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第10話 下町で食戟!!

 連日でトムを連れまわす。トムのためと言いつつ、自分が進みたい場所に進むマイクは鮮魚店に来ていた。比較的王都では満遍なく口にできるのだが、イングランディーレ家では 魚メニューはさほど多くはない。焼いて出てくることしかない!


 汁物や煮物、練り物もなく少しだけ不満だった。包み焼とかあら汁とかも食べたい。


 そして何と言っても生で食べたい。


 というわけで全力で鑑定!アニサキスのいない魚を探す。


「マイク様、近い近い!大将がブチぎれてますよ!」

「気にしない気にしない…自分の欲望を大切に!オレは生で魚が食べたいんだ!」


 そんな胸中を口にすると魚屋の店主はバカにしたように言い放つ。


「どこの貴族子息か知らんが魚を生で食べる奴はこの世界にはいないぞ!かつて調子乗って食べ過ぎで死んだ勇者がいたらしいからな、生で食べる悪食は確かに存在したが全員短命だ!いつの間にか全員行方不明になるケースが多い!お前もそうなりたくなきゃ生で食べるなんてアホな考えを捨てちまえ!」


「ふっ!なんの因果関係のない説得だね、新鮮なら問題ない魚もいるんだよ!それにしても主人!

 全部ギリギリやないかい!」


 鑑定結果としてここに売られている魚は全て加熱でしか食べれない状態、ほぼ新鮮さを失っていた…鮮魚を扱ってるのに干物や加工品のほうが多い!


「当たり前だろ!もう午後だぞ!いいもんは全部売れてる!本気で生魚が食べたいなら港に行け!港に!!」


「そう簡単に外出できてればもう行ってるわ!さっさと隠してる新鮮な魚出せ!ちゃんと冷凍して運んでいるのオレ知ってんだからな!」


「それが客の態度かっ!そういうのも全部売っちまってるんだよ!お前も鑑定が使えるならすぐ気づいただろうが!」


「もういい!こんなわからず屋がいる店なんて明日のあさイチに来てやる!首を洗って保湿クリーム塗って、軽く温めて血液の循環をよくして待ってやがれ!」


 何言ってんだこの人?顔のトムと、呆れる魚屋店主…


「明日、生魚が美味いって証明してやる!」


「いやっ食べたくねぇよ!勝手に買ってけ!」


「とりあえず、アジ5匹とそっちの干物くれ!」


 無事魚を買い帰路につくのであった…




 マイクはトムを連れて鮮魚店を再度訪れた。


 怪訝そうにする店主はもう来たのかと悪態をつきつつ商品を見せてくれた。


 昨日とは違い、新鮮で生食が可能、寄生虫の有無は半々…


「これとそれ、あとコレをくれ」

「…本当に食うのか?ここではやめろよ…」


「当然食べるよ、ミンチ状態にすれば問題ないだろうし、怖いなら湯にくぐらせればいい」


 ちょっと外れに台所を土魔法で創造、トムと手分けして4匹の魚をさばく。アジはミンチ手前状態にしてなめろうに、造りとして盛り合わせていく。小型の船盛り用の皿にツマと大葉を乗せ、ワサビを添える。


「いっちょ上がり!3種の盛り合わせとアジのなめろう!さぁ食べるぞ!」


 小皿に醤油を垂らす、箸を持つ。赤身からパクリ…


「あぁ、美味っ…!なつk…納得の味、幸せ過ぎる!!!!」


「…はっ、これは…すげぇ!メチャクチャウマイ!」

「でしょでしょ!トムはしっかり魚がさばけるね、よしよしっ」


 楽しんでいても店主はこっちを蔑んだ目を向けてくる。


「今はそれでもこれから狂っていくのさ…そんな誘い方をしてもワシの考え方はそう簡単には変わらないぞ」


「いいさ、それならそれで!美味しいものを独り占めできる!オレは人の考えを否定しない!」


「なめろうでしたか?美味いっすね、これなら寄生虫とやらも生き残ってないでしょ!あぁ、オレの鑑定魔法も食べれるものが見分けられるくらいレベル上げたいですね」


 トムは鑑定の魔法を使える。魔法は魔力に応じてその精度が上がっていく。鑑定に関するなら魔力と知識の集積もレベリングに繋がる。ゆえにマイクは様々な場所にトムを連れ出し、知識を詰め込む。将来的に力になってもらうために!


 店に来ていた客も刺身を食していく。注意もしつつ簡単にマネすると食中毒になると勧告。鑑定魔法持ちが多数いたのでこの場は大丈夫そう…各々で勝手にやってくれるだろう…


 それでも店主はいい顔をしない。何か苦い思い出があるのだろうか。


 なんでも店主はかつて恋した女性が生魚を食すいけ好かないヤツと一緒になる失恋を経験をした。それと様々な噂が混濁して生魚自体を食わず嫌いするようになっていた。


 関係なくない?


 ビックリしたが食してもらう…


「どう?」

「あぁ、これはいいなぁ」

「ふん!お粗末さん!」


「…でこの醤油って何ですか?」

「東でつくられてる調味料…だね、大豆から作られてる調味料で他にもいろいろあるよ」

「なんで隠されてるんですか?教えてくださいよ」

「知る努力をしないものには一生知らない存在だから問題はない!それに今教えた。しかと味わえ原材料もわかるでしょ」


 この世界には多くの現代のモノが導入されている。だが当たり前に存在していても情報は回ってこない。探さなければならない。モノも技術も文化もどこかに現代の欠片が存在している。


 マイクは密かにそれを探索する。

 本に載っていたり、人づてに聞こえてきたり、怪しい噂に秘められていたり、見つけ出すのだ!そう簡単に人に情報を与えたりしない。


 それがこの世界に生まれ虐げられた環境に対するささやかな犯行なのである。


 よしっ!米も探そう…

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