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何回、転生させたら気が済むんですの!?  作者: 一雲一人 (かずも かずんど)


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第32話 『迷宮で出会ったエルフ』

シオンは重力魔法を少しだけ緩めた。


「あなたは、なぜこの奈落の大迷宮にいるのです?」


「何を目的として、この最深部で身を潜めていましたの?



ガイアは慌てて首を横に振る。


「知らないよ!」


「僕だって、さっきあそこの魔法陣から出てきたばかりなんだ!」


ガイアは部屋の奥に刻まれた古びた魔法陣を指差す。


「戻ろうと思って乗ろうとしてみたんだけどさ……。」


「弾かれちゃって。」


「全然入れないんだよ!」


「だから出口を探して歩いてたら、あんたたちに見つかったってわけ!」


レオンは肩の傷を押さえながら、ガイアを見つめた。


「ここも、出口は『観測者の間』なのでしょうか?」


シオンは何も言わず、レオンの肩へそっと手をかざす。


淡い光が傷口を優しく包み込む。


次の瞬間――。


傷は跡形もなく消え去っていた。


レオンは肩を軽く回し、驚いたように微笑む。


「……さすがです、シオン様。」


シオンは静かに頷いた。


「ええ。」


「この迷宮にも、創造主様の足跡が残されていますわ。」


「でしたら、この先に『観測者の間』があっても不思議ではありません。」


ガイアは目を丸くし、思わず声を上げた。

「す、すごい!」

「賢者って名乗るだけあって、怪我まで治せるのか!?」

「こんなの、僕は初めて見たよ!」


シオンはガイアをしばらく見つめると、小さく頷いた。


「敵意は既にないようですわね。」


そう呟くと、軽く指を鳴らす。


次の瞬間、ガイアを押さえつけていた重力が、すっと消え去った。


「ふわぁっ!」


急に身体が軽くなり、ガイアは勢いよく立ち上がる。


「た、助かったぁ……。」


肩を回したり、足を踏み鳴らしたりしながら、嬉しそうに体の具合を確かめる。


「ありがとう!」


……と思ったのも束の間。


ガイアは目を輝かせてシオンへ詰め寄った。


「ねぇ、賢者さん!」

「どこから来たの?」

「何しにこの迷宮へ来たの?」

「その剣聖さんも、すごく強そうだけど、二人で何を探してるの?」


矢継ぎ早に飛んでくる質問に、レオンは思わず苦笑した。


レオンはガイアの身のこなしを思い返しながら口を開いた。


「……ずいぶんと好奇心旺盛ですな。」


「シオン様。」


「このガイアは、なぜこの重力下で、あれほど身軽に動けるのでしょうか?」


シオンはガイアを静かに見つめ、小さく頷いた。


「確かに、不思議ですわね。」


「この重力下で、あれほど軽やかに動けることもそうですが……。」


「より不思議なのは、この場所で、あなたと出会ったことですわ。」


ガイアは首をかしげる。


「えっ? どういうこと?」


シオンは迷宮の奥にある古い魔法陣へ視線を向けた。


「創造主様の足跡を辿るたび、必ず意味のある出会いがありました。」


「だとすれば……。」


「今回も偶然とは思えません。」


シオンはガイアへ視線を戻し、静かに微笑む。


「もしかすると、あなたこそが――。」


「今回の宇宙転移門を開く鍵なのかもしれませんわ。」


シオンは穏やかな笑みを浮かべ、ガイアに問いかけた。


「では、お聞きしますわ。」


「あなたは、この場所へ来る前、どちらにいらしたのですか?」


「覚えていることを、できるだけ詳しくお聞かせいただけますか。」


ガイアは困ったように頭をかいた。




「森の中だよ。」


「……いや、その前は。」


「横断歩道を渡ってたら、車にはねられてさ。」


「そのあと、雲の上みたいな場所で、誰かと話していた気がするんだ。」


