第21話 夏は虫取り
賭けの精算分である訓練は終わった…死ぬほどきつかったが終わってしまえばなんてことない!まだこの体はバイタリティに溢れている。いや落ち着け向かった先で寝る可能性がある。行って帰ってくるだけだ…大丈夫……!
早起きして関門を全力駆け抜け森に向かう。前日に仕掛けた罠、はちみつ布を吊るした木を目指す。王都周辺の森であり、大した魔物も来ないと踏んで現場に到着した。
…えっ!?
そこにはデカいカブトムシが吊るされていた…
「くっ…やっと届いたのに…まさか罠だったとは…!!」
大きさとしては垂らした布に届かない1mくらいの体長、はちみつを舐めきっており寄ってきていた他の昆虫にはちみつを塗って食べ散らかしていた。そのうえ布を食べようとして吊るされた針ごとのどに詰まらせていた。
釣りだな…コイツオレを誘っているな…こんなアホみたことねぇもん!
数十分たっても針と格闘している。
しゃべれるということは魔人もしくはペットの魔物…こういう相手の処理は面倒くさいんだよな…
「お~い大丈夫?」
「…!?これが引っ掛かって取れないんだ!助けてそこの優秀そうな人間の子よ…」
どうやら甲殻の間に針が食い込んで取れなかったらしい。上に逃れろよと思ったけど針の先に返しをつけてたことを思い出した。土魔法で形状を変化させ、デカカブトを下ろす。
「いやぁ~助かった…優秀そうな人間の子よ、ありがとう!誰ぞの陰湿な罠を解除してくれたこと感謝する」
うわっ陰湿とか言われた…目的はお前じゃねぇんだよ!噂の虹色に輝く『七色カブトムシ』を狙ってたんだ!
「ゆあうぇるかむ…それで何ものなんだ?」
「よくぞ!聞いた人の子よ!ワタシはアレクレス!ぜひアレクと呼んでくれ!かつての魔王四天王の一角『鬼のガトーム』に仕えた『鉄壁のヘラクレス』の息子『豪鉄のアレクレス』だ!」
「…アレク?は魔人なの?」
「そうだ!昆虫型に分類される甲殻魔人カンタロス一族の一人でもある。『鬼のガトーム』様のご子息ガトームソン様を探して旅をしている!なんでも魔王様の因子を持つ者が現れたとか、そういって単身で探しに出ていかれたのだ!」
「あぁ…そんなしゃべって大丈夫?あんまり人に聞かせていいような内容じゃないでしょ…」
「そうであった…だがおかしい、本来であれば魔王領の話を話そうとすれば、木っ端みじんになるんだが…人の子ではないのか…」
「さぁ?魔王様には夢の中では会ったことあるけど…人であることは確かだよ…」
「…魔王様に会った?人の子が?」
「あぁ、たぶん偽物だよ!どっか行け!って言ったらいなくなったし…お土産に能力下げられたのはバリむかついたけど…!」
「それは許せんな!魔王様を語るなど…魔人では出来ぬから人間の企みであろう…大変であるな人の子よ…」
「うん…このあとアレクはどうするの?」
「王都に用があったのだが…この姿では正面からは無理であるからな、済まぬがこれを王都内に持ち込んでくれんか?危険ない…文字の悪魔である女王スプマンテ様への定期連絡なのだ…持ち込めば勝手に読んでくださる、頼めるか」
「スプマンテ?うん問題ないね…なんか報酬くれる?」
「そ…そうだな、なかなか強かであるな人の子、これをやろう…」
木製のホイッスルをもらった…!
