第58話 ペットの飼育環境
天の透けには自我があった。思考ができる、話ができる、マイクと関係を築いたことで心地よさを感じていた。どうやらこの関係を欲していたらしいことはわかった。だが下手に近づいて消化したいとは思っていない。どの程度の力の制御が可能なのかを理解していないため、人との触れ合いを恐れていた。
「来たよ~天の透けぇ~出るよ~」
なぜ来たんだと天の透けは思っていた…どうやらここで育つとまずい事態になりかねないということであった。たしかにそんな存在になりたくないと体の憶測から強烈な同意の感情が沸き上がってきた。
だが地下でしか暮らしたことのない天の透けは不安だった。なにか安全が担保されているのか…
「ない!ただ普段から動いても問題ないようにこういうものを用意したよ」
そういってそれなりの大きさ人形が出てきた…中が空洞で関節は動くようになってるらしく中に入ることになった。うん、きついな…体積的に無理…と思ってたらご主人に収縮魔法をかけられた。減った分は魔石に変換されるらしい…そういうシステムみたい…
そうして乗り込み問題なく動かせた。だがまずい気がする…その形がよくないような…この中にいたら確実にこの人形の形になってしまう。そうなってしまうととてもまずい気がするのだ…いや、あえてこの形状には触れないでいこう、自ら死地に飛び込む必要は無い…知らんぷりでいこう!
そうして謎の出入り口を通り外に出た…
「うわぁ、本当に使ってる!その中に入ってるんですかい?例のスライム?」
「うん、護衛騎士にしようかなと思って!外側を甲冑にしたら行けそうでしょ?」
「魔物だと即バレですよ、たぶん旦那が飛んできますぜ!」
「ふっ!残念だったなアーロン!天の透けは環境同化と気配遮断が使えるのさ!だからほぼ問題ない!」
「問題大アリじゃないですか!気配がないのが逆に怪しくとられますぜ!」
そんな…主人と話しているこの男…前にわっちを殺そうとした人間だ!終わった!
「とりあえず屋上で飼うから父上に報告しておいて!」
「自分の仕事じゃないですぜ!」
そうしてご主人の後をついていく。建物の脇を通り厩の前に出る。
「ヴロォォォオオオオオォォオォォ!!!!!」
神々しいい馬がこちらを威嚇してくる…
「おい!オル!仲良く!2体目の仲間だよ、スライムの天の透けだよ」
「ヴァフ?ブルルルルル…」
「大丈夫…心配ないさ~ハクナマタタ」
こっちとは意思疎通が難しいかな…主人次第でどうにでもなるか
厩の隣に立っている建物に入り二階の奥の部屋に入る。
「ここがオレの部屋ね、基本的な導線はさっき来た道だから覚えておいて!メインの屋敷の方はほぼ入らないけどあとで案内するよ」
そうして主人は魔法で天井のカラクリを動かし上への梯子がかかる。追うとそこはまた見たこともない空間になっていた。地下のように暗さは感じられるが窓から入る光が何か導きであるように感じられる…あぁこんな場所を目指していたのかもしれない…
「基本的には天の透けはここで待機になるから、ここでならその人形脱いでもいいよ」
そういって飾り甲冑を置く場所を脇に用意してくれた。とりあえず人形を出て床に降りた…
「うん、ちゃんと光のあるところで見るとだいぶ濁ってるね…外から魔石が見えるから見えないように工夫した方がいいかもね…ブラフとして四肢に散らかすのもいいけど、
あぁそうだラヴェにも知らせておかないと…」
「承知しております、マイク様!」
「うわっ!…いるかなとは思ったけど…毎度その瞬間にはいるんだね」
「恐れ入ります、それでご用件はそちらの…」
「うん、使役したから退治しないでね!」
「はい、ひとまずエサの方は私が用意しますね」
「よろしく~じゃあ甲冑の方やろうかな」
そういって天の透けが入る人形に色々飾りをつけ足していった。最初はただの段ボール戦士だったのが形を変えていく中の造りは変わらないのに…なぜかこの形にこだわるのか、何が気に入っているのだろうか?天の透けは疑問に思った。
やがてカッコよくできた甲冑が出来上がる。布や紐も追加して彩っていく。羽もどこから出てきたのか胸元にめり込むように飾られる。バケツがヘルメットでかなりパワーキャラでないと説明つかない見た目になった。
「よしよし、こんなものでいいか…」
「素肌の部分に布を足すべきかと…」
「そっか、人間じゃないってバレちゃうもんね」
何度か装備が追加されたあとにもう一度入り動かすことになった。
「大丈夫そう?動かしにくくない?」
この中にいる間は関節の向きは決められてしまっているみたい…柔軟性が厳しいが動くときは仕方ないのかもしれない…そう考えると…
「もう少し緩ませようか…それで人間っぽくなるかも…ハイそこで歩いて~」
動作確認をして本邸に行くことになった。隣のメイドは少し前に見たことがあるかもしれない。地下の出入り口にいた男についてあったことを思い出した…怖い……
その子に護衛騎士としての動きを教えられつつ、なんとなくの場所も覚えていく。
「基本は厨房か食堂の西側だけだから、他は別に覚える必要ないからね…あ、ヤベッ!!」
そういって隠れた先のバルコニーに人がいた…主人曰く主人の母と姉らしい、小声で教えてくれた。どうやら主人はこの屋敷でそれなりに縮こまりつつ過ごしているらしい。
やり過ごした後は屋敷を出て下町の方に向かった。主人が経営しているカフェに行くらしい。関門を気配遮断で突破し悠々時計台まで来た。
カフェ内の案内を受け、早々来ることはないと教えてもらうのだった…
ココやシェナは驚かなかった…スライムが言うことを聞いているのは珍しいがもはやマイクがすることに受け入れた方が早いと思っているようだった。そうしてある程度案内を終えて屋敷に戻ると父がいた…
玄関前は初かな…横のアーロンはご愁傷様ですみたいな顔でこっちを見てくる…
「…でそれは?」
「ス…スライムです…言うこと聞きます。なので飼います。絶対に人に害はないようにします」
「…はぁ~、当たり前だ…全く…
だが魔力残滓の件は助かった…最近ではそういった場所に気を配ることもできなかったからな…」
「は、はぁ…どうも」
「あれらの権利の使用に関しても無料にしたぞ、どうせいらないのだろう?もし資金が必要になれば言いなさい、すぐに特許をマイク名義にできるようになっているから」
「へぇそうなんですね、ありがとうございます、では!」
「待て!その魔物、気配がないが何の魔法を使っている?」
「気配遮断と環境同化ですね…ハイ…」
「はぁ~~悪さにだけは使用するなよ、全く誰に似たんだ…」
「あんただろ、セブンの旦那!」
アーロンの言葉で解散となった…父は反論の言葉をぐっと飲みこんだような顔をしていたが何かあるのだろうか。ふぅ~何とかなったぜ!!よかったよかった…




