第65話 スティッフィリオ・アエロリット
〈スティッフィリオ視点〉
母は徐々に壊れていった…一番古い記憶では父も母も相手をしてくれていた。うっすらだがいい空間だったはず。母が伏せてから父と顔を合わす機会は減っていった。家庭教師の話では財政難でぎりぎりの状態らしい。勉強したところで理解できないのだが屋敷に仕える従者も年々減っていった…
そして外で作った弟が屋敷に来た…それが原因なのか母は衰弱さが増していき、姿を見ることも亡くなっていった…
誰が悪いのか、この環境、状況何をすればいいのか…
仕方ない…あるところからもらってこよう!あくまでももらい受けるだけ…やらかしたとて迷惑がかかることもない。失うものもない、なんなら道連れにできる奴らが周りにいる。
まずはいろんな貴族を見てマネをした。揚げ足をとり、会話の主導権をとり、中身のないやりとりをする。ただただ飾るだけで評価され、それを褒めるだけで上機嫌にでき、簡単に隙をさらしてくれる。下調べをすれば簡単に情報が手に入り、他を調べればまた新しい内情を知ることができたりもする。
最初は簡単にいった…準男爵扱いとして貴族として生き残れるかというヤツを商人伝いでつぶした。おとなしく平民になることを認めればよかったのに…死ぬこと以外はたぶん何とかなるなずだというのに…
その後も同じ男爵家の者や平民出身の騎士などを相手に金や地位を巻き上げていった。そうすると周りはちやほやしてくれる。特にコケにした奴らと対していた者たちはヘコヘコ頭を垂れてくる。
だが父はワタシの所業に気づいていなかった。何かしてくるかと毎度気にしていたが何もなかった…どれだけ興味がないんだ…呆れたと同時になぜこんなにもこの家に無頓着なのかが気になって調べてみた。
義弟とその母親、かつての愛人のためらしい…
なんだ?この家は…
気持ち悪ぃぃぃ…
ワタシはますますどうでもよくなった。いやそれより早く当主を変わってもらおう…なぜこんな無能が父なのか考えられない。母も社交をせず引きこもってるだけ…これが貴族か?それならワタシがもっと自由にしても問題ないな
それからいろんなところから恨みを買いつつ、貴族社会を壊していった。
ついには誰も強気で出てこれなくなった…爵位すら飾りにできた…くだらない世界だ…なんの法にもかけられないのか?平和ボケのアホどもが…
学園に通っているがかなり遠巻きにされている。どうやら今の内だけの存在として見ているらしい。そうだろう、こっちは先のことなんか考えていない。もう家の存続なんて考えちゃいない。自分の家どころか周りも一緒に落としてしまえの道連れ戦法だ!何もかも無くなっちまえばいいんだ!
いつの間にか屋敷の中が変わってしまった。知らねぇヤツが仕切っていた。義弟も消えた…父は…いつも通り、屋敷のことすら把握していないらしい。視野が狭いとかそういった次元の話ではないな…
母は…かろうじて生きてる…もはや亡霊だな…
屋敷に居場所はない、かといって貴族社会にもない…なついてくる底辺貴族もいるが自分で考える頭がない寄生虫ども…必要ない、邪魔なだけ…
邪魔、せいぜいワタシの八つ当たりの対象にならないように気を付けてくれ!
日常の中でたかることも覚えた。平民を脅せば簡単に金を巻き上げられる。チンピラを使えばよりうまくいく場所もあった。知恵を与え動かせば簡単に利益に繋がる。同じ手口ではつまらない。弱みを握り人を支配する。色も覚えた。奉仕をさせる、人から寝取る。店を奪い一通り荒らしてから放置、手を付けてからどんなものも最悪な状態にすることに悦を感じた。
これはいい。いろんなものが壊れていけばいい。次は貴族の家か店か…
そんなことを考えていると馬車に何かがぶつかった。
騎士とメイドと子供…どこの貴族だ?まぁいい慰謝料を請求するか、取れるだけとってやろう…
言いくるめられた…金貨を投げつけられたがどこかに消えた…なんだ・幻だったのか?すぐに姿も消えた…おかしくなったのか?このワタシが…
ああ、そうだろう…ワタシはおかしい。生まれた時からだろう。だから仕方ない。そう生まれてしまったのだから!
下町で次の標的を探す。暇つぶしにちょうどいい。この際だ!最近売れてるカフェとやらをつぶすか…
まずは内部調査だな、視察をして売れてる商品を確認、客層、これまでの問題などなど、いろんな情報を仕入れた。買いに行かせた従者からとんでもない報告があった。かつてアエロリット家で働いていた者がいたという話だった。これは好都合!我が家の機密を取り扱っていると吹っ掛けられる。さらにあの義弟もいるらしい。運営はイングランディーレ家、急造貴族がこんな店を構えているのに腹は立つが敵にするのも面倒な…と思っていた。
どうやら息子が経営しているらしい。しかもまだ6歳のおこちゃまだ!三男で後ろ盾も家くらい…これはツキがある。この前見たいなガキがそうそういるモノじゃない!
充分に準備もした。計画通りに評判を落として成り代わる。どういうシステムで経営されてるか詳しいところまではわからないが頭を挿げ替えるだけで問題ないだろう。あとは無事にチンピラたちが成功できるかどうか…多少の被害が出るだけでも構わない
どうしてこうなった・・・?
いつの間にかチンピラたちが消えた…地下に連れていかれる中で誰も気づかない…そうこうしている間に取り巻きたちも消えた…なにが起きてる!?
ただ地下を進む、灯に導かれ出口と思われる方に…
どいつもこいつも頼りにならない、このワタシだけがこんな目に合っているのにいつまでたっても助けに来ない…元から期待していたわけではないが腹が立つ…
クサい…
あのチンピラたちには何かが起こってた。操られていた…落下しても無傷、そして誰にも見つからずにこんなことまで…これはおそらく魔法だろう…痕跡も残さず対象に悟らせない…これが勇者パーティーの魔導士の力か……クソがっ…!!!
いくら考えても仕方ねぇ!あれだけのことを姿を見せずにやってくるんだ…絡んでも意味がない…
他に標的を変えよう…それもここを出てからだけどな…
スティッフィリオはスラムに出たことを苦にすることなく、帰路についた。その性根が変わることはなかったが相手は選ぶべきということを学んだ…




