第36話 似顔絵屋
気温も落ちてきてかなり過ごしやすくなってきた。むしろ肌寒い…
カフェテラスに絵を置き始め、だいぶ馴染んできた…
外から見えるようにガラス下部に絵が並んでおり、店内にも額に入れた風景画が多く並べられている。他にも勇者パーティーの人物画やかつての時計台で起きた事件が絵物語として楽しめる映像魔法も展開されていた。ちなみに映像魔法を仕込んだのはマイクであるが表向きには父セブンからの贈り物というていになっている。
営業的に盛況だがヒマを持て余しつつあったココと一緒に当初より考えていた取り組みである似顔絵屋を始めようとしていた。場所は時計台のふもとの屋上でカフェから繋がる渡り廊下を渡ったところ、その一角に簡易イスを置いて見本絵を並べ、風で飛ばないように工夫してのぼりを立て開店した…
だぁ~れも来ない……
ヒマなので新しくストーリーを仕入れてきて絵物語の本を作ることを提案してみた…だがマイクは提案するだけで特に描いてほしい物語があるわけではない。これにはココが困ってしまう…だが時計台爆破事件の物語を描いた時もこんな感じだったのを思い出した…
勇者パーティーの話は人気があるのでこうして誰にでもわかりやすくなっているのはすごい発明だと思っていた。他にも勇者の話は面白いエピソードはあるのだがそれを知る可能性が高いマイクが全く機能しない…父セブン副団長ブルース庭師アーロンという3人の伝手があるのに全く聞いてこないのである。
言い訳としては副団長もアーロンも父に聞け!と言われてしまうため遠慮します!となるためらしい…父との関係不足には覚えがある分何も言えなくなるココであり、絵物語制作は常に先行き怪しいのである。
そんな行き詰まりを感じる中でマイクはふと思い起こす。前世で読んだ絵本やマンガ、歴史や偉人伝なんかを…そうだ!それをパクればいいんだ!
客を待つ間に桃太郎についてココに話していた…
ココは聞いたことがあるらしかった…なんでもウソップ物語というお話全集みたいなものがあり、その1つとしてマリオという青年が川上から流れてきた桃を食べたことでパワーアップして鬼ヶ島にいるクッパという鬼を退治する「超マリオじゃん!」という話があるらしい…任天堂の社員が転生されてるな…
他にもマリオがいじめられていたヨッシーという生物を助けお礼に天空城で歓待を受ける話や罠にはまったクリボーという生物を助けるとその夜美女が突然家を訪ねてきてお礼をしたいといってきた。がそれが実は助けたクリボーだったという話など聞いたことある昔話が面白くなさそうにリメイクされているらしい…
少し調べたほうがいいと思いスプマンテに届くことを祈り物語の収集を頼むとメモ用紙に綴る…
そうこうしているとシェナが近づいてきた…
「盛況ですか?」
「すごい嫌味だね…お店の方は大丈夫なの?」
「ええ!休憩いただきましたので大丈夫です。それより私を描いてもらってもよろしいですか?」
「前は嫌がってなかった?」
「意地悪ですか?そもそもお二人はお客様を全く呼びかけをしてらっしゃらないではありませんか。いくら腕が良くても愛想が悪ければ相手にされませんよ、商売なのですから…」
「うっ…苦手なんだよ~注目されるのが…もしいっぱい来たら対応できないだろ…」
「いやポジティブだな!まず誰か捕まえてから言ってくれ…」
ちゃちゃっとバインダーと紙とペンを用意してシェナに椅子をすすめる。
「結構描いてるからもうだいぶ簡略的なシェナは描けるようになってきたんだよね…」
と言いつつペンを走らせていく。
なんとなくの存在だったココの似顔絵屋に近づき様子を見てくる人が複数…
そんな中から一人の少女が来てマイクに「私も描いてほしい!」と寄ってきた。マイクは少女のご両親を確認して見本を見せてどんな描かれ方が好みかオーダーを受け取った。
「お値段はどのくらいなのかしら…」
不安そうに聞いてくるお母さん、そりゃそうだった…金額出すの忘れてた…
「すんません、今日はお試し期間なのでお金はもらってないんです…」
「え?ほんとう?3人でお願いしても大丈夫?」
「はい大丈夫ですよ、問題ないと思います」
ココの方を向くともうシェナのことは描き終わって勝手なこと言うなみたいな顔を向けてきた…
親子のための椅子を即席で作り3人を描き上げたココはだいぶ消耗していた…
「ありがとう!」そう言って去っていった…絵は額に入れて持ち帰ってもらった。
「どう?」
「うん、沁みた…」
「良かったね…」
その後もココは次々に来るお客さんを捌いていった。
家に帰るとスプマンテがいろいろと物語を調べてくれていた。
「現存するおとぎ話などの創作物で史実に基づかないものと脚色の多いものなど含め438作品ございます。その中で魔王様が打倒される100年ほど前にウソップ物語は発行され、その中の40作品がマリオという主人公を中心に物語が組まれています。他にもジャンプマガジンというシリーズや偉人伝という一人の生涯を描いた作品が同時期に出てますね…」
「…となると地域ごとの言い伝えなんかがまとめられてるものはないのかな?」
「そうですね…必要とされている話がどういったものか分かりませんが地域別のモノは大して無いですね。13作品ほどが文章で残っています…」
「勇者に関しては?」
「それはかなり多いですね…人の日記に書かれているんですが人によって描かれ方が違います…同じ事象としてまとめれば3エピソードくらいですかね…」
「こっちのメモ用紙に全部のタイトル描きだしといて…」
「承りました、我が君」
タイトルだけで分かってしまう…かつての昔話が任天堂に上塗りされている…花咲かじいさん、こぶとりじいさん、泣いた赤鬼、傘地蔵、かぐや姫、さるかに合戦、エトセトラ…
うん…だいぶ暇を持て余した転生者がいたな…なにしとる…




