第29話 空のルミナンス
王都ですぐさま噂が広まった。
時計台の裏に鏡張りの未来的な建築が出来上がり、カフェが間もなく開店すると…
うん、誤算…この建築に首を突っ込んできた貴族が多数発生したが早々にセブン・イングランディーレ男爵が勇者パーティー特権を使ってシャットアウトした。
速すぎない?
これにはアーロンが関わっており、王家直轄隠密にも所属しているためそのツテも使い、とんでもない速さで根回しを終え店の開店を後押ししていた。
そのおかげか勇者パーティーが支援する店となってしまった…さらに画期的として扱われているのは観光地内の休憩所に重きが置かれる点にある。大広場近くの店は軒並み予約制や紹介制が多く旅目的にきた者たちの休めるスペースがあまりなく、立ち食いが増えゴミなども増えていた。ひとつの場所でそれが改善することではなかったがバックに勇者パーティーがついたことで広場にベンチが増え、ゴミを回収する場所も設置された。これに衛生面での効果にも繋がった。
さらに時計台自体に勇者パーティーとの親和性が強い。かつて王都では爆破の魔法陣がいたるところに設置される事件が起こった。王都が恐慌に陥ったが、その首謀者を暴き出しそれに連なった貴族も罰しその原因の悪魔を滅するためこの時計台に乗り込み制圧したという過去がある。そうした歴史もあり王国民がこの時計台を一つのランドマークとしてだけではなく、勇者の象徴として愛されているのだ。
そこに来てこの建物は王都は大きな衝撃になった…それを知らずにやってしまったマイクは項垂れていた…
現在、父が視察に来ていた…
まず聞かれたのは床にキレイに描かれた魔法陣である。見る者が見れば簡単な魔法であることがわかるがアレンジが組み込まれており、つなぎ目を別の装飾を彩っているためごまかす意味もありかなり先鋭的なデザインにもなっていた。
これは収納魔法であり、初めから収納物が決められている限定的なもの。そこに魔力を注ぐだけで机とイスが召喚される。この案はマイクがテキトーに思いつき、そのデザイン性をココがあげることによって生まれた合作でこの店の象徴にもなった。
さらに父はフロア自体はすでに広く使えるようにしておいたが目ざとく仕切りのギミックについて聞いてきた。…うん、登録してないです…はい…
アーロンやめてそんな目でオレを見るな…
そして従業員など足りない部分がないか確認して去っていった…
「やらかしましたね…坊ちゃん!」
「ニコニコすんなっ!盛大に巻き込んじゃったじゃねぇか!なんで止めてくれないんだ!」
「いやいや気づいていると思うでしょ…まさかこんな突っ走るとは思わなかったっすけど…」
「くそっ!いきなり期待の人気店になるなんて…こっちは中身で勝負する気なんか全くないのに…」
嘆きを放ちつつ父から渡された建築・構造の特許申請書と床に描かれた限定的収納魔法の特許申請書の書類を片付けていく…クソめんどくせぇ!
「こんなの絶対5歳の仕事じゃねぇだろ!」
「こんな事業はじめる人のセリフじゃねぇですぜ…あっははは!」
思わぬ方向に進んだ事業ではあるがしっかり運営していかなければならなくなった…ひとまずココの似顔絵屋は暇な時にやろう…まずはカフェからだ!こっちはなんとかしないといけなくなった…
人がたりない…募集しても仕方ないし…お茶自体そんな詳しいわけでもない…こんな状態で始める奴がいるのかよ
ひとまず、簡単な菓子をトムに作らせ収納させること、コーヒーがこの世界のどこかに名産としてあるはずなのでそれを見つける…そうしてようやく安心できるはずだ…
シェナに従業員の指導は任せよう…
「ココ申し訳ないけど一人で似顔絵の方はやってもらうことになりそうだよ…」
「カフェの方をボクもこのまま手伝った方がいいよね?」
「そうだねそうしてくれると助かるけど…あくまでも主体は絵の方で行くからね…いずれこの建物全体を買って場所を確保するから安心してくれ」
「ふふっ…大丈夫だよ…忙しくあるのがこんな幸せなんて思わなかったよ…
しっかり絵の方も形にしていくし、こっちでサービスに関しても考えておくよ!」
ココがかなり頼りになりそう、助かる。こうして任せて商品確保に向かうのであった。
赤道近くにあったような気候を持つ地域で山脈があるような場所に絞ってコーヒーっぽい文字を探す。こういう時のスプマンテがメチャ便利…この世界のグーグル先生!悪魔のくせに…
「我が君!見つけました!!コーヒーですね…現地ではクォウフィですかね?赤い実の種で焙煎・粉砕・ドリップという工程を経て香りのよい飲み物であるとか…これで問題ないですか?」
「うん、でどこにあるの?」
「空の国ルミナンスですね…現在取引があるのは王家と勇者パーティーのみらしいです」
「うわぁぁ父上案件かぁぁ!!でも家の中にコーヒーみたことないけどな…」
アーロンなら知ってるだろうか…
「ルミナンスですか…王宮からの転移魔法陣から行けると思いますけど頻繁にはムリですぜ…」
「だよなぁ~~ほかに方法はない?コーヒーっていう赤い実が欲しいんだよ!」
「空飛ぶしかないんじゃないすか?あとは王国内のどの位置に浮いてるかどうかってとこですね、あはは…」
空を飛ぶか…行けるじゃん!
