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第18話 兄の婚約者 ふたたび!

それは突然だった…


いつも通りコミュ障先生の授業をすっぽかし自室の上に新しく作った屋上庭園でのんびりしていた。壁を隔てた隣も同じようにこれまで使っていた屋上庭園、ただくつろげる環境もなく、植物も減っていた。


隣からは声が届いてきた。母が入りたいと言っていたので早速来たのだろうとのんきに予想しつつ、プールサイドチェアで人工知能本の記述をしていた。


「うわぁぁ!!いい景色ですぅ!ここが屋上庭園なのですね。案内していただきありがとうございます!」

「私も初めて来たのよ、ごめんなさいね、思ったより歓迎できる環境じゃなくて…」

「いえいえ、連れてきていただいただけでもうれしいです。これは温度計ですか?温度管理もしっかりされてるんですね」

「そうね、思ってたより植物が少ないわね…」

「お母さま!ここは暑いですね。なにがあるのでしょうか…」


母に加えて姉と兄の婚約者であるライラ嬢が来ている…なぜ?


聞いてない!突然来たのか?いやそれはない、オレだけ聞かされてない。いらんサプライズされてる。カベ作っておいてよかったぁ~片側防音仕様にすれば面白そう…いつか挑戦しよう…


「…マイク様もいらっしゃると聞いてましたが、見当たりませんね…」

「そうね、メイドからは大体屋上にいると聞いていたのだけど、勝手に外に出たのかしら?」


うわぁ何で探してんだよ!兄と過ごせ!兄と!何してんだよ長兄は?


「それにしても暑いですね、たしか窓を押せば開くのでしたね…」


母ヴィータローザが窓に触れると自然な動きにまかせて上にガラス戸が開く。


「これはすごい仕掛けですね!横に開くものや引くものしか見たことがなかったので感動です!」

「うわっ!ほ…本当だ…!私の部屋にも欲しい…!」

「この足場も手すりもすごいわ…こっちの棚も連動しているのね…」


女性陣は窓のギミックに大興奮しているようだ…

植木鉢の棚が段々になって光を浴びやすいようになってるプランターが置いてある場所も窓が開くと同時に窓から離れ普通の棚のように縦に畳まる仕組みを完成させておいた。さらにガラスの下部がテラスのようにでっぱりになる仕組みもこないだ父が建築登録したものなので珍しがってる。


「ここでお茶にしましょうか…ハナお願い」


母の侍女のハナは命令通りすぐにイスと机など諸々を用意した。


早いよ…あとゆったりすんな、こっちがのんびりできない…!


「マイク様についてお聞きしたいんですが…」

「あら、バートラムのことはいいの?」

「えぇ…バートラム様とは自然と上手くやれそうな気がいたします。ただあまり弟さんと仲がよろしくなさそうなので…」

「…そうね、あの子ジーンにもノヴァにも気が向けられないのよね、心配だわ!ライラちゃんが味方でいてあげてね」


「えぇ!それはもちろんです。ただマイク様について聞いておきたいだけですので!」

「なにかしら?」

「なぜ?マイク様の存在を公表されていないのですか?」

「あら?適性検査に連れて行ったこともあるし、全くしていないわけではないわ。だからこそあなたにも紹介したでしょう。」

「ですが、紹介するなら揃ってからが基本…なのでは?なぜわざわざズラして紹介されたんですか?」

「あの子には好きにやらせてるのよ。男爵家の三男じゃ大した出世も見込めないでしょ…そのためにも今の内に色々やらせて選択肢を増やしてあげたいの…これじゃ答えになってないかしら?」


「蔑ろにしているわけではないのですね…」

「…もちろんよ、あの子は私の息子だわ!これからもしっかり育てていくつもりよ」

「…そうですか……」

「少し、休憩してスッキリした方がいいわ、そんな顔でいたらこれからバートラムに会うのに私に何かされたのかと心配させてしまうわ」

「…はい、では失礼します」



…うん、なんか…なんだろう…そうだっけ?って感じ…

メチャクチャ怪しまれてるじゃん!オレの扱い…これはオレも動く必要があるな…


今のオレの自由が理解できないといつまでも心配してくる可能性があるな…

絡まれたらしっかり対応しよ…



「お待ちしておりましたバートラム様!」

「ははっ…お待たせしたよライラ嬢…母上と妹の相手をしてもらったみたいで悪かったね」

「いえ、いずれ家族になる方々ですもの、楽しい時間でしたわ。なにせ初めて屋上にも足を踏み入れましたの!今後どんな植物が実っていくか楽しみですわ!」

「そうか、屋上にもう行ってしまったか…私も少し気になってはいたんだが勉学に時間を取られてしまってね」


イングランディーレ家談話室にて嫡男バートラムと婚約者ライラ・ビートブラックが茶を楽しんでいた。

バートラムは12歳から貴族の学校に行くことになるので魔法の勉強や宮廷役人となる勉強をしている。ビートブラック家は一人娘であり養子などの予定もないため、ビートブラック領はバートラムが引き継ぐことになっており、その勉強も入っている。そうした影響で勉学がハードになっている。


だがライラはそうした苦労をまだ理解していないのでマイクという弟に対してかなり冷たいのではないかと危惧しており、弟や妹との関係の希薄さもさらに疑う理由になっている。会話では普通なので自分に対して友好的だが身内に対して冷たい印象を抱いている。

