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第28話 店舗

 ココは簡単に絵師になるのを受け入れてくれた。


 目的は逃げ場所の一つとして就職先を安定させておくこと。現在特許を取ってある程度稼いでいれば家を出ればオレのモノにならない可能性もなくはない…そのためにもしっかり下町での地盤固めをしておく。

 もう一つはココの才能、これを他でつぶすのはもったいない。救えるなら救って恩を売っておいて活用するべき!!win-winだしっ!

 そしてこの社会で無事やれるのかを考えておきたい。未だ5歳児ではあるが実績は必要になるだろうし、不安は潰しておくに限る。


 あとは成功できるかだけど、意外と娯楽があるので苦戦はしそう…芸術は難しいからね、評価も曖昧だし、鑑賞側に理解がいる知識がいる。なのでそのための歩み寄りの事業、お絵描き教室とデフォルト似顔絵描きだ。現代には普通にあったしどのくらいの実益なのかわからないだけ!やってダメならココを抱えて動けばいい。


 そのために下見に行きます。どこに店舗を置くか…下町にルールもあるだろうししっかり見ておかないと!


「…というわけで下町に行きます!」

「坊ちゃん…友達出来たことがうれしいのはわからなくはないですがこれは旦那にどう許可とるつもりなんですか?」


 ニコニコでアーロンを指さしておく!


「ちょちょちょ!ダメですぜ、そんなこと!すぐばれますぜ!」

「もちろん!元勇者パーティーメンバーの後ろ盾があれば簡単だよ!売上間違いなし!」

「いやいや!元隠密なんで…知名度低いんですぜ!人気もないですぜ!」

「うん!だから似顔絵も飾ってみんなに崇めてもらおう!」

「いや、話聞いてます?他にも仕事があるんでそれは勘弁してくだせぇ!」

「しょうがない、土地借りる時と商業ギルドで登録するときに名前だけ貸してよね…」

「ぅぅぅ~、坊ちゃん…ひでぇ…」


 上手く交渉の予行演習ができたのでその勢いで慎重に下町に来た。

 何度か足を運んだ中で良かった場所に行ったり、まだ空き店舗を確認したり、まずは露店からやることも想定してみたりと街中を動き回る。


 ある程度目星をつけて時計台下で似顔絵露店ができないか交渉した。あとは王都裏の人間の存在も探ってみた…チンピラが少ねぇ…牛耳ってる存在はいないのかな。


 さてココは大丈夫かな…



≪ココ視点≫

「父上お話があります。お時間ありませんか?」


 父は書類に埋もれる机から顔を出した。だいぶやつれてる…


「…なんだ?ココか?どうした?」

「父上…ボクはいずれこの家を出るでしょう…なので早めに出ることにしました。この家はもはや風前の灯…お先に自立させていただきます」


 ガタッ!と父上が立ち上がった


「…何を言っている?ココはまだ…な…何歳になったんだ?いや、まともに暮らせる訳ないだろう貴族と平民では生活が違うのだぞ!そんなことも分かっていないクセに生意気なことを言うなっ」

「失礼ながら分かっておられないのは父上の方です!」

「なにっ!!!」

「兄のスティッフィリオがどういう人物か把握されてますか?このアエロリット家が今貴族の中でどう思われているか理解されてますか?ちなみにボクは10歳になりましたよ…生活については今よりマシになるでしょうし、一足先に平民として暮らします。今までお世話になりました」


「ちょっと待て…何を言って…スティッフィリオが何かしているのか…待て!お前はモルタルの…」バタンッ!


 スッキリした…ようやくここから解放される。いろんなしがらみがあった。もう耐えに耐えた。これからだ!これからは自由に生きよう…すごい子がいるんだ。彼がいるならどこまでも行ける。


「スッキリした顔してるじゃん!どこかに行くの?」

「あぁ、ティナ…そうだよ、この屋敷から出ていくのさ」

「え?ようやく!ははっ野垂れ死なないように気をつけなよ!」

「ティナも新しい職場探し頑張ってね!」

「え?私はまだここで働きはじめたばっかなんだけど?何言ってるの?」

「…そうだね、じゃあね」



「本当に出ていかれるのですか?」

「シェラ…うん…荷物も少ないしもうまとめちゃったよ…」

「旦那様はなんと?」

「さぁ?どうせボク自身には興味ないのだから問題はないよ…」

「もっとよくお話をされた方が…!」

「もう何のために頑張ってるのかわからなくなっているんだよ…手遅れさ…母を放っておいて奥さんを放っておいて愚兄を放っておいてなんの成果も出せない…あの人の頭の中には過去の思い出しかないんだよ…」

