第66話 抜き翼差し翼忍び翼
夏が来てる…暑いのだからそうに決まってる。今年も海に行くことを決め、ラヴェとトムを連れていくことにした。
「え?海水浴ですか?泳げるかな?じゃなくてどうやって行くんですか?」
「問題ない去年も行ったから!」
「プールでもいいのでは?」
「屋台もやるかもしれないからトムは料理役で連れていく」
そうしてパパッと準備をして二人を連れて王都を離れ草原に来た。さらに追加でオルと天の透けも連れていくことになった。
「なんです?ソレ?」
「天の透けだ!ビッグスライムでオレの従魔になったんだ!」
「えええ!??スライム!!?いつの間にそんなの味方にしてたんですか!」
「トムが風邪で体調崩す前くらいだな、それよりオルをどう運ぶかが問題だな、大丈夫か?」
「ブルルッゥウゥゥウ」
「そうなの…じゃあそれでいいか、トムはしっかりそのハーネスつけてね…」
どういう会話があったのかわからないままトムはムササビスーツを体につけていく。わからない部分はラヴェが勝手につけているので問題ない。
今年この二人は15歳の成人を迎えたせいか成長期を迎えたせいかいつの間にか体もできてきていた。そのためトムが使っているのは去年のアーロンのサイズではあるが少し調整するだけで問題ないくらいだった。オレも少しは大きくなってるしキツくなって…ないな、何でもないわ!
ラヴェはちゃんとキツそうだ!よしよし、ナイススケベ!トムの顔の方が赤らんでるな!ふふっ!所詮は男…こんなもんだな!
あとは天の透けはなるべく小さくなってもらって背負うことにした。天の透けは収縮魔法で体積を少なくするために魔石に変えることができるのでそれでちょうどいいサイズにしてもらい、オルには走ってもらうことになった。誰も乗せなければ千里は駆けられると自負しているので糸で繋げつつ走ってもらうことになった。
準備は出来たので重力魔法で浮かび滑空しつつ浜辺を目指すことにした。今年は南!砂浜があることを期待して出発した。
「ふぇぇぇぇ!!!!早ええええぇぇぇ!!!!こ…これ!大丈夫なんですか!!!」
「大丈夫大丈夫!天気が悪くならない限り大丈夫だし南風が多少あるくらいの方が美味い具合に飛べるし…あと操糸魔法で全員繋がってるから心配すんなってばよ!」
「はぁぁぁ!!!今年も私は風!!この自然と一体になってる感じたまらないわ!!!」
「ホラッ!ラヴェは楽しんでるぞ!」
「えええ!?そういうもんなんですか?…たしかにちょっとだけ楽しくなってきた気がします!」
一行は雄たけびを上げつつ空中移動を楽しんだ…
30分ほどで陸につきもう一度浮上した。今のところ魔物が襲撃してくることも人に見つかることもない。軽く隠ぺいもかかってるので当然であるが、オルはなんなくついてきていた…
移動に関してはもうだいぶチートなのかもしれない。
何度か繰り返し無事誰もいない砂浜についた。
無人すぎる…
上から見ても近くに村もなかったので秘境スポットと言えるだろう!
よしよし二つ目のプライベートビーチの開拓だ!わっはっは!あの時はSASUKEとかやって魔物も寄ってきて楽しかったな…
このビーチにも小屋を設置!土の造形魔法は便利すぎるかもしれない…ビーチチェアにパラソルを立てて、今回はオルの休憩スペースも作る。ワラがないので風属性の鎌鼬を茂みの方に飛ばし、回収・乾燥して即席のスペースを作る。リードも魔法で作っておくので伸縮はオル次第、たぶん大丈夫でしょう。あとクッションも置いておいた…
はっ!!!
ヨギボーって作ったっけ?やらねば…!
調理場も設置して鉄板も準備!トムに食材と調理器具を渡し、焼きそばを作ってもらう。その間に着替えて天の透けの透けと海にダイブ!
いつの間にかサイズを取り戻してカクカクプルプルしてる。そして今年も完全武装UVカットマンがパラソルの元に鎮座している。仕方ないか…まずは安全のチェックだ!
そして今年も作り忘れたゴーグル!何してるんやろ…人は忘れてしまう生き物だが、帰ったらしっかりやろうな!今年も箱メガネを使って海中を散策…天の透けはスイスイと環境同化して進んでいく。天然の砂浜なのか岩場も普通にある。
痛い思いしつつ歩いては泳ぎを続ける…生物少なすぎるかも…
何かいるのか?
箱メガネでは足元しか確認できないので目元に水属性の魔法を循環させて見えるように調整、何度か潜って確認するとそれなりにクリアに見えるようになった。だがゴーグルは必要…質が悪いのかな?淡水の魔法との相性が悪いのか…
とりあえず見渡すも砂地と岩場が見えるだけ魚も貝も海藻も見えない…あれ?これ潜って大丈夫な場所?
怖くなったので一回陸に上がり鑑定魔法を使ってみる。
『暴走白浜海岸』海への敬意をなくしたすべての生物を飲みこむ。ゴミは絶対持って帰るようにしよう!
うん…やっべぇところじゃん…
ゴミ判定はどっからだ?ワンチャン寝藁も危ないのかな…スライムも不法投棄になりかねないのか?誰目線のゴミなんだ…
いや大丈夫!こういう時はポジティブに行こう!きっと大丈夫!!なんの生物もいないけど、きっと…
「焼きそば、できましたよマイク様!どうします?」
ビーチチェアで寝転ぶオレは色々考えつつもその声を聞いて焼きそばを食べることにした。麦茶を出してもらい即席で机を出し、屋根を広げる。オルも来たが、天の透けが戻ってこない…どこにいるのかと思っていたら海でプカプカしていた…オレはビビってたけど大丈夫なんだろうか…
「なにか気になります?美味しくないですか?」
「いや、鑑定魔法で暴走白浜海岸って出たからちょっと不安でね」
「え?危険なんですか?」
「いや、海に敬意を払えば問題ないらしい…曖昧過ぎてよくわからないけど、生物も局単に少ないから少し不安だな」
「うわっ!とんでもないところに連れてこられてるじゃないですか!どこの領なんですか?そんな危険地帯持ってる領…」
「知らん!地理ちゃんと勉強してないもん!」
「王家所有のはずですね…おそらく問題ないでしょう…」
焼きそばを食べ終えると海の方から天の透けがダッシュで逃げてきた…
「まずいよ!ヤバイ奴来た!」
海の方から何本もの触手とでかい笠の影が見えた。タコ?クラーケン?違いました!クラゲでした。デカクラゲ…
はい、皆さんご一緒に…
「「ギャアアアアアア!!!」」
「「………」」
水陸両用のクラゲがこちらに迫ってきた。
…が砂浜がそれを阻み始める。
「なんだ?何が起こってるんだ?」
砂がクラゲを覆い始め、やがてすべてを飲み込んだ…
やべぇ場所じゃん…
どうする?と顔でラヴェとトムに問いかけると帰ろうと顔で伝えてきた…
天の透けを小さくしてゴミも含めて全部収納!余った焼きそばをお供えして作った小屋を消去!急いでその場をあとにした…
「ふう、危にぃ~危にぃ~まだまだ知らねぇことばかりだな…もっと気を付けて過ごそうな…」
空で言った言葉は風を切る音で瞬く間に消えていった…




