第45話 口笛
6歳になりコミュ症先生の授業内容に音楽、芸術、ダンス、服飾が追加された…
コミュ症先生は意外とすべてに通じているらしい…何事もできるからこそ認められず家庭教師にくすぶっていることが認められないのだろう…
そんなわけで芸術は絵を描いたりいろんなオブジェから学ばされたり、ダンスはひたすらステップ踏まされて、服飾関係は主に女性関連のドレスを褒める方法を学んだ…なんでや!服飾は常にグレードアップされるので宝石の組み合わせや色の使い方なんかの学ばされてる…
そして音楽は前世でもやらなかったので苦戦している。ピアノにヴァイオリン…楽譜が読めない…知らん曲かと思ったらそんなことがない。なんか聞いたことあるクラシックが多い。弾いてみたら猫ふんじゃったの楽譜だったし…なんか、大変だな貴族
兄姉はこれをやっているのだろうか…品が身につくはずだわ…
上手く抜け出すことなくおとなしく受けた…
そのあとゴリラがきて訓練…戻ってから魔力強化…
なんで忙しいんだ…まだ6歳なのに…中身がそれなりだと嫌々も言えないしな…いや言ってきたか……
一人になりたいのに屋上は談笑の音で騒がしい…仕方なく温室バナナ園に入る。順調に育ってるのな…収穫は再来年くらいかな…温度管理環境を確認しつつぼぉーっとしてみる…
なんとなく口笛が出た…
そうだよく口笛を鳴らしていた…うるせぇと言われることもしばしば、だからと言ってやめることもなく吹き荒らしていたのも懐かしい。奏でたのはウサギの美味しい故郷の曲…昔から歌詞は覚えられないけどメロディはなんとなく知っているヤツだ…
懐かしい…
忘れぇ~がぁたき~ふるさと~♪
忘れてたなぁ~…そういえば元の世界の技術やらを思い返すことはあってもこうして改めて違う世界に来ていると確認するのは久しぶりだった…
この歌もそういえばかつての世界のモノだった…
意外とこっちに来てはないのかな…?あの日トラックに跳ねられてこの世界で生まれ変わり、何も起こらず平和に過ごせている…勉強がきつくない分健やかな日々を過ごせている…この歳で達観できるのも前世の記憶と比較できるせいだろう…前世も何も起こらなかったがまだ車にはねられたり、3階から落ちそうになったこともあったので、あの頃の方が苦労があったのかも…
そう考えていると温室の扉が開く…
「素敵な曲ですね…らしくないですぜ!その年でもうセンチメンタルかぶれですかい?」
「ははっ!誰がさ!ちょっと疲れただけだよ…あ~あトムが気づいてバニラモニカ持ってきてくれないかな…」
「あはは…嬢ちゃんに頼めばいいじゃないですか…どうせずっと坊ちゃんのこと見てるんですから…」
「そうなのか?確かにいつの間にかいるけど…」
扉が開く…
「マイク様お持ちしましたよ…」
「トムじゃん…ラヴェは?」
「え?いやなんか持っていけって…」
「え?」
「ほらこれですぜ…嬢ちゃんが聞いてた証…」
バニラ最中を受け取り、トムは急いで厨房に戻っていった…
「それにしても速すぎない?秒でここまで用意できる?」
「前もって準備していたのでは?嬢ちゃんならそのくらいできるでしょう…」
「ふ~ん…思ってたよりラヴェは甘いのかな?」
「あはははっ…甘いどころではないですぜ…この屋敷で唯一の味方でしかなかったんですから…坊ちゃんの一部と言っても過言ではありませんぜ…」
「そっか…ラヴェはずっとそばにいてくれたんだもんね…ちょっとずつ何か返していかないとだね…」
「逆です、坊ちゃん!嬢ちゃんは人にしてくれたことを心の底から感謝してるんすから…俺なんて邪険にされて適いませんぜ」
「思春期の父娘ならそんなものでしょ…オレにとってのラヴェがラヴェにとってのアーロンだよ…きっと……」
「それは喜ばしい限りですぜ…」
アーロンは少しだけ感情を滲み出させた…珍しい反応だった……
その後バナナ園に関しての運営方針を話しつつ自室に戻った…
使用人しか通らない廊下通り北棟に入る
北棟の屋上に来ることは多くなったが今でもこの家の人たちとまともに関われていない…そう考えるとラヴェだけが自分にとっての家族なのだと再確認させられた…
北棟は使用人棟…それ以上の身分はない…いずれこの家とも別れる運命なのだ…マイクはそれを思いながら北棟の二階廊下に口笛を響かせる…
~わ~すれ~がぁ~たきぃ~♪ふ~る~さ~と~♬
自室に戻り静かになった屋上でコタツに包まれ口笛を続けているとスプマンテが急に話してかけてくる…
「失礼します!我が君!ただ今我が君の魔力を感じた悪魔がこちらに向かってきております…」
「?そうなの…何が原因…」
「口笛に魔力が乗っていたみたいです…探知した悪魔が音速でこちらに…到着しているみたいです…」
魔力感知をしてみる…上空に待機しているみたい…口笛を止めたからどこかわからなくなっているのか…
「悪魔は実体がないんだよね?」
「はい五感で認識する場合は媒体が必要になります…かの場合は楽器です」
スピーカーでもいいのかな?今はそれっぽい魔道具しかできないけど…
あ…あの謎の電子楽器つくるか…
マイクは前世にあったオタマジャクシ型の音痴楽器を思い出した…
