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第21話 『創造主の足跡』

世界会議が終わる。


神々、魔王、国王たちは帰っていく。



観測者。


『シオン。』


『残れ。』



シオン。


「ええ。」


静まり返った観測者の間。


巨大な扉だけが静かに佇む。


ここで初めて宇宙群を観測者が指差す。


無数のシャボン玉。


夜空一面に広がる宇宙群。


シオンだけが静かに見つめる。


創造主の足跡ですのね!



観測者。


『あれは現在地ではない。』



シオン。


「では?」


「足跡?現在地ではない……?」



観測者


『最初の足跡だ。』


『創造主は旅をしていた。』


『宇宙から宇宙へ。』


『その痕跡だけが残っている。』



観測者。


『最後に観測された宇宙。』


『ここだ。』



シオン。


「そこへ向かえば?」



観測者。


『行けない。』


『途中を飛ばせない。』



シオン。


「……なぜですの?」



観測者。


『創造主の足跡は一本道ではない。』


『旅の途中、幾度も分岐している。』


『途中から辿れば』


『二股。』


『三股。』


『やがて無数の分岐へと変わる。』


『一度、道を誤れば』


『二度と元の道へ戻れなくなる可能性が高い。』


『最悪の場合』


『永遠に宇宙群を彷徨うことになる。』



シオン。


「つまり……。」



観測者。


『最初の足跡から順に辿るしかない。』


『そうすれば道は一つ。』


『創造主が歩んだ軌跡を、そのまま辿れる。』



シオンは静かに微笑んだ。


「なるほど。」


「宝探しではなく、足跡を一つずつ辿る旅ですのね。」



観測者。


『その通りだ。』


『創造主は宇宙を渡る度に──』


『座標を更新していた。』


『途中の足跡を辿らなければ』


『最後の宇宙へは到達できない』


『各宇宙に』


『何らかの反応を観測している』


『創造主が意図的に残したものと思われる』


『それを解明しなければ』


『次の座標は特定できない』




シオン。


「面白いですわ。」




観測者。


『断ると思っていた。』




シオン。


「私が?」


「長年探し続けた方ですもの。」


「退屈する暇などありませんわ。」


「パパッと探して見せますわ。」


そして、ヒールの音。


コツ。


コツ。


シオンが巨大な扉へ歩く。


観測者が最後に言う。


『第一の宇宙。』


『名を──』





その頃──三界では。


シオンが旅立つ準備を進める一方で。


初めての合同会議が開かれていた。


人間界。


国王。


「神々との会談準備は?」


大臣。


「完了しております。」



神々到着。


神々。


「神々だから席は雲で。」


国王。


「椅子です。」



魔王到着。


ゼルガル。


「肉料理は?」



国王。


「あります。」



神々。


「酒は?」



国王。


「あります。」



全員。


「良い国だ。」



国王。


「何なんだこの人達。」



三界同盟設立後初の会議



神々。


「会議を始める。」



悪魔。


「議題は?」



神々。


「分からん。」



人間。


「何故招集した。」



神々。


「いつもシオン様が決めていた。」




全員。


「あっ。」


数分後。



神々。


「シオン様に聞くか。」



国王。


「……誰が呼びに行く?」



全員。


「…………。」



魔王ゼルガル。


「宇宙の外だぞ。」


「旅立って連絡はつくのか?」



全員。


「終わった……。」


「観測者の間で有れば!」



神々。


魔界には、立派な黄金のシオン様像が、天空にも欲しいものだ。


人間。


「確かに、」




神々。


「本日は親睦を深めるため、お茶会を開催します。」



魔王ゼルガル。


「ほう。」



国王。


「良いことですな。」



神々。


「では最初に、お茶菓子を。」


天界の料理人が運ぶ。


ふわふわのケーキ。



神々。


「どうです!」



悪魔。


「甘いだけだ。」



魔界。


巨大な肉料理。



神々。


「重っ!!」




人間界。



職人が作った繊細な料理。



魔王ゼルガル。


「……うまい。」


気づけば、


「どこの料理が一番か?」


という話で大いに盛り上がっていた。


その時、人間界の国王側近が静かに口を開く。


「魔王陛下。」


「一つ、お伺いしてもよろしいでしょうか。」



ゼルガル。


「申してみよ。」


「人間界では今なお、森へ山菜や薬草を採りに入った者が、魔獣に襲われ命を落とすことがあります。」


「魔獣と魔王国とは、どのような関係なのでしょうか。」


ゼルガルは紅茶を一口飲み、静かに答えた。


「なるほど。」


「人間どもは、あれらを一括りに『魔獣』と呼んでおるのか。」


「だが我らからすれば、あれは野山に棲む野獣と変わらん。」


「魔界の民でもなければ、余の配下でもない。」


「森に満ちる生命力……ユグドラシルの魔素溜まりより自然発生する存在だ。」


「ある程度は討伐できる。」


「だが次々と生まれるゆえ、根絶は難しい。」


神々も腕を組みながら考える。



「なるほど……。」


「つまり、その魔獣たちも森の生態系の一部ということか。」


「ならば、人間が森へ入る際だけでも、天界と魔界が協力して護衛すれば良いのではないか。」


「監視結界を張り、危険があればすぐに救援へ向かえる体制を整える。」


国王は目を輝かせた。


「それは素晴らしい。」


「安心して山菜や薬草が採れるようになれば、人間界の食文化もさらに豊かになります。」


「そして、その食材で皆様をおもてなしできますな。」


ゼルガルは豪快に笑った。


「ガッハッハッハ!」


「その程度、造作もない!」


「余も、まだまだ人間界の美味い料理を味わいたいからな。」


「食材が採れねば困るではないか。」


「魔界騎士団を森へ常駐させよう。」


「人間どもが安心して森へ入れるよう、魔獣どもは我らが追い払ってやる。」


「シオン様も、きっと『良い心掛けですわ』と仰るだろう。」



神々。


「では決まりだ!」


「これも三界同盟、最初の共同事業だな!」

三者は笑顔で杯を掲げた。



その頃――


遥か彼方。


宇宙を旅するシオンは。


「……くしゅん。」


小さくくしゃみを一つ。


「誰か、私の噂でもしていますの?」


シオンは扇子で口元を隠し、優雅に微笑んだ。


「きっと皆さん、お茶会でも開いていますわ。」


その予想は――


見事に的中していた。




(第22話へつづく)

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