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第33話 『新たな仲間とアイリの情報』

「それでは、決まり!」


「僕は一緒に行くよ!」


「賢者様、強いし!!」


シオンは小さく微笑んだ。


「では、参りましょう。」


シオンは歩きながら話す。


「……雲の上。」

「やはり、神々が関わっていますわね。」


「ガイアは神々によって、この世界へ送られた可能性が高いですわ。」


「だとすれば、転移の際に何らかの加護を授かっていても不思議ではありません。」


シオンは微笑んだ。


「この重力下でも平然と動けるのは、その加護のおかげなのでしょう。」


ガイアは目を丸くする。


「えっ!? 僕、そんなすごいもの貰ってたの!?」


「そう言えば、あなたのお名前は本当に『ガイア』なのですか?」


少年は頭をかいた。


「あっ、それ違う違う。」


「前の世界では、純一郎って名前だったんだ。」


「でも長いし、みんなには『ジュン』って呼んでもらってた。」


「この世界でも、それでいいよ。」


シオンは小さく微笑む。


「では、ジュン。」


「改めまして、よろしくお願いいたしますわ。」


ジュンは照れくさそうに笑った。


「うん! よろしく、賢者様!」


「創造主様の足跡は、この先にありますわ。」


レオンはふと思い出したように口を開く。


「シオン様。」


「ドワーフの皆へ、ご挨拶はよろしいのですか?」



シオンは少しだけ考え、静かに頷いた。


「本来なら、お礼を申し上げるべきですわ。」


「ですが、今は創造主様の足跡を見失うわけにはまいりません。」


レオンは周囲の岩壁へ目を向けた。


「でしたら、あの岩肌に見える鉱石を少し採掘し、転移魔法であの倉庫へ送り届けてはいかがでしょう。」


「私が掘りましょう。」



その頃――。


ドワーフの王都では、大騒ぎになっていた。


「旅の賢者様と剣聖様……。」


「こんな倉庫みたいな部屋へ閉じ込められたから、怒って出て行かれたんじゃ!」


「いや、それなら扉も窓もそのままなのは、おかしいだろう!」


門兵たちが口々に話している、その時だった。


ドサッ!!


倉庫の中から、何かが落ちる音が響く。


続けて――。


ガラガラガラッ!!


「な、何だ!?」


門兵隊長が慌てて扉を開ける。


すると、一同は息を呑んだ。


「……あぁっ!」


部屋いっぱいに、眩く輝く鉱石が積み上がっていた。


青く輝く結晶。


黄金色に煌めく鉱石。


見たこともない希少な鉱物が、山のように積まれている。


誰かが震える声で呟く。


「こ、これは……。」


「奈落の大迷宮の深部でしか採れない鉱石じゃないのか?……。」


「あの方々は大迷宮を目指してるって言ってたし。」


その場にいたドワーフたちは、言葉を失った――。


その光景を見たサム村長は、目を見開いたまま呟いた。


「……この光景。」


「あの日と同じだ……。」


周囲の門兵たちがサムを見る。


サムは静かに鉱石の山を見つめながら言った。


「あの日、わしの家の前にも、重甲猪グラビボアの肉が山のように置かれておった。」


「誰も姿は見ておらん。」


「だが……。」


「これは、あの時と同じじゃ。」


「旅の賢者様と剣聖様が、わしらへの礼として残してくださったに違いない。」


「……怒って出て行かれたんじゃ、なかったのか。」


「最後に、礼まで残していかれたというのか……。」


門兵隊長は静かに拳を握り締めた。

「……なんという御方たちだ。」


その頃――。


奈落の大迷宮、深淵部。


三人となったシオンたちは、静かに歩みを進めていた。


先頭を歩くのは、剣を携えたレオン。


その後ろには、優雅に日傘を差すシオン。


そして最後尾では、ジュンが辺りを物珍しそうに見回している。


「すごいなぁ……。」


「こんな場所、僕一人じゃ絶対に来られなかったよ。」


シオンは迷宮の奥へ視線を向ける。


「もう間もなくですわ。」


「創造主様の足跡は、この先で途切れています。」


レオンは静かに頷く。


「観測者の間……ですな。」


シオンは微笑んだ。


「ええ。」


「参りましょう。」


観測者の間――。


静まり返った空間に、三人が足を踏み入れた、その時だった。


岩肌に埋め込まれた無数の結晶が、淡く輝き始める。


一粒、また一粒と光の欠片が宙へ舞い上がり、ゆっくりと集まっていく。


やがて、それらは一つの人影を形作った。

透き通るような光の身体。


長い髪をなびかせた、一人の女性。


静かな声が、観測者の間に響く。


「我が名は――。」


「観測者アイリ。」


レオンは思わず息を呑んだ。


「……名前がある。」


これまで出会った観測者とは違う。


目の前の存在は、まるで意思を持っているかのようだった。


すると、アイリは真っ直ぐシオンを見つめ、穏やかに微笑む。


「やっと来てくださいましたね。」


「シオン・ド・ラ・ローザ。」


シオンはアイリを静かに見つめ、小さく微笑んだ。


「……なるほど。」


「これまでの観測者とは違いますわね。」


「歴代の観測者と比べて、私は少し性能が向上しています。」


シオンが首を傾げる。


「それは、なぜですの?」


アイリは淡々と答えた。


「創造主様が、私たち観測者の製作に慣れてこられたためです。」


「初期型には多くの不具合がありました。」


「試行錯誤を重ねるごとに、性能は向上しております。」


シオンはアイリを見つめ、小さく頷いた。


「……なるほど。」


「最初にお会いした観測者には、お名前すらありませんでしたわ。」


「二人目は、お名前こそありましたけれど、説明も所々で聞き慣れない言葉が混ざり、内容も少々分かりにくかったですわね。」


シオンは観測者アイリへ視線を向けた。


「では、お尋ねしますわ。」


「次の世界について、ご存じですの?」


アイリは静かに頷く。


「はい。」


「私は、これまでの観測者より多くの情報へのアクセス権限を有しています。」


「次の世界に関する情報も、一部ですが保有しております。」



レオン。

「それは助かりますな。」


「何の情報もなく転移するより、ずっと安心です。」


「今回は、それを痛感させられましたかな。」


「もし次の世界が海の真ん中だったら、着いた瞬間に溺れてしまいますからな。」


「砂漠なら水がありませんし、空の上なら地面に着く前に終わってしまうでしょう。」


「どんな些細な情報でも、命を守るためには何より大切ですな。」



シオン。


「で、どんな世界ですの?」


「せっかく事前に教えてくださるのですもの。今度は心の準備くらいは、させていただきたいですわ。」




アイリ。


「竜人族の世界です。」


「空には数多の竜が悠々と飛び交い、それはもう見事な光景が広がっているそうです。」


「ただ、地上は広大な湿地帯で、半分ほどが沼地になっているという情報があります。」


低く空気が震え、淡い光を放つ世界転移門が、ゆっくりとその姿を現した。


シオン。


「さあ、新たな世界へ参りますわよ。」



(第34話へつづく)







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