第3話 4歳の訓練
ひっそりのんびり過ごすもうすぐ5歳のオレの1日のタイムスケジュールを公開!!
突然どうしたと思うだろうが、現在副団長に首ねっこ掴まれ連行中なんだ。
7時に起きたオレの元にはすでにラヴェがおり、着替えの用意、朝ごはんの準備を済ましてくれている。食べ終わると清掃が入るのでその間に軽く庭園を散歩、庭師のアーロンに挨拶を交わす。※この時に屋敷の誰とも会わないように気配察知と隠密術を使うことは忘れてはならない。
アーロンは庭の状況や街の様子なんかを語ってくれる。ただその情報も偏りがありそうで話半分で聞いている…まぁガキ相手になんてこんなもんだよな。もっとオレのこと気遣って勉強になりそうなこと教えてくれてもいいんだぜ!あとコイツたま~に御庭番衆みたいな空気感もあって不気味で怖ぇんだよな…だってふとした瞬間顔が真っ黒になっているのだもの……
10時くらいになると勉強の時間になるので自室隣の勉強部屋に行き、歴史を学ぶ。算数やら言語学習は序盤にやらされたからあとは知識を死ぬほど詰め込んでくる。相変わらずぐちぐちと陰険だな。文字の書き取りなんてやってられるか!キレイな字がなんぼのもんじゃい!
だが歴史に関してはおとなしく聞いている。かつての転生者が偉人として語られているからだ。その人間にまつわるエピソードなんかを聞いて同じ失敗を起こさないような教訓にするためである。さらに地理も頭に入ってくるので嫌々ながらも聞いてやっている。
1時間でふつうにギブなのでトイレに行くと言って逃走、昼ごはんを食べバルコニーや屋根の上、庭でのんびりしてると副団長が突撃してくるのでかくれんぼが始まり、鬼ごっこになり、捕まると訓練に連れて行かれる。
これから始まる騎士見習いたちとの訓練には10歳から15歳の成人未満の見習い騎士候補生が集まっている。貴族でありながら家を継げない次男三男や家の政略に背いた女の子が集まっている。
体格が全然違うのね…
こっちは身体強化を全力でかけて、走る(持久走、スプリント等)腕立て(1.5レップ20回5セット)スクワット(ワイド、サイド、ジャンプ、スプリット、ブラジリアン)バービージャンプ(全身運動)腹筋背筋、プランク等静止運動を行うのに対して…あれ?へばってるヤツばっかだな…大丈夫か?おい…
そんな周りのお気楽嬢ちゃん坊ちゃんたちよりもこの訓練メニューなんで現代っぽいんだよ!高校球児でも転生させられたのかよ!
そこから木剣を持って素振り、打ち込み、模擬戦と続いていく…
詰め込み過ぎ!詰め込み過ぎ!休憩をください!!
今まで何度も逃走を試みたが失敗、教官補佐を突破できても副団長が強すぎる。奇襲仕掛けても平然と対応してくる。常時身体強化してるみたい…
見習いの中にも魔法を使う人もいるけど常時使ってる人なんていない。最大出力の補助とか一時的な回避が普通なのに副団長は魔力を常に纏い、さらにパーソナルなスペースにまで感知機能を展開してる。どういう状態?
