」


扇子で足元を示し、優雅に微笑む。


「終わったのではありませんわ。」


「……下へ潜りましたの。」


三人は同時に、静かな湿地の水面へ視線を落とした。


「まさか……入口は、水の中だったのか。」


レオンは思わず息を呑んだ。


「誰も帰って来られない理由が、少し分かる気がしますな。」


ジュンは水底へ続く階段を見つめ、頭をかく。


「マジか〜。湿地の下に階段なんて、誰が想像するんだよ……。」


シオンは優雅に頷いた。


「創造主様は、どうやらこちらへ向かわれたようですわ。」



「ですが、行方知れずになった者たちは、恐らくあの霧の濃い向こう側へ行ったのでしょう。」


レオンは水底へと続く石階段の先を見据え、静かに頷く。


シオンは優雅に微笑み、レオンへ視線を向けた。


「レオン。探しに行かれるのですか?」


レオンは迷うことなく答える。


「もちろんです。騎士として、見過ごすことはできません。」


シオンは霧の先を見つめ、ふと扇子を閉じた。


「霧が濃くなるほど、互いを探すのも大変でしょう。」


レオンとジュンが頷く。


「そこで、お二人の脳内へテレスコデバイスを進呈しますわ。」


「……脳内?」


「えっ、今なんて?」


二人が聞き返した瞬間、シオンは二人の額を人差し指で軽くつついた。


「これで完了ですわ。」


「早っ!?」


「目を閉じれば起動しますの。」


「暗視装置として機能するほか、周囲を探知するレーダーも備えておりますわ。」


「生命体は青い光点。敵意や危険性の高い生命体は赤い光点。そして、私たちは黒い光点で表示されますの。」


「便利でしょう?」


ジュンは目をぱちぱちさせる。


「いや……便利とかいうレベルじゃねぇだろ。」


レオンも静かに息を吐いた。


「毎度のことながら、シオン様の魔法は常識の遥か上を行きますな。」


ただし、一つだけ注意がありますの。」


シオンは人差し指を立てた。


「あまりにも離れすぎますと、映像と探知機能は途切れてしまいますわ。」


「おいおい、万能じゃなかったのか。」


ジュンが肩をすくめる。


シオンはくすりと笑う。


「ですが、ご安心なさい。」


「仲間のいる方向だけは、どれほど離れても把握できますの。」


「つまり、完全にはぐれることはありませんわ。」


レオンは深く頷いた。


「それは心強いですな。」


「これで霧の中でも、安心して進めます。」


「それと、もう一つ利点がありますの。」


シオンは穏やかな口調のまま続けた。


「これは安否確認にもなりますわ。」


「……と、言いますと?」


レオンが尋ねる。


「仲間の反応がある限り、生存は確認できますの。」


シオンは淡々と告げる。


「逆を言えば、その反応が消えた時は……命が尽きたということですわ。」


一瞬、場に静寂が落ちる。


ジュンは頭をかきながら苦笑した。


「便利だけど、最後の説明だけは聞きたくなかったな……。」


レオンは静かに頷く。


「ですが、覚悟を持って進む者にとっては、必要な機能ですな。」


シオンは二人を見渡し、優雅に微笑んだ。


「ですから、なるべくお互いの位置を確認しながら進みますわよ。」


「決して無理はなさらないことですわ。」


レオンは力強く頷く。


「承知しました。」


ジュンも親指を立てる。


「了解! 迷子にならないよう気を付けるよ。」


シオンが一歩踏み出した、その時だった。


「!」


レオンとジュンが、ほぼ同時に足を止める。


「敵反応あり! 前方八〇〇!」


「敵反応! 前方八〇〇!」


二人の声が重なった。


「早いですわね。」


シオンは小さく微笑む。


「もう慣れましたの?」


「いや……目を閉じた瞬間、勝手に頭へ情報が流れ込んできたんだ。」


ジュンが驚いたように答える。


レオンも剣の柄に手を添え、霧の向こうを見据えた。


「間違いありません。何かが、こちらへ近づいております。」


「レオン……反応が大きいですわ。」


「ええ! かなり巨大ですな!」


ジュンも目を閉じたまま叫ぶ。


「速い! 飛んで来る! 前方四百! 三百! 二百!」


ゴォォォォッ!!


濃霧を切り裂き、巨大な翼の羽ばたきが轟いた。


「飛竜か!?」


レオンが剣へ手を掛ける。


だが、その瞬間――


シオンは静かに右手を掲げた。


「【全属性魔法極大適性】──消滅デリート。」


一瞬だった。


濃霧から飛び出そうとしていた巨大な飛竜は、咆哮を上げる間もなく、この世界から存在そのものを消し去られる。


パラ……。


パラパラ……。


舞い落ちるのは、きらめく灰だけ。

ジュンは呆然と呟いた。


「……竜だったよな?」


レオンも霧の先を見つめながら息を吐く。


「姿を確認したのは、一瞬だけでしたな。」


シオンは何事もなかったように微笑んだ。


「この辺りは竜の聖域のようですわね。」


レオンは苦笑を浮かべた。


「シオン様がおられたからこそ、我々は助かったようなものですな。」


「このテレスコデバイスがあったとしても、あの速さでは対応できませんぞ。」


ジュンは目を閉じたまま首を傾げた。


「シオン様。このテレスコデバイスって、木々も反応しますよね?」


「ええ。植物も生命ですもの。生命反応として表示されますわ。」


ジュンは霧の向こうを指差した。


「だったら、あれは何です?」


「一本だけ……青い反応が異常に濃いんですけど。」


レオンも目を閉じ、表示を確認する。


「確かに……周囲の木々とは反応がまるで違いますな。」


シオンはその方向へ静かに視線を向け、微笑んだ。


「面白いですわね。」


「どうやら、ただの木ではないようですわ。」


「行ってみますわよ。」


シオンを先頭に、三人は青い反応を目指して霧の中を進んだ。


やがて霧が少し晴れ、その先に一本だけひときわ大きな古木が姿を現す。


太い枝の上には、木々を組み上げた巨大な巣。


レオンは思わず目を見開いた。


「これは……先ほどの飛竜の巣ですな。」


巣の中には、ひとつだけ大きな卵が静かに横たわっていた。


ジュンはテレスコデバイスを確認する。


「あっ! 青い反応の正体って、この卵か!」


シオンは巣を見上げ、静かに微笑む。


「どうやら、親竜は狩りに出ていたのではなく、この子を守るために飛んできたようですわね。」




(第40話へつづく)

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