そのため人間性を疑いつつ関係を築こうとしている。ビートブラック領を任せるに足るかを確認している。


「なるほど、それほど魔物が出ることは少ないのか…害獣の方が厄介もなるのか…」

「えぇ、特産のキノコや果樹への影響はかなり多いですね。魔法での対処もありますが魔力痕が散らかり、魔物が生まれる可能性もあるのであまり多くは使われないのが現実ですね」

「へぇそうか…となると屋上にあるような誰でも使うことができるギミックで害獣を寄せ付けない仕組みが必要なわけだね…マイクに相談してみるか?」

「っ!?よろしいんですか?」

「?あぁ、僕の実績にはならないだろうけど、貢献としては十分になるだろうからね、

 カレン!マイクに伝えてくれるかい?」


「はい!伝えてまいります。現在、王国騎士団訓練場におられますがご用件の方はお伝えになりますか?」

「そうか、元気そうなら伝えておいてくれ。まぁ鍛錬中なら問題ないだろう」

「かしこまりました。すぐに伝えます…」


ライラは動揺している。以前来た時は明らかにマイクを遠ざけていたからだ。伸びきった使い古されたような服を着せられ普段過ごし、夕食の場でようやく紹介され、会話にいれようともしない。面会すら遠回しに断られていたのだ。以前と対応が違うのだ、当然である。


しばらくしているとズドォン!という音とともに建物が揺れる。


「な…なんですか?」

「来たのかな?」


…外側騒がしい、屋敷では聞きなじみのある大声が響き渡っている。やがてその勢いは小さくなり、やがて館内に入った高い声が兄上ありがと~!!!と雄たけびを上げているのが聞こえてくる。


その声に反応に顔を引きつっている男がライラの前にいた。


「うれしいのですか?」

「…悪いね、あまり感謝をもらうことは少なくてね」


外からは「マイク様汚れを落とされませんと…」「大丈夫大丈夫!不調法者なのはバレてるんだから問題ないって!」などと聞こえてきて思わず苦笑してしまう。

ドアがノックされ指名した末弟が部屋を訪れた。その姿はボロボロでかつてライラ嬢が初めてみた状態とかぶって見えた。そういうことだったのかしらと納得してしまう。


「失礼します!兄上初めての御用時ということで参上仕りました!」

「元気なようだね…ライラ嬢がキミに聞きたいことがあるそうだから答えてくれるかい?」

「はい、ゴリラから救ってくださっ…副団長から助けていただいたこと誠に光栄の極みにございますますりぬ!ございます?何なりと答えさしていただく所存ぬでありんす!」


聞きなれない敬語になっているライラは戸惑いつつも害獣駆除の方法を尋ねた。


「そうですね…魔法が使えないとするとこのくらいのカゴを用意してエサに食いついたら閉じ込めるような罠を置くとか、害鳥であれば猛禽類系の鳥に見守ってもらうとかですかね~」


といってあっという間にゲージを作り、罠を完成をさせた。


「魔法がうまいのですね。造形魔法はかなり魔力を使うと聞きましたが、素晴らしいですね。どういった仕組みなのでしょう?」

「この奥にエサをぶら下げるフックがあるんですけど、これを引っ張っただけで入ってきた入口が閉まるようになってます。このフックの部分は釣りと同じようなイメージですね…食らいついたが最期!みたいな感じですね!」

「…この構造は商標登録された方がよろしいのでは?」

「使ってみないと効果がわからないので使ってみてからの方が良いかと思います。ビートブラック領で使ってからでも遅くはないかなと…」

「よろしいのですか?私たちが先に登録してしまう可能性もありますよ…もちろんそのようなことは致しませんが!」


「う~ん、それほど使い勝手がいい気がしないので…そうですね兄上にお任せします。婚約祝いもしてませんし、お二人で形にしてみてはいかがですか?」

「良いのか?お前の実績にできるのだぞ…」


「下手に実績なんて作っても面倒なだけですよ、それより兄上の地盤を固めたほうが将来的に楽ですよ…ってアーロンが言ってたんでそうかもって思ってんですよ」


「そうか…ありがたく使わせてもらう、ライラ嬢他には大丈夫かい?」

「…いえ、マイク様がそれでいいのしたらこちらは全くもんだいございません。鳥を飼っている者やテイマーを探してみます、感謝します。」

「いえ、こちらこそ今日の地獄から救っていただきありがとうございます。これにて失礼させていただきます!」


マイクが退室すると


「本当によろしいのでしょうか、このような実用的で素晴らしいものを受け取ってしまっても?」

「お祝いらしいし、これ以上は無粋でしょう…」


ライラはその言葉にうなずくとうつむきがちにバートラムに問いた。


「バートラム様はマイク様のことをどのように認識しているのですか…?」

「…ああ、そうだね、少し誤解があったようだね。あの子に関わるのはこれまで禁止されていたんだよね、詳細は僕にも知らされていない。生まれたことも隠されていたんだ。だからあまりあの子のことは知らないんだ、これから接点もできるだろうけど君もあまり探るようなことは遠慮してくれ」

「そうなのですね…」


ライラはようやくイングランディーレ家への疑心が薄くなった。

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