第103話 婚約者候補たち
〈シンハリ―・サドラ―視点〉
今日は私の初めての社交界、いわゆるデビュタントというものだ!…兄様にエスコートしていただき、会場入りした。
王宮は広く壮大で天井の壁画やシャンデリアがきらめき、大理石の床、バロック式の建物でふんだんにアーチが使われ、通り過ぎる人たちのドレスや装飾品がきらびやか、場違い感を感じていた…
私も今日の日のためにドレスを仕立てていただいたが、良く見渡せば似たような方もいらっしゃり、すごく恥ずかしくなった。
もちろん兄様は自信を持て!と励ましていただいたが、自分の容姿がそこまでよくないのは自覚している。このまま過ごすのが波風立たせず生きられるとわかっている…
そう思いたいだけかもしれないが…
会場では様々な方たちと挨拶をした。父様の上司の方や同僚のご家族、兄様の級友たちも紹介いただいた。
とても良い方ばかりだが、私自身を見ているわけではないのが分かってしまう。爵位とはそういうものなのだろう。釣り合うとか世間体とかそういうものが重要なんだろう。
私もその一部でしかない。
悲しいことではあるがこれから私はそういった人たちを相手をしていかなければならない…
そんな鬱屈とした気持ちを抱えながら次の方々にご挨拶をした。
こちらも兄様のご学友らしい。イングランディーレ家…うなぎ上りに爵位を上げている勇者への貢献によって得た成り上がり貴族と呼ばれている方々だ…成り上がりというのは失礼かもしれないが、貴族としての血も受け継ぐ実力、貢献、実績の申し分のない貴族である。
兄様はイングランディーレ家の妹様に婚約を申し込んだが駄目だったらしい…その影響かその下の弟様の婚約者候補に私が据えられる可能性があるのだと聞いた…
ほぼ間違いないのだろう…そんな方が今目の前にいる。
マイク・イングランディーレ様
話す限りでは普通な方、ただどことなく演技を感じる。どうゆう方なんだろう…
不意に本の話をしてしまい、すごく話を聞いてもらってしまった…テンションが上がり過ぎて兄様に止められるまで話してしまった、引いてたかな…
ローザリンデに関して何か知ってたのかな、それとも全く知らなかったのか…
他の書物には反応していたけど、統計学なんかの本にもなんなく返してくれたからてっきり知ってるものかとおもった…
その後もなんとなく姿を追ってしまうが、あっちにいったり、こっちに行ったり…
中々捕まえられず、そのうえで王女様に凄い態度を取っているときは驚きで隠れてしまった…
なぜあんなにも堂々とできたのだろうか…不思議だ…教養があるのかないのか…
どういった方なのだろうか…
お父様に婚約者になりそうな子はいたかい?と聞かれ、マイク様の名前を思わず上げてしまった。
迷惑じゃないだろうか…
〈レイナ・カヴァレリッツォ視点〉
くそっ…やってくれたわね…
こっちの慎重さが分かっていたのかしら…初手であんなことしてくれるなんて…
これじゃまた一つ距離をとられてイングランディーレとの繋がりが遠くなってしまう…
絶対に必要な縁ではないけれど、確実に行けるはずのこの縁を断たれるのは面白くありませんわ…
同じ宮廷貴族同士、将来的なことを考えても王都に根を張るマイク様は確実に王都で大きな仕事をなさるはず…同世代でのこれだけの好条件他にはないはず…
近づかせないように釘を刺されるなんて…誤算だわ
こんなことなら兄の誕生日会の時に無理やりにでも繋がりを作っておくべきでしたわ…
次のチャンスは…いや今からでも…
そうして向かった先では近衛に囲まれるマイク・イングランディーレの姿があった…
なに?一体王女様に何をしたの?マイク・イングランディーレ!!
……
なんだったかしら…
なにかすごく謝っていたけれど、あれ?なにか怒らせたような…?
ん?記憶があいまい…
とりあえず他の方ともコンタクトを取りましょう…なんとか一人くらいは捕まえなければ…
〈サンビスタ・エスポワール・ヴァーミリアン・カントン王女視点〉
王女は数年前まで派手に暴れていた。
人の言うことを聞かず、わがまま放題やりたい放題プランで契約したがごとく王宮を騒がしていた。
原因もわからず、たびたび従者が代わり、問題視が続いていた。
さらに兄である王子も難しい性格で家庭教師を悩ませ、好き放題で王宮を混沌におとしいれていた。
ある日生まれ変わったかのように二人の王族が変わった。
その日はくしくもマイク・イングランディーレが王宮の魔力残滓を掃除した日であり、王宮内で横行していた悪行が減っていった転換の日でもあった。
生まれ変わったような王女サンビスタ・エスポワール・ヴァーミリアン・カントンは従者に優しくなり、家庭教師の授業も真面目に受けだし、評判が改善して行ったのだった。
そうして今現在しっかり人前に出れるような王族に相応しい振る舞いを覚え、本日の王宮における宮廷貴族のためのパーティーに出席できるようになったのだった……
無事式典の出番を終わらせて、目的の人物のもとへ向かうのであった。
その者は庭のベンチに腰を下ろしていた。
マイク・イングランディーレ…
勇者一行の魔法使いセブン・イングランディーレの息子であり、空気清浄機で王都の問題でもあった魔力残滓を解決したとされてる人
同世代でありながらさまざまな事業を成功させ、王都の経済に影響を与える存在となっている。
この繋がりは将来的にも大事なものと釘をさされており、積極的に声をかけられる中で唯一自分から声をかけた人物となったのだが…
とんでもなく失礼な対応をされてしまった…
貴族には立場があり、少なくとも王族はその貴族に崇められる立場と認識していたサンビスタ王女はあっけにとられ注意すらできなかった…
さらに違和感なのは以前の自分のような強欲な形の無知な礼儀の無さではなく、全てを分かり切ったうえで失礼をカマし、謝ってから去っていったのだった。
さらにそれだけに収まらず魔法も放って来た…
王族にのみ装着される魔法無効の魔道具によって何かしらの魔法攻撃があったとされたがサンビスタだけはわかっていた…あの子が認識を改ざんする魔法を放ち、逃げようとしたのだと…
さらにその魔法の解析は勇者とともに旅をした魔術師セブン・イングランディーレにもわからないという事実である…これには驚かざる得ない…
すでにその魔法の使い手としての域は最高レベルにまで到達しているということに…!!!
衝撃だった…
もはや婚約相手としての考えはなくなった…ただ怖い、しかし放置もできない。
何とかして国につなぎ留めておかねば…
その任はこのことに気づいている自分にしかできない、やってやる…
そう王女サンビスタは決意するのであった…




