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3.塔のウイレムと弟子たち

考える風情を見せていたエイプリルが、背後に控えていたエルを呼んだ。

「師匠にペイジを出して、わたくしとカリス家の中姫がお目にかかりたいと。ご都合をうかがってきなさい」

「承りました、マイレディ」


返事が来る間にマリエが作ったリストを見ながら話を続けた。

「ねえ、マリー、1年学園に行っている間に、お友達になったのは?」

お友達とは穏便な言い方で、マリエが選んだエイプリルのための将来の第二王子妃付き侍女候補ということだ。


「まず、カッサンドラ侯爵家のミリアムさま」

「どんな方?」

「迫力美人よ。母上さま譲りのすばらしい金髪で、弁舌さわやかな秀才よ」

「婚約者は?」

「マール侯爵家のフレデリックさま」

「その方はどんな方?」

「そうね、ミリアムさまと並ぶと線が細いかしら。でも、格はマール家の方が上だから、ミリアムさまが上手にお相手なさるでしょう」


「ねえ、マリー、王子妃はミリアムさまに引き受けていただけないかしら?」

「マール家からは、王太子妃ペイシェンスさまが出ておいででしょ?」

「そっか、さらに次男の婚約者を第三王子に差し出すってのは無理ねぇ」


「マリニアム侯爵家のアレクサンドラさま、婚約者はまだおいでになりません」

「えっと、王都貴族よね?」

「そうです。カンデラ閣下は、王子殿下の身近な方のうちから結婚相手を推薦なさるおつもりと伺っています」


「ケィティネット伯爵家のフローラさま、婚約者はキューガン伯爵家のトマシーノさま」

「キューガン家は、魔晶石鉱山のあるところよね」

「はい、魔晶石鉱山を王家が護るために、カンデラ公の飛び地になっていますが、ロズウェル河から北はキューガン伯領ですね」

「そこに王都貴族から娘が嫁入りするのね」

「そうです。その方を侍女に推薦したのは、それが理由です」


「うーん、よく考えてくれたのねぇ、ありがとう」

「いろいろと、ゆっくり説明するわ」

「よろしくね」


「マイレディ、塔から、お待ちしているとの返答にございます」

「ありがとう、マリー、行きましょうか」

エルを先導に、エイプリルとマリエが、最後にソリーが続いて、塔への脇扉を出る。


「師匠、こんにちは。マリエが来てるのよ」

「はいはい。カリス家の中姫さま、お久しぶりにございますな」

「お元気な姿を拝見し、ありがたく」

「ほぉ、中姫さま、王都でいろいろと磨いてお帰りですな、ますますお美しいですぞ」

「師匠、およしになってください。こちら、手土産です」

ソリーから木箱が渡された。

「ほうほう、魔晶石ですかの。ありがたく頂戴いたしますぞ。

さてさて、姫さま方、お座りください。エルとソリーも、そのあたりを適当に片づけて座りなさい」


「さて、知りたいことがおありの様子ですな」

「はい。エリーはなぜ第三王子の婚約者に指名されたのか、わたくしにはわかりませんの」

「そうよの、わからぬかもしれぬ」

「師匠、お教えください」

「さようですの。簡単に言えば、第三王子殿下がお持ちであるはずの膨大な魔力と伝承された魔法が問題なのですな」


4年ほど前、ガリエル皇国から第三王子に対して入婿を求める文書が来た。何の前触れもなく、特使も来ることなく、王都駐在のガリエル大使からの文書上程だった。

王家と王都貴族は怒り狂ったといってよい。


ドナティエール王国の現在の領土は、今のガリエル皇国の場所にあった巨大な帝国の一部、”東の植民地“だった。

ガリエル族の侵攻による帝都壊滅を受け、皇弟フェロステラ卿が、もとの植民地に建国したのが、ドナティエール王国だ。

侵略から150年。王国開国からわずか4代。敗戦したといえども、ルースカリエ皇帝の弟の血筋。プライドもあるが、それよりも尚、その血には大きな魔力と伝承を受けた特殊魔法が宿っているはずだ。これをガリエルに渡すことはできない。


「つまり、王家と王都は、第三王子を皇国に差し出す気はなかったということね」

「もちろんですな。

帝国の血を正当に残すことが王国の使命であると思っている貴族も多いことでしょう。王子を差し出すということは、帝国の血に受け継がれている魔力と、王子が受け継いだ伝承を譲渡するということですからな」

「う~ん、そこからエリーが婚約者になるには、そうね」


「そうね、辺境伯家が強大な戦力だということよね」

「そうですな。急いで辺境伯家の姫を婚約者に立て、皇国に対しては辺境伯家の姫がすでに婚約者に内定している、と返答したのですな」

「うう、メイワク」

「よね」

「まあ、次姫さまが戦姫だということがこの場合大きかったですの」

「ですよねぇ、第三王子を持って行く気なら、フィエール家がお相手する、ということよね」

「うわ~、開戦直前?」

「まあ、そういうようなことになりますかのぉ」


「じゃあ、カッサンドラ家もマール家も関係ないじゃないの、要するにうちが皇国からの防衛線だからってことしかないのね」

「ほっほっほ」


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