「…そうですか……もうここも手遅れなんでしょうか…」

「ふふっ…一緒に行くかい?シェラはなんでもできるたし、たぶんマイク君も気に入ると思うよ…」


「…ありですね…私も連れて行ってください!」

「本気?」

「はい!正直もうこの家に未来はありませんから…いろんな貴族からにらまれて、ただでさえ過ごしにくいのに破滅まで待っていられませんでしたから」

「そっかシェラよろしくね」


 数日後シェラとともに下町に降りた。もう二度と入れない貴族街になんの思い入れもない…

 シェラも晴れ晴れしている。鬱屈としていた表情は見る影もない。それどころかニコニコだこんなに笑っているのか…


「私は前男爵様には感謝しておりましたがリエノ様には大変苦労させられましたからね…もう面倒も見たくありませんし…ようやく私も自分の人生を歩める気がします」

「そっか…じゃあなるべくいい環境にしなきゃね…」


 そうしてアエロリット家で侍女長になったシェラを連れて屋敷を出た。大した荷物もなく服と画材と母さんにもらったネックレスを持ってマイクに指定された場所に向かった。


「こちらですか?」

「うん、そのはずだよ…」

「大変なのでは?」

「…まずいかも…」


 そこは時計塔裏に隠れた3階建ての建物の3階、時計台の陰に隠れすべての人間の死角になる場所…


「こんな場所でどうするのさ…」



「紹介するね…元侍女のシェラだよ!」


 ココが連れていた30代くらいの女性の方で幸薄い感じ…なんか闇が深そうだけど大丈夫かしら…


 集合したのは時計台ふもとの建物の屋上、王宮と向かい合う形で建てられており、すぐ下に大広場を見渡せる王都の観光名所の一つである。


 ココとシェラはすでに新居に越してきており、アーロン名義で借りた時計台裏の建物の3階、2部屋作り各々の生活スペースを作り始めた。3階を丸々借りたので補強しつつぶち抜き絵画教室として体裁を保てる環境を手に入れた。基本的な単純構造の家具はすぐに作った。


 それだけやっても二人の視線は冷たいまま…なにかあったのか聞いてみると


「この場所では人を呼ぶには難しいよ!もっと入りやすい場所でないと誰も来ないよ…」

「うん、その通り!なのでこちらに集合しました!」


 二人は?を浮かべる…どうやら本気でわからないらしい。それはそうだ!オレもイケるかどうかわかんねぇんだもん!


「オレが考える方法はこの屋上で似顔絵描き露店をやってこの屋上から向こうに渡り廊下を作ります!」


「「え?」」

「3階の教室の壁をぶち抜いて渡り廊下でつなげると足を運びやすくなるかなって…新規のお客さんも単発で入ってくれたりするかなって…使わないときはカフェテラスとして開放するって役所の人と掛け合ったら是非!って言われたから大丈夫だと思う!」


 微動だにしない…あかんかな?


「ごめんごめん一気に話過ぎたよね…絵画教室の方は急にできるモノじゃないし今は置いておいて、まずは屋上での似顔絵屋さんと向こうの建物の3階でテラスを作って解放、落ち着ける環境でカフェでもやろうかなって話なんだ…シェラにはカフェで働いてもらおうかなって思うんだけどどうかな?」


 しばらく間を置いてからシェラが話し出した…


「それはマイク様が今考えられたのですか?いやでもカフェという考え方は悪くないと思うのですが…その人が足りなすぎると言いますか…お茶のほかに菓子など用意する料理人に心当たりがありません…」

「お茶だけでもいいんだよ、持ち込み可能にして広場に屋台で買ったものを食べれる場所にでもすればいいよ」


 またしても絶句…すかさずココが


「渡り廊下を架けるにしても許可は必要なんじゃ…いやもらったって言っていたか…でも飲食店になると話が違ってくるんじゃ?」

「そうなったら絵画鑑賞というテイにしようか…茶はあくまでサービスとか?とりあえず資金はあるから注意を受けるまではやりたいようにやる感じかな、工事の方はオレが勝手にやるし…」


 ダメならまた違う方法という発想に二人は唖然としてしまった。失敗が許されないような窮屈な場所にいたせいか二人は思っている以上に過酷な環境にいたと思い知らされた。それとも彼が特別なのだろうか?全く触れてこなかった価値観でありマイクへの期待が芽生え始めていたシェラだった…


 その前に練習としてモデルになる方を見つけて描くというお絵描き屋の実務作業をお試しでやることになった。まずココにはデフォルメで描きやすく見栄えがする人を探してもらう。

 特徴をとらえて分かりやすくするをモットーにまずはやってみることにした。


 最初はマイクとシェラから描いていき、誇張度合いの調節もしていく。そうすることで描く前に客に対してわかりやすく注文させる目安を作ることができる。

 シェラは自分の顔を描いてもらうことに喜んでいたがMAXの誇張具合で描かれた能面感にショックを受けていた。マイクのことはクソ生意気に描いたり、暴走気味に描くことでバリエーションが多く描けるため練習に適したモデルとココは喜んだ。


 他にも屋台をやってるおっちゃんや暇そうな八百屋店主、衛兵、運動場の子どもたち、花屋のお姉さん、武器屋の物騒なおじさんなどなどいろんな方をスケッチしついでに宣伝用として額に入れて飾ってもらったりした。


 みんなあまり絵を描いてもらうことがないらしく喜んでいた。ココは嬉しそうでありシェラもその仕事に付き合うことに満足している雰囲気である。


 そうして王都を巡ったことである程度の集客効果を狙いつつ、まずは似顔絵屋を露店として安定させることを念頭において動き始めた。


 基本的にココについてシェラが動いているためマイクは3階の工事に入っていた。土属性のレベルも上がっているので重要な柱が理解できリフォームも的確に行えた。2階に二人一部屋の部屋を借りれたのですぐ解体、カベを取り除き道側と時計台側をガラス張りにしていく。


 昼間に行われている工事だがしっかり見上げるものがいないせいでいつの間にか出来上がったガラス張りの3階…さらに時計台ふもとの建物屋上に繋がる渡り廊下が静かに出来上がっていた。屋上にいたものはその代わりざまを見ていたので驚いている者も多い…


 建物内に必要なものもあるのでそれを揃えることにした。簡単な厨房を設置、カウンターと休憩室…を一角に作りなんとなく室内を整えた。よくオフィスビルで見る仕切りを壁に埋め込めたりスライドして設置できたりするやつも作り、全面開放で使えたり、教室としても使える超近代的なフロアにできた。


 あとはイスと机…これはシェラに任せよう…おしゃれなものは女性に選んでもらうに限る…


 こうして静かにカフェの店舗を構えた。あとはココに絵の方を頑張ってもらう。それなりの売り上げにつながるだろう。


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