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第22話 海に行きたい!

「暑いっ……」


 夏が本気を出してきた今日この頃マイクはあることを考えていた。


 それは…海に行くこと…


 この王都から東か南に進めば近くの海に出れるらしい。ただ距離感がわからない。地図を手に入れたのにどのくらいの縮尺かが明記されていない。なんでだ!?


 さらにどちらを目指すにしても2,3領地を超えていく必要がある。そこまでうねりの多い土地ではないので馬車を走らせれば1か月くらいか?いや馬で行けば10日くらいで?あ、馬に乗れない…


 …ということで空を飛んで一直線に目指すことにした。



「そのために飛行魔法を会得したいと思います」

「思いますってなんで自分に宣言してるんですか?止めるに決まってますよね?普通に無断外出ですぜ…」

「シャラップ!ヘイ!アーロン!貴様は男ではないのか!男であれば空を飛ぶことは夢ではないのかね!?」

「いや、人の夢でしょうけど…疑似的に浮かぶくらいはできますぜ…」


「ダッツライト!そう、無属性の念動魔法で浮かぶことや風属性で吹っ飛ぶことはできる!だがしっかり制御して低燃費で気軽に使えるものはない。故に作るんだ!飛行魔法ぅぅぅ~~~!!」


 一人でぱちぱちしていると段々空中に浮かんでいく…


「…?これは?糸?」

「空を飛ぶのに魔法は必要ありませんぜ…モノさえあれば十分…」

「これ固定魔法ってやつ?すごいね冒険者ギルドでも使ってたよね…糸と念動魔法と組み合わせて…って魔法じゃんか!」

「ちっ…隠ぺい魔法もかけてるんですから簡単に見破らないでほしいですぜ…それだけのセンスがあるんですから、もうとっかかりはあるんでしょう?」


「ふっ…その通りだよアーロン、問題は勢い余ってどこかに飛んでしまわないか心配だからだよ…」


 補助を頼み、まずは重力魔法で最低限軽くする、空中をキープするためにはホバーリングを風魔法でおこす。これでかなり魔力消費を抑えられる。1メートル浮かび、手のひらで操っていた風を足の裏で行う、バランスを取りつつ安定させる。


「うわっ!さすがですね…高度を上げてもその状態をキープできるなら問題ないですね…」

「うん…あとは上空の風を読みつつ推進力を加えれば行けるんだけど…安定性に欠けるかな」

「魔力の調整だけで何とかなりそうですけどね…心配なら固定魔法を覚えて糸を手繰るとかぶら下がって勢い付けて飛ぶとかですかね…爆発させるとか滑空するとかも一つの案ですね」

「滑空かいいね…それに固定魔法は早速覚えよう!」


 マイクはさすがのセンスで固定魔法を習得…滑空方法を考えることにした。


「自分が見たことあるのはグライダーという翼を模したものにつり下がり滑空する方法ですね…かなり大きいので移動手段としては疑問ですけど…」

「う~んハンググライダー?それよりかムササビマントの方がいいかな…」

「ムササビ…?確かに滑空しますけど、あのたゆんだ皮を再現する気ですかい?」

「これで楽に海までたどり着くぞ!」


「絶対いかせないっすけどね…」


 その声は小さく漏れるように言ったためマイクは聞こえなかったことにした。



 その素材を探すため以前行った服飾店を訪ねた。


「空気が通らない布ですか?防水の素材でしたらいくつかご用意しますが、どのようにお使いになるか伺ってもよろしいですか?」

「ん~空を飛ぶためだよ!」

「そ…そうですか…」


 店員は思わず年相応のふるまいをしているマイクに対して困惑してしまう。以前来た時も共をつけている割に自ら注文していったのを覚えていたのでそのギャップに動揺したが悪用の心配はなさそうなので売ることにして後日配送してくれることとなった。


 翌日届いたかなり大きな布をラヴェルとともにムササビスーツの形状を図示して作っていった。体にフィットするようにベルトを造形魔法で組み合わせ作っていった。

 全身ピチピチスーツで風の抵抗をどうにかしようと考えたがいちいち着脱するのは面倒くさい…ハーネス作って着脱を簡略化させよう!


