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第56話 抜き足差し足忍び足

 今日は絶対に何もしない!


 そう決めた朝、散歩で庭に行くとアーロンを見つけた…


 先日見つけた地下道への入口の話をするかどうか迷ったが天の透けを討伐してほしくないので忠告しておくことにした。


「ビッグスライムですか?カクカクのヤツですかね、了解ですぜ、気を付けておきまさぁ!…それで

 もしかして見つけちまいやしたか?出入口…」


 何の話だ?と誤魔化したが全然ダメだった。そりゃそうか、しゃーなし…


「坊ちゃんが使わなければその件はいいですけど、旦那が困ってらっしゃいましたぜ!魔力残滓の瘴気化を気を付けたほうがいいっていう報告書!執務室に投げ込まれてたってヤツ!アレ、坊ちゃんでしょ!!」

「え?今さら?」

「そのうえでどこかの子爵家令息の新規冒険者が下水で瘴気が溢れていると報告があったとか…そのせいでスライムが偏り、下町の各方面で汚水がやひどい匂いが充満していると!

 冒険者ギルドから魔法師団と王宮に対して訴えが入ってると聞きましたぜ!それらの対応を旦那がしているとか…」

「……それらがどう父上の報告書と関係しているんだ?(やっべ!これは誤魔化せられないか?どないしよ…)」

「坊ちゃん……自分の名前で冒険者登録しているのをお忘れですかい?旦那が報告書から作った魔力残滓の回収して魔石に供給するシステムの魔道具が需要に拍車をかけてますぜ!マッチポンプ的に見えなくもないんで坊ちゃんに注目が集まるようになると…」

「まずくね?」

「坊ちゃん的にはね…」

「………」

「……」

「どないす?」

「知らないですぜ…自分で何とかしてください!あとカヴァレリッツォ伯爵とその令嬢から感謝のお手紙が届いたとか…数日で何してるんですかい?」


 まだ依頼3つしかこなしてないのに面倒ごとになりそうじゃねぇか…!!なんでこんな結果に………


「どうしたら…」

「まずは登録名から変えたらどうですかい?そうすれば勘づく人も少ないはずでは?」

「すぐ行ってくる!!!!」


 急いでギルドに行き問い合わせると登録名を変えることはできるが記録としては残ってしまうらしい。とりあえず『ノリ』に変えてもらった。


 だがミッションはここから!!報告書の発見者名はそれで変わるらしいが、すでに報告書を紙に映していた場合はどうしようもないらしい。管理魔法・通信魔法・記憶魔法で報告がなされているのだが紙に起こす者もいるのだとか…



 ミッション1 報告書の名称を書き換えろ!


 確認できているだけで3部ほど紙保存がされているらしい。1つはスプマンテに書き換えさせることに成功した。もう一つは父上の元にあることを確認した。そしてラスト一枚は王宮保管庫付近ということだけはわかった。スプマンテには出入りができない場所らしい。


 夜

 新しく覚えた闇属性の魔法・気配遮断を駆使して、混合魔法・環境同化で暗闇に溶け込む。飛行魔法で進入!何階だかわからないが渡り廊下から王宮内に簡単に入ることができた。探知と気配察知を使い地図を作製!保管庫がどこかわからないがそれっぽい場所を確認!下の方らしい。パパッと向かう。


 衛兵は巡回しているが全然バレない。これは気配遮断ではなく光学迷彩と環境同化に寄るところであるがこうすることで人の五感を惑わすだけでなく、周りの物質自体も惑わすことになり、あとから現場的証拠が一つも見つからないという完全犯罪スキルでもある。おそらくだがこの組み合わせを理解できるものはこの世界にはいないであろう!はははっはぁ~~~


 笑ったところでバレない…あれ?オレ存在してないのかも…不安に思ったことは秘密だ!



 2階をあっち行ったりこっち行ったりするとある部屋の前にたどり着く。鍵が当然かかっており鍵穴が見つからない。壁をぺたぺた触って中の状況など仕掛けがないかを確認。魔力感知の感覚としては中に結界が張ってある。人の出入りのみが有効で入った者の情報がすぐさま記録されるようだ…


 一旦解除するか、偽造するか…


 関係ない!光学迷彩と環境同化の前では結界も存在の認知ができない。壁をくりぬき進入する。壁に沿って張られている結界を素通り、目的の紙を探す。記録保管室というだけあって乱雑に積み上げられどれがどの資料か分からん。


「スプマンテ!」


 呼びかけると「お任せください!我が君」と反応してすべての資料を一時コピー&保管したうえで例の報告書を見つける。


 はっや!確認すると対応事案書ということで報告書が上がっていたみたい。瘴気の対応と周知徹底、削減努力要……なんかお役所感すげぇな…まあこういうもんだわな…

 スプマンテにパパッと書き換えてもらい元に戻す。


「我が君、あちらの部屋にも入れますか?」

「なんの部屋?」

「おそらく宰相と呼ばれる方のお部屋かと」

「え?ちゃんとメリットある?怪文書とか出てきても困るんだけど…」


 壁伝いに感じる危険さはない。そこまで危険は犯したくないので腕を通せるくらいでカベをくりぬく、中の様子を確認して腕を出し収納魔法で本を出しスプマンテに行動を許す。鬼が出るジャッカルが出るか…ジャッカル?そんなもんでるかぁー!まぁまぁ勝てそうじゃねぇか!


「我が君!戻りましょう大収穫です!!」

「あっそ…ホイホイ」


 そういってカベを復元魔法で修復、そこからさらに保管室も同様に出ていく。あとは余計なことをせず来た道をたどり無事帰って任務を遂行するのであった。


 何も起こらない…存在していないものを感知などできない。マイクは実際やってもやらなくても変わらない作業をして王宮をあとにしたのであった。



 後日

 スプマンテの漁った資料の中から機密情報がわんさか出てきた。王国の昔の文書には不正の横行と王家の失態、貴族の横暴に国が荒れまくったこと、魔王国を仮想敵国にして長年ちょっかいをかけまくってたこと、勇者による魔王討伐以降は平和を乱そうとする気配は魔物の対処くらいしかなく、今のところ問題ないことなど、空の国ルミナンスとの取り決め、転移魔法陣の使用制限…様々なことが読み取れたらしい。オレは読む気にならん…知りたくない、国の黎明期や発展途上中なんてやらかしのオンパレードに決まってる。そんな汚ねぇもん見たくねぇ!必要な可能性も低いしな…貴族の乗っ取りも起きてるし、将軍による掌握記録なんて魔人の悪行よりひどい。マジ見てらんない!


 宰相の部屋の方から得た情報はマジで関わりたくない。この社会のシステムを乗っ取れちゃう管理魔法にアクセスできるようになっちゃうらしい…マジやめて!スプマンテなんて連れていくんじゃなかった…


 コイツ悪用する気じゃ無ぇだろうな…どう使うんだ悪魔が?魔王国の有利になるようなもんが見つかったのか?悪魔であればいくらでも偽造できる分意味ないけどな…なんかあったかな…


 オレにとってのメリットはほぼなかったな…ただ歴史という点に関しては表面上と本来の歴史の違いを知れたことはデカいのかもしれない。今後どんな形で関わることになるのやら複雑な心境で資料がまとまっていくのを眺めるのであった…

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