第57話 耳ほじほ~じ
「ラ~ヴェ~、いる~?」
「はい、こちらに」
屋上で畳雑魚寝タイムを楽しんでいたのだが耳の中がかゆくなり、耳かきをしてもらうことにした。
ラヴェに膝枕をしてもらい、施術開始!
「マイク様明かりを右にうごかしてもらっても?」
ラヴェの言うとおりに光属性でだした灯を空中に浮かべ耳の中を照らしていた。しかも小さく耳の中に光源があることでラヴェには丸見えになっている。
心配になるのはラヴェの目に良くないのではという話だがラヴェ側の灯を調整して明度を落とした状態にしている。メイドだけにな!
そんなわけでサクサク作業が進む。
「ラヴェは最近変わったことあった?」
「そうですね~、主がスライムを買い始めましたね~」
「ええ?知ってたの?」
「しっかり魔力は上げているようですがエサも用意いたしませんと下水に流れてくるものを食していらっしゃいましたよ」
「えええ~~そんなこと言っても仕方なくないかな~スライムってそういう魔物でしょ…」
「いえいえ、環境に適応する魔物ですから雑食といえどもあの環境で育てばヘドロの王になりかねませんよ」
「なにさヘドロの王って…絵本かなんか?」
「ええ!!ではお話ししましょうか…んん!
かつての王都はもっと治安が悪い状況でありました。貴族街でも暗殺の類が溢れ当然下町は荒れに荒れており、裏社会のボスの後ろ盾がなければ生きることができない過酷な環境でした。
そうして荒れていけば必然的に地下道というものは利用されていくもので様々な取引に使われたり、人の処理などにも使われいました。
当時から地下にスライムは済んでおり、王都の下水処理を担っていました。そんな中に人間の死体があっても関係なく消化していく。そうして悪意に満ちた場所で暮らすスライムの中にも変化が生まれる。それは人間を消化したからなのか、様々なものを処理させられる怒りによるものなのか、逆にいろいろなものを消化したい好奇心によるものなのか、いまだに判断できないことではあったがたしかに生まれてしまった。のちに疫病を巻き起こすことになるスライム『ヘドロの王』
地下に住んでいたスライムを配下に地下で暗躍する者たちを飲み込み、喰らい始めたのだ。もちろんその場所の住人も決して弱くなくスライムの弱点になりえる魔法を扱えるものも多数いたはずなのだが…抗い生き残れた者はいなかった。そうして知らず知らずのうちに人が消え、知らず知らずのうちにスライムたちが成長していった。より強いものを求めてより吸収したいものを求めていよいよヘドロの王は世に解き放たれたのである。
すでに地上には疫病が蔓延していた。人は弱り、命の源になりえる水すら満足に得られなかった。スライムたちは悉く蹂躙していった。瀕死の住人、壊れた資材、店頭に並べられた腐った何か、地下と変わらない街だが、進んだ先は全く被害のない場所があった。
聖ライト教会、王都の下町に建つその建物を中心に被害は収まっていた。草木は元気に生い茂り、澄んだ空気で空間が隔たれたように存在していた。ヘドロの王たちはそれ以外に被害を与えつつ、貴族街の方を目指した。地下と正面門から2点突破で進んでいった。ヘドロの王は地下を進み半数が関門を目指した。
だがその勢いは止められた。関門に集まった白い衣をまとった集団の神聖術がヘドロスライムたちを消滅させた。地下にはびこっていた約半数を失ったことを気づかぬままヘドロの王は貴族街のいたる屋敷からスライムを襲撃させた。ヘドロの王も王宮に侵入していった。騎士や衛士を飲みこみ、絨毯や床を溶かし、疫病の元になるような菌をまき散らしテキトーに襲い狂った。
王宮内をテキトーに進むヘドロの王たちはある地点で次々と消滅していく。境界付近にあった見えない何かと同じだと感じヘドロの王は進軍を止めた別の道を進み、得られる資材を消化していく。そこに意味はない。しいて言うなら同族のため。増やす。体積を増やし分裂して生き残るための生存本能、疫病は消化しやすいようにばらまいていただけだった。
だが進軍もそこまでだった。関門で食い止めた白い衣を着た者と同様の存在である聖ライト教、その中でも一番の大司教による神聖術による攻撃であった。
ヘドロの王は消える瞬間、もし次があるならを考えた…もし次があるなら地下でひっそり暮らそう。無理をせず人間と共存すれば同族は生き残れるだろう…
こうしてヘドロの王は消えていき王都に平和が戻りました。めでたしめでたし…」
「あぁ、教会の孤児院にいたんだっけ?その話ちゃんと聞いたのは初かも…」
「…知っていたのですか」
「うん、ココに絵物語作らせるときに手当たり次第に漁ったからね…ただ速読どころか瞬読だったからほぼ知らなかったよ」
「むっ…そうでしたか、では次は違う話を…!」
「手動かしてね」
「はっ!失礼しました!」
そうして一通りやってもらいスッキリした…
だがもしかして魔法使えばもっと簡単にできたかも…
水を突っ込んで回転させれば洗浄としては十分だったかも…
いやそうしたらラヴェに膝枕してもらえないな!このままでいい。
鼻をほじりながらそう考えるのだった…