「でも、何を話したのかは全然思い出せなくて……。」


「気が付いたら、森の中で目を覚ましてた。」


「しかも、この耳だよ?」


ガイアは自分の長い耳を指でつまみ、ため息をつく。


「最初は夢かと思ったけど、全然目が覚めないし。」


「訳が分からないよ……。」


レオンは首を傾げる。


「車……とは、何ですかな?」


シオンは一瞬だけ目を見開いた。


「車……とは、もしかして。」


「四つの車輪で走る、あの乗り物のことですの?」


ガイアは驚いたように顔を上げる。


「えっ!? 知ってるの!?」


シオンは静かに微笑んだ。


「ええ。」


「私も、遠い昔に訪れた世界で見たことがありますわ。」


「……なるほど。」


「賢者様も、別の世界から来られたのですね。」



その頃――。


ドワーフ王都では、一つの騒ぎが起きていた。


門兵隊長は、サムと数人の門兵を連れ、執務室の隣の部屋へと向かう。


「今日こそ、あの二人と話をしよう。」


重厚な鉄の扉が、ゆっくりと開かれる。


ギィィ……。


しかし――。


「……いない。」


部屋の中には、誰一人として姿がなかった。


門兵隊長は目を見開く。


「馬鹿な……。」


「夜には確かに鍵を掛けたはずだ!」


窓には頑丈な鉄格子。


扉にも壊された形跡はない。


まるで、最初から誰もいなかったかのように、部屋は静まり返っていた。


サムも驚きを隠せない。


「神の使い……。」


「まさか、本当に……。」


門兵隊長は我に返ると、大声で叫んだ。


「総員、王都中を捜索しろ!」


「決して危害は加えるな!」


「見つけ次第、すぐに私へ知らせるんだ!」


その命令は瞬く間に王都中へ伝わり、ドワーフたちは街中の大捜索を開始するのだった――。




ガイア。


ガイアは頭をかきながら話し始めた。


「森を抜けたら、小さな集落があったんだ。」


「でもさ、みんな僕と同じように耳が尖っててさ。」


「『どこの里から来た?』とか、『親はどこだ?』とか、いろいろ聞かれてね。」




「僕だって何も分からないから、適当にごまかしてたんだけど……。」


「話してるうちに、僕がエルフ族だってことだけは分かったんだ。」


「そのうち、一人で狩りをするようになってさ。」


「僕が出てきた森には『入っちゃ駄目だ』って言われてたんだけど、気になって戻ってみたんだ。」


「それで奥まで進んだら、大きな洞窟を見つけて。」


「中を進んでいったら、古い魔法陣があったんだ。」


「面白そうだから乗ってみたら――。」


「気が付けば、ここにいたってわけさ。」


ガイアは少しだけ表情を明るくした。

「ねぇ、賢者様。」


「もし賢者様が前の世界へ行くことがあるなら……。」


「僕も、元の世界に帰れるかもしれないね。」


「あの世界へは、神々の気まぐれで飛ばされましたの。」


「私の意思など、お構いなしでしたわ。」


「ですが、そのおかげで、あの世界のことを知ることができました。」


「ですから、可能性がゼロとは思いませんわ。」


「それなら、賢者様!」


「僕も一緒に連れて行ってよ!」


「一人でいるより、絶対その方が面白そうだし!」


「それに、元の世界へ帰れる可能性があるなら、諦めたくないんだ。」


「……同行すること自体は構いませんわ。」


「ですが、私たちの旅は、命の保証ができるようなものではありません。」


「それに……酷なことを申し上げますが。」


「仮に前世の世界へ戻れたとしても、その身体のままですわ。」


「あなたは車にはねられて、この世界へ来たのでしょう?」


「だとすれば、元の世界でのあなたの身体は、すでに亡くなっている可能性が高いですの。」


「それでも、構いませんの?」



(第33話へつづく)

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