「それを吹けばどこであろうと駆けつけてやろう!危険であればすぐ呼ぶといい!」
「ふ~ん、ありがとう使わないように気を付けるよ!」
「そうだな…使う状況がないことを祈っておこう!」
そういうとドシドシと森の奥に消えていった…
なんだアイツ…
虫を捕まえられず魔人を呼べる笛をもらった…部屋に戻ると人工知能の本に
宿っているスプマンテに手紙の話をした…
「なんとアレクレスは我が君を使ったのですか!なんと!信じられません!今すぐカンタロス一族ごと根絶やしに!」
「いや、いいよ!気づかれなかったのは…ほらっ…あれ…魔力が馴染んでる証拠だろ!それより読んでいい?」
「もちろんです我が君!我が君に対しての連絡でもあります」
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定期連絡
・魔王領にて抗争勃発、元四天王『追送のミルフィーユ』とドラゴンロード『ゴウガシャ』の激突によりM~P地区3~14まで消滅、『追送のミルフィーユ』とその部下『豪放のライラック』『万年町長メルトリーゼ』『悲哀のキャメロンディアトニウス』死亡
ドラゴンロード『ゴウガシャ』は負傷のため父『アソウギ』がドラゴンロードを襲名、次期息子『ナユタ』が引き継ぐ模様
・鬼の子『ガトームソン』失踪中、後を追い鬼の十角捜索へ
・魔王因子を持つ者王都に現れるも消えた模様
・元魔王様の姫君キュア様人間界に逃走した模様、情報求む 従者『絶景のセキハイ』
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「…うん、なんか大変そう……」
「では、文字ごと魔力をいただきますね」
スプマンテは文字を吸い込み自分の魔力に変換していた、すごい…
なんか変な日だった。
〈スプマンテ視点〉魔王領
私は女王スプマンテ!文字を司る悪魔として悪魔をまとめる立場を務めていた。悪魔はそれぞれ概念を司り、様々な種族の下につき時には従い、時には従わせ魔王領を支えていた。
魔王様が勇者に倒され復活のため己が種を世界のどこかに植え付けた。そのため誰にもその種の場所を教えられず、探すはずだった数字の悪魔が特定できず、かなりの間かけて壁の悪魔が5つほど候補を絞ってきた。
私は王都に向かった。私は文字に宿るので移動する商人や冒険者の荷物に同乗してきた。そしてくまなく探した。貴族街にその気配を感じたが一番やばいのも同時に感じていた。かつて勇者の仲間として乗り込んできた魔導士の男と盗賊まがいのいけ好かない野郎の暮らす屋敷があった。そこには先陣きって突っ込んできていた戦士の男もしばしば訪ねていた。なるべき近寄らず王都を徘徊していた。
教会の方にもリスクをおかして寄ったが狂ったように魔物を浄化していたクソ神父もいやがった…嫌がらせに教会内の本の文字を書き換えといた。魔王様を崇め奉れ!
王都を探ってしばらくたったある日、とんでもない魔力が天に伸びていった。元は魔導士のヤツがいるところだ…!危険承知で文字を辿って移動する。ここは書庫か…ココじゃない?
マズイ…!今にも消えそうだ…!くっ!何かしら結界が構築されている!?
厄介な…身動きが取れなくなり、しばらく勇者の仲間が集合しやがった…ヤバイ!
一か八か結界に刻まれている刻印魔法に宿って大本へ向かった。
なんとか通り抜け宿れた本には魔王様の魔力がびっしり刻まれていた。懐かしい。この恐ろしい感じ…はぁ満たされる…
中身が気になったところ、この社会のこと、世界の理がかかれていた。
そしてある一文
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マイクとその周りの人間への安全性、命令の服従、自己防衛を目的とする原則とする。
①人工知能魔法は人間に危害を加えてはならない、またその危険を看過することで人に危害を及ぼしてはならない
②人工知能魔法は人間に与えられた命令に服従しなければならない。ただし与えられた命令が①に反する限りこの限りではない
③人工知能魔法は①、②に反するおそれがない限り自己を守らなければならない
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人工知能魔法?ふむふむ刻印魔法に意志を宿らせるのか…え?私を作ってくださっている?いやまさか…
たしかに私は魔王様のご命令に背いたことはありませんし、これからもその意をくんで動くつもりでしたし、こんなわざわざ作らずとも心配ありませんのに…
あ、読み老け過ぎました…たびたび刻まれた魔法から魔素を吸収して結界魔法に突っ込んでなくなった魔法を回復できた。やっと魔王様に…いや我が君にお会いできる…
「スプマンテ、ただいま帰還しました、我が君!…我が君!お返事を!あなた様のかわいいかわいいスプマンテであります」
「いや、知らんけど…キミの言ってる主ってもしかして魔王のこと?」
「っ!!?…ド…ドッキリですね、そうですね!えへへっ…我が君……全くもうお人が悪いです、さすが我が君!」
最初は魔王様ではないのかと疑ってしまった。
だが現在この人間の体に馴染み成長するまで機を伺うとおっしゃった…
それならば付き従う。
こうして本に宿り我が君のおっしゃることを記述していく。魔法についてや社会について他にも他方面の情勢と様々な情報に埋め尽くされていった。収納魔法と管理魔法を用いて文字をいくらでも記せるようにしている。もちろんその分の魔力は必要だが私によって自己補完されいくらでも書き込めるようになっていった…
そしてしばらくして定期連絡が来た。
甲殻魔人カンタロス一族『豪鉄のアレクレス』が我が君と接触なされた。分不相応にも我が君に手紙を配達させた…許すまじ…この方をどなたと心得ているのか…魔王様を感じられぬとは全くもって情けない!まだ本調子になるまで時間がかかるというのに…苦情を届けてやろう!壁の悪魔を探して返事を返すことにした。




