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第11話 力の起源

 鬼がいた…


 どうやら遠征から帰ってきたみたいだ…屋敷の中庭でにじり寄ってくる副団長。


 お土産を要求してみたが討伐した魔物の魔石だった。魔石の使い道を聞いてみると主に魔道具の動力素材として使われているという知ってる情報をくれた。他にも装飾品として加工したり、粉々にして武器の装備に使われることもあるらしい。魔力の伝導効率が高いので魔力回線の素材とされることもある。


「うん、ありがとう、そんじゃ!」


 肩をつかまれる。5歳児の肩を軽く包み込む手がすべての行動を抑制してくる。


「ちょっ…放してもらっても?忙しいので…」


 全然放してくれない…

 捕まってしまったがオレもこの鬼ゴリラのいない時間に対策を用意していなかったわけではない。まず魔力量も少し増やした。魔力量の増やし方は魔力を消費して超回復で成長期に伸ばせるだけ伸ばすことが一般的だが、オレはさらにある方法を模索した…


 それは自身の周囲の魔素を制御できるようにすることだった。このやり方は副団長が身体強化や感知強化で使用しており、それをマネした形である。


 それを今からみせてやr……ん?


 なんだ魔素が操れない!?あれ?なぜか鬼ゴリラがこちらを不気味に見て笑っている…


 もしや魔素には主導権が存在するのか!?なら無理矢理…!

 ……へっ?なんか魔力にも引っ張られてる?この人魔力ごとオレのこと縛ってる?


 ってことは逃げられないじゃん!うげげ…


 オレはおとなしく訓練場に連行された。だがまだ終わっていない、少しでも副団長の領域から出れればこっちに分がある…!


 いつものように始まった訓練は見張りが多い…みんな休んでるのに…マンツーマンで密着されてる…鬼に…


「なぜ自分だけ…そう思っているな!今日は居残り組の訓練日、彼らはまだ訓練を初めて日が浅い連中だ」

「いや、年は向こうの方が上なんですけど…」

「その年で身体強化をそこまで高めてるやつはいない!そのうえでこのワタシレベルの魔素制御を使い、あろうことかその制御を奪い取ろうとするものなど存在しない」


 なんだこの自分が特別だと言っているゴリラは?オレの評価も一定以上だと言いつつ最終的に自分が一番とは…図々しいゴリラ…


「はぁはぁ…副団長はなんでそんなにオレを気にかけてんすか?騎士になりたいとか強くなりたいとか言った覚えはないんですけど…」


 副団長はそっぽ向いたまま悲し気に


「その力を制御しなきゃならないからな…」


 オレよりすげぇ力を持ってるヤツのセリフか?


 油断しているのか魔力が揺らぐ、やるなら今しかねぇ!


「それに小僧はセブンの息子!潜在能力は誰にも引けをとらん!その力遊ばせておくにはもったいない!こうしてスキを見つけては攻撃する姿勢は褒めてやるぞ!今逃げていればもしかしたら逃げられたかもしれんがな!はっはっはっはっ~」


 あ!やべっ!つい隙だらけだったから突きを放ったら普通に躱された…


「…ふんぎゃ!」

「今日は周囲の魔素の主導権争いに勝てるまで帰れないぞ!」

「綱引きしながら模擬戦!?無茶でしょ!攻めて加減しろよ!鬼ゴリラ!」


 しばらく叩きのめされぶっ倒れて屋敷に運びこまれるのであった…


「強くあれ!小僧!領域制圧を習得できれば内なるものに負けはしないさ!」


 訳分かんねぇこと言いやがって…悪魔か!いや…鬼か…ゴリラだったか…



 -屋敷-

 屋敷に運ばれてくるマイクを心配そうに見守る視線があった。正面玄関2階のバルコニーでお茶をしていたヴィータローザ・イングランディーレ…マイクの母である…


 彼女はかつて残念令嬢と呼ばれていた。公爵家に生まれ、いずれ重要な家に嫁ぐとされ様々な作法を仕込まれ、常に淑女たらんと育てられてきた。だが彼女はそれらをすべて受け完璧でありながら、その振る舞いをしなかった。次期王太子妃として婚約が決まるもたびたび王太子を危険にさらし、近衛兵を振り回し事件を起こし続けた。


 たまらず婚約を破棄され他の嫁入り先を探すもいろいろな噂のおかげで婚約が決まらなかった。他国からの打診はあったが国から出てはどんな問題を起こすか予想ができないことから、結婚に関しては絶望的となった。


