第102話 婚約者候補編スタートかも…
春を迎えるまでの間、社交に出席する回数が増えた。
お茶会がメインだが、たまにデカいイベントごとにも連れていかれ、父と母にたまに兄上にも連れられてよくわからん集まりに出た。
宮廷貴族中心で、魔術師の家がほとんどらしい。姉上の婚約者候補に挙がったシルバーホーク侯爵家ややらかしたゼダーン伯爵家などとも会話することがあった。ひたすら恐縮してて面白かった…あとゼーダン家の当主の人、やっぱりゴージャスに似てるわ…こりゃなんかしらあったな…
あとで調べてみよ…
サドラ―子爵家は姉上と繋がれなかったのでこっちに標的を変えてきたらしい。メガネ知的男子のアスコットも挟んで紹介されたのが妹さんのシンハリー・サドラ―嬢…
同じような感じの人、図書委員かな?
丁寧にお返事をして話を聞く…知ってる本がないなぁ~一応スプマンテに読ませてる一環でそれなりに本を読んでいるんだけどなぁ~聞いたこともないな…
「最近の本なの?」と気軽に聞いてしまった…
「そうなんですよ!ローザリンデという方が書いておりまして、その正体は誰にもわかっておらず、新進気鋭の作家なんです!!私の最近の激押しでして…」
なんか始めってしまった…全然わからん、誰か今すぐスプマンテに連絡してくれ…
何とか話が落ち着き、その場をフェードアウト…王宮の社交界は初めて来たので、こうしていろんな人に遭遇してしまう。
続いて先日会うことなく終わったカヴァレリッツォの令嬢に出くわした…
「マイク様ですか?先日は我が家のパーティーにお越しいただきありがとうございました。」
「こちらこそお招きいただきありがとうございます。先日はご挨拶もできずに申し訳ありません、改めましてマイク・イングランディーレです。よろしくお願いします」
「ご丁寧にありがとうございます。私はレイナ・カヴァレリッツォと申します。以後よろしくお願いします」
「うん、よろしくね」
と握手を求めてみた。どやっ!この社交を分かってない感じ!こういう場で異性の手を取るときはダンスの時と相場は決まっている。
握手を求める時は商談などの成立を見せつけるなどのビジネス的な意味合いでしかない。つまりこれからカヴァレリッツォとはあくまでもうわべだけの付き合いしかしないという宣言とも取れる行為をマイクはしたのだ。
婚約相手として考えていたレイナは一瞬たじろいでしまう…ここで手を取れば一生距離は縮められない、逆にとらないならば、今後仲良くなるはことはないと宣言と取られてしまう
つまり握手以外の最善手で返礼しなければならないが、レイナの経験値では妙案はなかった…
レイナは手を取り苦笑いを浮かべた…
そんな深い意味も持たないマイクは常識ないやろ!と満足気…
当然このあとの会話も弾まず、初手でマイクがレイナの思惑を粉砕してしまった…
マイクはいろんな出会いに億劫に思いながらもそれなりに王宮内のパーティーを楽しんでいた。
食べ物や景観、人には全く興味を出すことなくふらふらしていた。時々、ちっち(父)とはっは(母)に連れられては挨拶をしては、庭でおイタをしてる男女を観戦しに行ったり、バルコニーでの甘ったるい口説き文句を肴にリンゴジュースを飲んだりしていた…
「ごきげんよう!隣よろしいかしら…」という声が聞こえた…
振り返るとだいぶ厳つい護衛の数々に囲まれた同い年くらいの少女がいた…王宮でこの警備…
馬鹿でもわかる…王女様だな…1つ上とかじゃなかったかな?来年学園入学だとか聞いてたし、間違いないはず…
だがそんなこと知らんふりしてどうぞどうぞと庭のベンチを勧めてみる…
護衛の人たちはさすがに顔に出ないかと思ってたけど、結構顔をゆがめたり、侍女さんはあからさまに見下してるわ…
護衛の中には知った顔もあった…近衛だよな…訓練所で見習いをやっていた人だ、ブレシア、カタリナ、ゴージャスと同期のアルナ・リファール…
メッチャ目を逸らしてくるわ…間を取り持てば?知り合いじゃんか…
スムーズに会話を勧めたくもないのでテキトーに皿にのせたデザートを勧めてみた…
おめめぱちくりしてる…ほう!王女だけあってかわいいな!お嫁さんにしてやろうか?
「え…遠慮しておきますわ、それよりも私自己紹介しても良いかしら…」
「ええ!どうぞ…あ!自分からした方がいいですか?マイクです!マイク・イングランディーレ!よろしくお願いしま~す」
結構舐めた態度で言ってみた。あ!顔引きつってる!!面白っ!みんなもじゃん!集団食中毒かな?大丈夫?
「なんかお付きの人たち、顔が険しいけど大丈夫?体調悪いなら休んだ方がいいよ?ね?アルナ?」
こっちに振るなって顔した!あははは!全員振り向いてるし!面白っ!イジりがいあるな王女周りの人たち…
「アルナは近衛になったんだね~なんか真面目な顔してるから声かけんとこって思ってたけど、マジでミスったゴメリンコ!あっ!これ美味い!」
これで全員察してくれたっぽい!相手が王女と分かっていながら横柄な態度とってるというのが…
一段と険しくなったかも…侍女の人なんか今すぐ怒り狂いそうだわ!
「貴様!無礼であろう!この方をどなたと心得るか!いくら勇者討伐を果たした英雄の息子であろうとそのような不敬、王族に対して失礼であろう!」
バチキレられた…怖い…
「ごめんなさい!気づきませんでした!お詫び申し上げます。金輪際関わることないように気を付けます。」
怒られている途中に速攻謝罪してブチ逃げた!!!
いやっほ~い!!面倒ごとを切り抜けたったぜ~!!ば~かば~か!最高権力なんかが容易く近づいて来んなや!へへへっ!
いろんな貴族にその振る舞いを見られながらの逃走…だが噂にはさせない…だってめんどくせぇじゃん!
こっちを見ていたすべてのモノに記憶改ざんの魔法を飛ばす…消失弾に似た魔法が範囲を限定して駆け巡る。防げたのは王女と父セブンのみ
王女は身につけた魔道具によってその魔法を打ち消したが、魔法に襲われた自覚はない…一方セブンはその魔法の解析まですまし、無事に終わりそうなことに安堵した…
その他諸々の記憶は礼儀正しさをだけの印象が残るようなものに変わり、誰も傷つくことなくこの社交界も終わるのであった…
帰り道、馬車内で父に小言を言われた。「じゃあ、もう出ない方がいいですかね?」と意気揚々と返したらデッカイため息を返された…
ふっ!今日もオレの人生に異常ナシ!!
◇◇◇◇◇◇
断絶魔法の魔道具が作動していた事実が王宮内で明らかになった…
王女曰く作動したのはマイク・イングランディーレが去る際だったらしく、謎の魔法を放ったであろうモノの調査が行われた。
その当時の記憶のすり合わせから、王女以外の記憶に齟齬が生じており何かしらの精神攻撃を受けたことが判明した…このことから魔法局で働くセブン・イングランディーレが招集されたが記憶に関わる術は存在しないという言葉で、人間以外の存在を匂わせた…
だが近衛隊ではあの場にいた最もおかしい人物マイク・イングランディーレを最重要警戒危険人物と登録し、王宮から遠ざけられる存在となる…
こうしてマイクは無事に王女との距離を取ることにも成功するのであった…




