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何回、転生させたら気が済むんですの!?  作者: 一雲一人


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第15話 『特異点の残響』

【数時間後・魔界】


「創業者様がお戻りになられたぞ!」


「第二次魔界改革だァァァ!」


「有給取得率を隠せーーー!」


「逃げても無駄ですわよ?」


 魔界中の悪魔たちが、一斉に震え上がった。


 その様子を見ながら、魔王ゼルガルは頭を抱える。


「毎回思うのだが……」


 深いため息を吐く。


「何故、みんな余より創業者様を恐れるのだ……」


 すると、近くにいた古参幹部たちが顔を見合わせた。


「若いな」


「若い」


「まだ人生経験が足りぬ」


「魔族だぞ!?」


「だからだ」


「…………」


 ゼルガルは泣きたくなった。



【遺跡入口】


 創業者像の裏側。


 崩壊した壁の奥には、今まで誰にも発見されていなかった巨大な石階段があった。


 その先は、深い闇へと続いている。


 シオンは一歩、足を踏み入れた。


 その瞬間――。


 ビーーーーッ!!


 突然、天井付近に巨大な魔法陣が展開した。


「なっ!?」


 空間そのものが裂ける。


 そして――。


 ドゴォォォォン!!


 神々の軍勢が、まとめて落下してきた。


「ぎゃああああ!!」


「腰がァァァ!!」


「誰だ! 転送座標を設定したのは!!」


 三至高神が、ゆっくりと立ち上がる。


「私だ」


「お前かーーー!!」


 全員の声が地下空間に響き渡った。


 シオンは呆れたように神々を見る。


「何をしに来ましたの?」


「護衛です!」


「邪魔ですわ」


「ですよね!」


 即答だった。


 だが、その時。


 一人の若手神が、青ざめた顔で周囲を見回した。


「シオン様!」


「何ですの?」


「この空間……おかしいです!」


「何がですの?」


「アカシックレコードに存在しません!」


「……」


 全員が黙り込んだ。


「記録が……ない?」


「そんな場所があるのか?」


 若手神は必死に首を振る。


「ありません!」


「だから、おかしいんです!!」


 シオンの眉が、ほんの僅かに動いた。


 つまり――。


 ここは神々すら知らない場所。


 そして、世界のすべてを記録しているはずのアカシックレコードにすら存在しない空間だった。



【最深部】


 数時間後。


 一行は、巨大な門の前へと辿り着いた。


 高さは数十メートル。


 黒金色の金属で造られた巨大な門だった。


 だが、その材質を知る者はいない。


 門には、誰も見たことのない文字が刻まれていた。


「古代魔族文字ではない」


「神代文字でもない」


「では……何だ、これは?」


 その時。


 シオンだけが、目を細めた。


「あら?」


 全員がシオンを見る。


「読めるのですか!?」


「ええ」


 シオンは門に刻まれた文字を見つめた。


 そして、静かに読み上げる。


「『観測施設・第零管理区画』」


「…………」


「『特異点監視保管庫』」


 その瞬間――。


 ゴォォォォォ……


 巨大な門が低く唸り始めた。


 青白い光が門全体を走る。


 そして――。


【個体認証開始】


 機械的な若い男性の声が響き渡った。


 全員が凍り付く。


【観測者コード確認】


【シオン】


「……は?」


【認証成功】


【観測者シオン】


【最終アクセスより、九十九万九千九百九十九年経過】


「は?」


 シオンの顔が引きつる。


「は?」


 神々も固まった。


「ルールル、いや……ゼルガル」


 シオンが隣を見る。


「は?」


 突然、名前を呼ばれたゼルガルも目を丸くする。


【第二認証】


【ゼルガル】


「余!?」


【認証成功】


 ゼルガルは自分を指差した。


「何故、余まで認証されるのだ!?」


【第三認証】


【魔界代理管理者】


「は?」


 神々が一斉に顔を見合わせる。


【認証成功】


「はぁぁぁぁ!?」


 地下空間に、神々の絶叫が響き渡った。


 誰も知らない。


 誰も覚えていない。


 それなのに――。


 認証だけは、確かに通った。


【開門】


 ガゴォォォォォォォン!!


 巨大な門が、ゆっくりと開いていく。


 その先には、想像を絶するほど広大な空間が広がっていた。


 中央には、巨大な結晶が浮かんでいる。


 その周囲には、無数の見たこともない映像記録装置が並んでいた。


 そのうちの一つが――。


 勝手に起動した。


 ザザッ……

 ザザザッ……


 古びた映像が空中に投影される。


 最初に映ったのは、一人の少女の後ろ姿だった。


 銀色の長髪。


 フリルの付いたドレス。


 その姿には、見覚えがありすぎた。


 シオンの表情が消える。


「…………」


 映像の少女が、ゆっくりと口を開いた。

『観測記録を開始します』


 シオンと――まったく同じ声だった。


 ゼルガルが呟く。

「創業者様……」

「違いますわ」

「でも、同じ顔です」

「違いますわ!」


 シオンが珍しく声を荒らげた。


 だが、映像は構わず続いていく。

『特異点封印計画』

『最終段階へ移行』

「特異点?」


 誰かが呟いた。


 そして――。


『封印失敗時』


『宇宙初期化プロトコルを実行』


「…………」


 全員が固まった。

「え?」


 映像の少女は、淡々と続ける。

『成功確率』

『〇・〇〇〇〇〇……1%』


「低っ!!」


 思わず全員が叫んだ。


 やがて、映像の少女がゆっくりと振り返る。


 そこにあったのは――。


 今のシオンと寸分違わぬ顔。


 だが……。


 その瞳だけが違っていた。


 まるで、星空そのものを閉じ込めたような瞳。

 果てしなく古く――。


 そして、すべてを知っているかのような目だった。


 少女は静かに告げる。

『もし、この記録を見ているなら……』

『封印は失敗した』

『そして――』


 一瞬、映像が乱れる。

『"あれ"は、目覚め始めている』


 その瞬間だった。

 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!


 遺跡全体が、大きく揺れ始めた。

「な、何だ!?」

「地震か!?」

「違う!」


 結晶の奥。


 誰もいないはずの暗闇から――。


 二つの巨大な光る瞳が、

 ゆっくりと開いた。

『ようやく……』


 低く、不気味な声が響く。

『見つけた』

「…………」


 シオンの笑顔が、完全に消えた。

「……これは」


 生まれて初めて。


 シオン・ド・ラ・ローザが――

 本気で嫌な予感を覚えた瞬間だった。

     


【第16話へつづく】

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