それをモデルに似たオブジェに問題なくスピーカーを取り付け刻印魔法を付与し媒体にすることにした…そして鳴らす口笛は演出もかねてあの有名な登場曲を口ずさむことにした…
オタマトーンスピーカーにINOKI BOM-BA-YEとファイ!をのせて口笛を鳴らす…
魔力を込めたので正確に認識できたみたい…
また新たな悪魔が目の前に現れたのだった…
逢魔ヶ刻:昼から夜に移り変わる夕暮れ時を指し妖怪や幽霊などの怪しい者たちに出会いそうな時間とされている…
そんな時間にイ・ノ・キ・ボンバイエ!イ・ノ・キ・ボンバイエ!のコールとともに変な奴が降臨した。
「ボンジュールでございます、陛下!魔王陛下の微かな魔力を察知しここにまかり越しました。遅れてしまい大変申し訳ございませんでした。音楽の悪魔マルシュロレーヌでございます」
「突然来るなど無礼にもほどがあるぞ!マルシュロレーヌ!!しかも寄りにもよって我が君の手を煩わせるなど恥を知れ!恥を!」
「いい、あんま騒ぐな…!それよりそのフォルムでいいのか?」
音楽の悪魔であるマルシュロレーヌの媒体になったのは即席で作り上げたかつての世界に合った電子楽器オタマトーン…形はいつも通り造形魔法で作り下の顔(出力)部分は柔い素材がないので口は上下開閉式加工の同じ素材で作られている。そして口の中にスピーカーとなっており、ココに刻印魔法を埋め込んでおりスピーカーとしての機能を持っている。
「問題ありませんマスター…まさか媒体まで用意いただけるとは望外の喜びでございます。してマスター…何故こんな場所におられるのですか?」
「あれ伝わってないの?悪魔の情報網ってどうなってんの?」
「申し訳ありません我が君…我々悪魔は個々で繋がっているわけではないのです。情報をやり取りをするにも魔人や魔物、人間を使うしかないのです。壁の悪魔ファルクスもカベを移動して最速で移動はできるのですが仲介人がアホだといつまでたっても情報が完結しないのです」
「あぁ、なるほど…不便だねだいぶ…」
「それでマルシュロレーヌは何ごとで参った?」
「?マスターにお会いしようとまかり越しましたが?」
「うわっ…やってくれてるね~困るんだよね勝手なことされると…」
「も…申し訳ございません!なにか不都合がございましたのですね!私がその障害を排除してまいります」
「あ~やめて!バレてなきゃまだ大丈夫だから…今はこの家に囚われているような状態だから王都にいる時に悪魔に接触しているのわからなきゃ問題ないから…」
「なんとか挽回のチャンスをくださらないですか?」
「その前に確認だけど音楽の悪魔ってことはいろんな音楽を知っているってことなのか?」
「ええ!左様ですマスター!私は音楽を司る悪魔でありますゆえにこの世のすべての音楽に精通しています。また先ほどのマスターの新しき音楽にも興味があります。どうか私にご指南をよろしくお願いします!」
といった具合でマルシュロレーヌに前世の音楽を惜しげもなく伝えることとなった。ミセスとかキングヌーとか米津とかヨアソビとかアニソン中心に歌詞を書いて曲を歌て伝えた。正確かどうかは重要ではなくきっかけさえあれば理解してしまうのが悪魔であり、目の前のマルシュロレーヌも同様であった。すぐさま再現してしまう…コーラスとか後ろのなんの音かよくわからないヤツとか…便利……
頼もしいのでいろんな楽曲を思い出しつつ今後とも再現してもらうことにした…
さらに転生者が作ったであろう楽器、それに付随した曲の情報も手に入れた。どうやらこの世界に音楽を持ち込んだのが複数人いるらしい。時代の違いもあり、判断は難しいが上の世代の人間っぽい…岡本真夜のTomorrowとかZARDの負けないでとかが正確に残ってるのがそれっぽい…ミスチルとかサザンとかちゃんと上の世代感じる…
「…マスターは何故今の格好をしておられるのですか?」
ギクッ…怪しまれてるのか?転生者なのはバレたか…
「我が君はこの少年の体に馴染んでいる状態だ!やがて魔人領に帰還なさる…それまで人間の文化を学んでいるだけだ」
…魔人でも転生者はいる可能性はあるか…いけるか?
「左様ですか…失礼しました…では……」
よし乗り切れそう…
「マスターは前世の記憶をお持ちですか?」
ぐあぁ、アカンかも
「そ…そ…それは…そうであろう…魔王としての記憶は…」
「そうではなくこの世界とは別の記憶です…その少年に憑りついていたのでは?」
ぐぅぅぅぅ…コイツ……
いや、なんとか押し切ろう!行くしかない…!
「この者の魂は確かに不完全であった…それが安定するのを待って我は乗っ取りを図り今もなおその作業中というわけだ…我の魔力はそちらにとられているのでこの器自体の魔力量で生活しているというわけだ…
記憶に関してはなだれ込んでくるものを管理しているうちに馴染んだものがあるというだけだ…時期に全てを処理できるようになる…」
何言ってるか自分でもよくわからないけどこれで伝われぇぇぇぇ!!!!
「り…理解しました…不要な発言誠に申し訳ありません!」
行けたぁぁぁ!!!よっしゃぁぁぁ!!!!
「ふん!理解したのなら良い…そのまま近くに侍ることを許してやろう…!」
こうして新たな悪魔マルシュロレーヌ通称マルちゃんを手に入れたのであった!