上達すると魔力を還元できるらしい。いやふざけんな!呼吸の空気循環と同じ理論のはずなのに…魔力行使しつつ還元出来てたまるかいっ!えっ?空気中の魔素?…あぁ、できるかも……
こうしてオレは1対1ならそこそこ戦える術を手に入れた。タラララッタッタッタァァァ↑
ついでに逃走術、気配察知、隠密術も手に入れた。
〈ラヴェル視点〉
この屋敷に来たのは6年前、血に染まった私を救ってくれた人が進めてくれた職場だった。そこから2年間メイドとして最低限の技術を手に入れた。さらに師匠に身を守る訓練を学んだ。
それからマイク様のお世話を命じられた。乳母の方を探し、産婆の方に赤ん坊の扱いを教わり、つきっきりで世話をした。
命を育てる。その尊さを学んだ。奪うことしか知らなかった私が…
〝生きる〟とはなにかを必死に生きようとする目の前の生物に教わることとなった。どうしようもなく惹かれてしまった。
だがこの屋敷に住む者は誰もこの尊き方に会いに来ない。姉君が来ようとしたところ止められていたがどうやらこの方は疎まれているらしい。噂でしか耳にすることはできず正確な情報を掴もうとしても下っ端の私にその理由まで知ることはできなかった。
師匠に伺ったところ、
「君の使命を全うしなさい」とはぐらかされた。
そんな間にマイク様は2歳ごろから不思議な行動をされ始めた。
魔法である。隠れてなのか私が見ていないときに何度も行使するようになっていた。それもおそらく全属性。初級クラスをいともたやすく自在に操っていた。これが生きるを体現した姿なんだ…実に神々しい…自らで立とうとするものは才能の開花も早いものだと教えられた。一応報告が必要かと思ったが師匠に止められた。
何か事情があるのだろうか。
3歳ごろになれば普通じゃないことが理解できた。
言葉を覚えてたどたどしく難しい言葉を適切に扱えたのだ。この屋敷にいる姉君や一つ上の兄君と比べて出来が違う。思えば魔法も何気なく使っていたが詠唱を使わず自由にやっていた…末恐ろしいことである。
初めて家族との会食に呼ばれて食堂に向かったが実に堂々とされていた。テーブルマナーができていないと家庭教師がつけられたが、それもおかしなことだ。姉君はまだまだ作法ができていないと私でもわかるほどなのに…ここの親は頭がおかしいとしか言えない…
家庭教師として雇われた男はコミー・ショーデウス。王都の教育機関で優秀な成績を残しどこにも雇われなかった残念な男である。原因は明白、人とのコミュニケーションが希薄、こんなものに教育を任せるなど信じられない。旦那様に訴えようとして師匠に止められた。まだしばらく様子を見るべきと…
信じられない。あんな男に任せたら私の大切なマイク様が歪んでしまう。ただでさえこんな歪な環境でたくましく生きてらっしゃるというのに…
あ!この男手を上げました。私の大事なマイク様に…!ぶち殺して…
ダメだ!この屋敷に来た時に誓った。もう人は殺さないと…
でも殺さなきゃ大丈夫ですね…えぇ、問題ありません。
そう思ってこぶしを握り締めたとき、マイク様がタンッと飛び、顔面に回し蹴りを叩きこんでいた。魔力で強化した身体で放った一撃はノーガードの成人男性を軽々と吹っ飛ばした。
わたしは思わずガッツポーズをしてしまった。
ただ飛んだ先に旦那様と王国騎士団の副団長様。お二方はかつていた勇者様に仕え世界を周っていたといわれている。そんな二人にこんな失態を見せてしまっては…
マイク様はすでに逃げ出していた。す…すごい!反応の速さもさすがです。副団長様に目をつけられてしまったみたいですが、何とかなるでしょう。
わたしはどこで見てたのかって?秘密です。柱の陰に擬態くらいは問題ありません。
マイク様を追わねば…!
数日後、副団長様がマイク様を訪ねてこられた。
その日から訓練の時間ができた。一生懸命頑張るマイク様、逃走を図るマイク様、ボコボコにされるマイク様、日に日に強くなるマイク様、素晴らしいです。
兄君様たちやその従者に嫌な視線を受けてもめげません。魔法もありますし当然ですね。あ、これは不思議現象として処理するのでした。
姉君のお誘いも同様に危険察知して遠ざけています。良い判断です。
そんなマイク様ももうすぐ5歳になられます。適性検査を受けに魔法協会に行かれました。年の瀬の忙しくなる前にまとめて行われるイベントです。
大体12の月までの同じ年のものが集まり、貴族同士の子どもが認知しあう形になっています。
どうだったのでしょうか。ちらっとステータスも書かれた紙を見ました。
ん?初級ばかり?属性も足りてないですね…
あぁ、隠ぺい魔法ですね。魔法の痕跡すら隠すとは…
え!これはとんでもないですね…、たしかにこのステータスならば伏しておくのが正解でしょう。さすがはマイク様。
これからも伏して仕えたく思います。




