第70話 指名依頼
幾日ぶりに冒険者ギルドを訪れていた。というのも冒険者ギルドに指名依頼という制度があり、特定の冒険者を雇用する特別な依頼がマイクに課されたと通達があったからだ。
指名依頼があったからと言って必ずしも受ける必要があるかというとそんなことはないが、相手次第ではマイナスになる可能性を秘めているためその辺りはギルド受付と指名対象本人とのすり合わせが必要になってくる。
今回のその依頼は父セブン・イングランディーレから課された指名依頼だった。『ノリ』にわざわざ変えたのに余裕で身バレしてた…なんなん?この父親!どんなセンサー持ってんだ?
その内容は魔力残滓掃除という依頼だった。かなり特殊依頼になっており残滓が見える人間は光属性持ちのため、光属性持ちが多い聖ライト教会にその内容の依頼をしたのだが断られたためやむ負えず冒険者ギルドに回されることとなったのだった。とはいっても光属性持ちは大体が聖ライト教会に入るため在野の光属性持ちを見つけるのはかなり困難である。そのため、冒険者ギルドに所属していて実力も確かなマイクが選ばれたのであった。
こうしてその依頼に対して特に疑問を持たず楽だと判断したマイクは依頼にはなにも考えずに受けるのだった。
担当区域は主に魔法師団訓練場ではあるが貴族街全域が依頼の範囲である。
達成証明はセブンの感覚のでほぼ報告しても確認待ちが入るスタイルになっている。
依頼内容を確認して取り組むことにした。必要なものは特にないので貴族街を周りつつ魔力残滓が濃い部分を探していく。違法な魔道具を使っていなければ武官の多い地域は問題ないはず。その中に4つくらい魔力残滓が濃い場所があった。
どうやら武官の家に生まれながら魔法を勉強している子供がいる家だった。魔力残滓の影響を説明すると即座に対応してくれた。対処法も聞かれたので魔力残滓を吸収して勝手に魔力に循環する空気清浄機が近日中に発売されるはずなので買ってほしいという宣伝もしておくことにした。
次に魔術師系の貴族が住む区域はそこまで被害がないようだがやはり訓練場に近づくとまたあふれ出していた。今回は正面から堂々と入り処理をしていくことにする、建物の中のいたるところ、施設の隅々まで浄化をかけていった。初日だけでわりと回れたのだが貴族街はまだまだある。
2日目は商業街を回る。ここには商売人として平民もいるのでふかっく知らないまま魔法を使ってる場合があるので注意が必要とは言われた。案の定やらかしている屋敷があちらこちらにあり、クソ暑い中あっちに行かされこっちに行かされ大変だった。高位貴族の屋敷の方も少なからず同じような状態の屋敷が複数見つかり、そちらは対応できるところのみをパパッとやっておいた。
そうして依頼が達成したはずだったのだが、確認と追加以来として王宮内もやることになった。
王族とは関わりたくねぇ!と思っていたが貴族の働く場所の不備に対しての依頼らしくその辺りは見たことあるなぁ~思いながら淡々とこなしていった。一番怪しい王族専用の庭と訓練場の方はなんかすごかった。よどみ過ぎていてよくダンジョン化してないなと思ってしまった。入ったらいけないのでしばらく環境同化と気配遮断を発動してパパッと済ませておいた。やけに魔力を持っていかれたけど、なんかあかんかったかな?
こうして特に問題なく終わりギルドに報告すると数日して達成が認可された。評価としてはかなり良いらしい。正式な冒険者になれば討伐を4,5回繰り返せばAランクらしい…え?そんなに?どれが?危険なことがなくこれだけの成果をもらえちゃうのは楽でいいな…
魔物図鑑の製作など他でも役に立っていることをこの時のマイクは完全に忘れていた。
この依頼によって魔法の訓練をしていた者たちの性格が良くなることになった。あるものは驕りや慢心など迂闊な部分が際立つようになっていたり、あるものは焦燥感に駆られ周りにつらく当たっていたり、あるものは陰険に人を軽んじるようになっていった。
だがそれらの原因が魔量残滓にあり助長されていた。それぞれの性格が軟化することになった。特に王宮の庭を内密にやったはずだったが普通に父セブンにはバレていた。なんせそれまで癇癪持ちだった姫の感情が収まり、教師に流されるままだった王子が自分の意見を持ちしっかりし始めたからである。
目に見える効果があったためか空気清浄機は様々な場所に動員され、更なる売り上げにつながった。
「なんかこのところ掃除にばかり駆り出されてるな…新しく掃除専門店でも作るか…」
「マイク様がしたいことをなさればよいのでは?私はお手伝いするだけです。」
「…ラヴェは何かしたいことはないの?ずっと仕えてるだけであんまり知らないんだよね」
「私ですか…お気にすることではないと思いますが?」
「え?ずっとそばにいてくれたのに?このままじゃ薄情な主人になっちゃうよ…」
「そうですか、ですが私はマイク様のことしか考えていないのでこのままが幸せですね…メイド業以外では師匠に訓練をしてもらうくらいですし、特にこれというものはありません」
「ええ!!そんなにか!!それだと甘いものくらいしかラヴェには与えられないな…うん難しい」
「そうして私のことを気遣ってもらえるだけで充分満足です」
「そっか~そういわれると難しいなぁ~
…う~ん、まっ!もっといろんな体験できれば楽しんでくれるよね!オレが楽しければそれでよしっ!」
「ふふっ!流石です!マイク様!一生仕えさせていただきます。」
ラヴェはマイクに仕え始めた赤ん坊のころを思い出し、再度マイクの言葉に忠誠を誓うのであった。