「どの辺浮かんでるかは確認できないの?ある程度予測はつくんでしょ?」
「いやそれなら旦那に確認してもらう方が早いですぜ…」
「ムリでしょ、そんな関係でもないし!まぁいいや暖かそうな方に飛んでくる!」
「うわっ!せめてラヴェルを連れて行ってくだせぇ!」
「おっけぇぇ~い!!」
ラヴェを連れて王都を抜け出し果てしなく上空まで飛ぶ、寒い!空気の層を纏わせる…
さてどこだ?ぶっちゃけ気象がどうとか地域でどう違うかとかわからない。北半球なら南が暖かいっていう知識しかない…
「マイク様あちらに…」
ラヴェが指さした先に雲、そこからデカい鬼が上半身をだして風呂に浸かるようにくつろいでいた…
「なんだありゃ?すんませ~ん!ルミナンスってどこか知りませんか?お~い!」
「なんだ?客人か?人の子か…それにしてもえらい珍妙な服着てるな、趣味か?」
「オレはマイク…こっちはメイドのラヴェル…鬼さん何者だ?門番か?」
「おおよ!オレはルミナンスのヘッドやってるライジンマルだ!正面から来る客は久しぶりだ…勇者が来て以来だ!歓迎するぜ!」
「ありがとうございます。ルミナンス内で気を付けることはありますか?」
「そうだな、特にないけどそっちの嬢ちゃんは気を付けたほうが良いかもな…たまに底がぬける」
ラヴェはマイクの腕につかまる
「では、これで行きましょう!」
「わははっ!仲が良いな!楽しんでくれ!」
この領域内の雲には実態があるらしい…フワフワしてるデカい階段を魔法で飛びぬけると広い雲が重なりその上に家が建っていたり、畑も土だはなく雲から植物がなっている。川っぽい流れのある場所大きな森だが見える世界のほとんどが白い!のどかで壮大な場所そんな場所に降り立った。
雲に魔力が練りこんで固形化されている。故にここにあるものすべて性質変化されたもので自然が作られているようであった。
一軒一軒の家が遠く町という概念がなさそうである。平和だもんなぁ食べるものさえあればのんびりできる場所だ!
「さてコーヒーはどこだ?」
第一村人を発見した。普通のおっちゃんだった、コーヒーについて聞いてみると雲の積み重なった螺旋山で育てているらしい。ルミナンスではあまり飲まれることは少ないらしい。
その畑に向かってみると鳥の人がいた…獣人に分類されるのかな…
「すんませ~ん!このコーヒー畑の主ですか?オレはマイクって言います」
鳥人はこちらに気づくと警戒せずに飛んできた。
「先ほど入国していた人の子だな…ワタシはブルーだ…コーヒーが欲しいのか?」
「はい!できれば経営するカフェで出したいと思ってまして…」
「そうか乾燥したものなら大量にあるからな持って行ってもらっても構わないが焙煎もできてない上に荷物になるぞ…」
「収納魔法が使えるので大丈夫っす!ただは気が引けるので何か手伝えることはありますか?」
「ほう!魔法が使えるなら雲の固定を頼みたいな…この螺旋雲は定期的に離れようとするからね…ルド!この子たちを案内してくれ!」
ブルーが呼びかけると建物の方から同じ種類の鳥人が飛んできた。子供を引き連れている。オレサイズが6、7羽この人たちの種類は何だろう…トンビかな…鷹かな…
「初めまして、妻のルドです。雲の補修を手伝ってくださるのですね、案内します」
雲の補修は簡単だった。水属性の霧魔法に造形魔法の工程を組み込むだけで安定した固定雲を生み出せた。ルドには驚かれ、子供たちはすげぇと群がってきた。
「地上の子たちはこれほど魔法ができるのですか?」
心配そうに聞いてきたルドに
対してラヴェが
「いえ、マイク様だけが特別です。私はマイク様以上の子どもを見たことはありません」
と言い切っていた。ちょっと調子に乗ろうかしら…うふふ
子どもたちとしばらく遊んでブルーに案内されてコーヒーの倉庫に向かった。麻の袋にこれでもかと詰め込まれ積みあがっていた。定期的に捕りにきてもいいかと伺うとその時も手伝ってくれるなら問題ないらしい。ここの人たちはみんないい人ばかりだ。
お礼のトム特製クッキーを受け取ってもらい帰ることにした。最後に鬼さんの元に寄った。すでに風呂らしき雲の中から出ており執務机らしき上に腰かけ書類を見ていた。
「ライジンマル!お世話になりやした。帰ります」
「おうそうか!お前さんセブンの息子だったんだな!王宮まで転移も使えるぞ、良いのか」
「大丈夫です!息子といっても形だけですから!それでは!」
マイクとラヴェは滑空して王都に戻っていった。
ライジンマルは手にしていた書類をぐしゃぐしゃにしてゴミ箱に捨てた。
「あれが器だった子か……セブンよ、中々に面白い育て方をしているようだな…ぐはははっ」