「靴工房の方に連絡されますか?」

「そうしようか…注文としてはイケるのかな?」

「問題ないでしょう…こちらのマネキンとムササビスーツの方運びますね…」

「うんお願いね…」


とりあえず成長度も考え、2・3組作り上げた。将来的に魔力量が増えれば重力魔法だけで飛べるかもしれないのでいらなくなるかもしれないが…


 海への想いを馳せ飛行試験に備えるのであった。


 マイクはアーロンとラヴェルを連れて王都郊外の広がる草原に立っていた。マイクの飛行魔法とムササビマントの試運転をするためである。


 マイクにはアーロンの操糸魔法の糸をくくり付けて、安全面を確認。アーロンは不満たらたら顔で見守っていた…

 ラヴェルはなにが始まるのかあまり聞いていなかったので少しワクワクしていた。


「それじゃ行きま~す!」


 マイクは気が抜けるような掛け声で重力魔法と風属性のホバーリングで上昇していく3m,5m,10mと徐々に上がっていき大体100mくらいで充分な高さと感じ、そこからムササビマントを広げて滑空を開始した。


 上空の風向や風量も把握、いざテスト!


 魔法を解きつつ滑空へ多少の推進力を加え前へ!


 落下と同時にアーロンとラヴェルは焦るがマイクが体勢を整えるととんでもない速さで進み始める。


「「え?」」


 二人はその速さに驚き、ただそのあたりをくるっと回ってくるだろうと考えていたら東に真っすぐ進み始めた。テストと思ってたばかりかなんの装備も持ち合わせていない。


 すぐ追いかけようとするがとんでもない速さでマイクが進んでいるため、マイクが魔法を最大出力で使っていると勘違いしてしまう。このままでは道中で

 魔力のないまま危険にさらされてしまうと考え、糸を手繰りラヴェルを抱え追い始めた。


 今までたわんでいた糸がマイクの体を締め付け速度がかなり減速した。


「うげぇぇ!糸のこと完全に忘れてた!締め上げられ…うげぇぇぇ!!!」


 すでに2kmくらい進んでいたマイクは何とか着陸…魔法に関しては問題なさそう…減った魔力も混合魔力にしてはかなり少ない。魔力量の1%くらい、かなりの省エネ、それと魔力最大量があがってる。


 追いついた二人は途中からたわんだ糸から墜落したと思い最高速で飛んできたが…ピンピンしてるマイクを見て一気に脱力した。


「お~い!早かったね~成功だったよぉぉ~」

「ちょ…勘弁してくださいよ坊ちゃん!あんな速度で行かれちゃたまったもんじゃないですぜ!魔力なくなったらどーす…全然平気そうっすね?」

「滑空してるときは魔力も極限まで切ってるしあれは落下速度を推進力に変えてるだけだよ!」

「うわっ、なんかとんでもないこと言い始めた。ってことは海まで簡単に行けそうじゃないですか!」

「そうなるね…っと言うわけでアーロンも着替えて一緒に行こう!」

「マジですか?」

「どのくらい行けるか確認は必要だよ!三人分に魔力行使が増えても問題ないし…!」


 アーロンはしぶしぶ受け入れつつ、ラヴェルを見るとすでに装備に着替えており、ともに飛んでいくことを受け入れたのだった。


「す…素晴らしいです!マイク様!早いです!私は今、風に!風になっています!ひゃっほ~い!」


 ラヴェルは普段とは違いかなりテンションを上げていた。珍しいと思いアーロンに顔を向けると


「さすがにこの体験は仕方ないですぜ!自分でもかなりテンションが上がるのを自覚させらえます」

「そういうものかな…それにしても魔物もいないし快適だね…軽く丘も荒野も越えられるし画期的な移動手段だね…」

「はぁ~重力魔法や風魔法の緻密な操作なんて誰にでも出来るわけないんすから、こんなの独善的以外の何物でもないです!」

「あはは…おほめいただき光栄だよ!」


 おかしな格好をした3人は上空の旅を楽しむのであった。

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