 そんな中、貴族ですらない男が婚約相手の候補としてあがる。


 名前をセブン、勇者パーティーの魔導士として活動し、魔王を倒した功績で貴族として名を連ねることが決まった。勇者パーティーの価値を示すことを求められ、唯一まともなセブンが貴族として選ばれた。これは褒美の一つではあったが勇者パーティー内では貧乏くじだった。


 だがこの二人の相性は存外よかった。

 ヴィータローザの行動を簡単に制御できるセブン、さらに時間を過ごすとヴィータの破天荒に合わせて動けるようになり、それらの行動がとても合理的な結果となり、これまでヴィータが起こしてきた問題は意味のある行動だったと憶測が立つほどだった。今までの問題行動は何かしらの成果をあげていたのかもしれないいとヴィータの存在は見直される形となった。そうなると他の者が婚約者に名乗りを上げり一騒動に発展するのだがそれはまた別のお話である。


 その後セブンはイングランディーレを名を賜り、宮廷魔導士と地位を得た。二人も無事結婚し子供も生まれ順調に過ごしていた。


 ある知らせが突然届く、魔王の復活、この国の王都付近に魔王因子を宿した子供が生まれるというものだった。かつての勇者パーティーで同僚だった聖職者を介しての神の天啓であり、確認もしてもらった。そして判明した、妊娠していたヴィータローザに魔王因子の反応があった。


 そして生まれた魔王因子をその身に宿す悪魔の子が…


 その姿は愛らしく幸福感に満たされるはずだった。しかし分からされてしまう。圧倒的な魔力を秘めているということを…


 本来魔力量は体の成長とともに増えていき、扱い方も上達していく。しかしそれは圧倒的な存在感を放ち、どす黒いオーラを解き放ち邪悪に染め上げていた。


 ヴィータローザに恐れはなかった。お腹を痛めて産んだ子供が生まれた時から悪と運命づけられるなんて認められなかった。その子を抱き上げ、


「あぁ!私の愛おしい子!!あなたがどう育とうとも私はあなたを見捨てはしません。どうか健やかに優しくたくましく生きて!あなたは決して魔王になんてなったりしないわ!だからどうか幸せになって…!この世界を愛して!」


 抱き上げた赤ん坊から放たれていた魔力は納まりヴィータの腕を軽く傷つけて落ち着いた。


 セブンはなにもできなかった。魔王因子を持って生まれた我が子を殺すことも止めることも抱きしめることもできない。傷ついた妻に何もできない…



 その後の何者も近づけさせず、存在すら隠し、厳重警戒でマイクと名付けられた赤ん坊の世話をさせた。


 その世話をラヴェルという少女に任せた。庭師として働く元勇者パーティーの斥候アーロンが拾ってきた身元の怪しいものであったが、いつの間にかマイクに心酔していた。


 そこから数々の異常行動が記された報告書が届くも、確認をすると多少の魔力残滓を残すだけで危険な何かを見つけることはなかった。いつの間にか魔力制御をマスターし、見た目は普通の3歳児のようにもなっていた…


 自分の力にすでに気づいているならその力の使い方を教えてやればいいと割り切り、家庭教師をつけ、ブルースに稽古をつけてもらったり、アーロンに何かと世話になったりした。5歳になる前に受けた適性検査も無事に騒ぎになることなく終わり安堵した。


 今のところ問題ない…


 だが積極的に関われなかった。生まれた時に何もできなかったことが尾を引いている。自然と冷たくなり、この屋敷に味方のいない環境を作ってしまっている。バートラムもジーンもノヴァリリスもなにも知らない。ただ私が冷たく接し、ヴィータの行動を制約することで子供たちもマイクを受け入れる気がないようになってしまった。


 だがそれでいい、何かあったときどちらも守るためには必要な処置なのだ…


 魔王に覚醒する予兆もある。ブルース曰く消失弾を発現したらしい。かつて討伐した魔王が使っていた魔法…


 こうなったからにはなんとか人として生きる道を作ってやるだけ…


 夫婦で話し合う。久しぶりにこうして二人でお茶をしている…


 ヴィータはマイクが生まれてからあきらかに笑顔が減った。普通に愛してあげたい。ヴィータはそれだけであった。彼女は母親なのだ…子供たちを平等に愛し暮らしたいだけだった。制約魔法によってずっとヴィータを苦しめていた。今も倒れたマイクが運ばれてくるのを眺めていることしかできないことに臍を噛む想いをしていることだろう…


 覚悟を決めるべきだった。私は父親なのだ。魔王の父親ではない!マイクの父親なのだ!彼のやることを見守る、新しい制約を書き加えた。


 勇者を支えたように、妻を助けたように、マイクを見守る


 彼は自分の人生が家族のためにあることを誓約した。

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