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11-1 リバーアン砦町

読んでくださっている方が多いことにさっき気が付いて、ぼぼぼと燃え上がった倉名は、今週中に最終話まで投稿すると固く決意を固めました! お話自体は完成しているものの、外部通信と非常に仲が悪く、しょっちゅう投稿に失敗するのです。失敗にめげると、おやつを食べて昼寝することにしているのですが、できるだけめげないように努力します。各編5万字内外、合計15万字ほどです

リバーアン砦町の別邸にはモリソン駐在所に残した馬を引いてくる役割の者以外、全員がそろっていた。

アニーの顔も見える。アニーは本人の断っての希望で、ジガからラ・フィエールまで馬にふたり乗りで運んでくれたサポート隊の女性にそのまま運んでもらった。ハスマン街道とリバーアン街道をまっすぐに来たため、ずいぶん早く着き、ゆっくり休んで元気になっている。アニーはこのまま別邸に残り、王都に先行するバックアップ隊員として船でロズウエル河を下る。



無事にリバーアンまでたどり着き、エル配下の隊からの報告を受け、指示を出し終わると、エイプリルもお祭りを楽しむ気分になっていた。

橋の完成式と渡り初めまで3日ほどある。父はまだ現れないだろう。エイプリルとエルは橋完成のお祭りの準備をする人や、近在から手伝いや見物に来た人々に紛れて、砦町を歩いた。


熟した麦穂色の髪を三つ編みにしてうなじに纏め、砦町特有の糊の効いた白い被り物をつけた。

グレイのワンピースの上に幾何学模様の刺繍が入ったオレンジ色のベストを着け、丈夫な編み上げ靴を履いた。

エイプリルとエルがよく似た服装をすると、ふたりは一卵性双生児のようにそっくりだ。エイプリルの瞳の色が深い緑で、エルの瞳は明るい緑だが、ひとめで区別するのは難しいだろう。


砦町は特別な興奮に包まれ始めていた。

屋台が出て、お使いの子どもたちが走り回る。近郊の村から荷車に野菜や果物を積んで来る農夫は、いつもの店に荷を下ろした後、多めに積んできた品物を露店で売りさばいている。


辺境伯家に呼ばれてやってきた芝居小屋が広場に舞台を建て、昼過ぎから歌が始まる。

舞台前に並べられたベンチに座るにはチケットがいるが、遠巻きに立ち見するのは無料だ。舞台用の衣装を着た愛らしい少年や少女が籠を持って、笑顔を作りながら立ち見の観衆の間を巡り「ご祝儀!ご祝儀!」と声を掛け小銭を集めて回る。


丸一日砦町を楽しみ、次の日は橋を見に来た。

ロズウェル河に架かる新しい橋は面白い形になっている。

中央部が跳ね上げ式なのだ。両岸から途中までは普通の橋で、川が深くなる場所で橋梁が左右に分かれ、それぞれのサイドにロープで巻き上げることができるように設計されている。目の前で巻き上げと巻き下ろしの練習が行われていて、指揮する者の怒鳴り声が聞こえてくる。


ロズウェル河では、上流の深い森から切り出された材木が、王都近辺に輸送される。

上流では森人に助言を求めながら間伐と伐採が行われ、切り出される材木は2,3本ごとにまとめて急流を流す。リバーアン砦付近で流れが緩やかになるから、両岸の貯木場で大きめの筏に組みなおして何列も繋ぎ、水主(かこ)が操って王都近くまで運んでいく。

現在、貯木場は両岸にあり、筏に組むときの木のやりとりが面倒だ。橋ができたら、貯木場を公爵領飛び地側の1か所にまとめ、辺境伯領側を船着き場専用にする計画だ。


跳ね上げ橋になっているのは帆船の固定式メイン・マストを通すためだ。

船着き場を橋の下流に作れば、跳ね上げ式にする必要はなかった。わざわざこういう位置取りにしたのは、食料や布製品を王都に輸送する大きな商用帆船が、許可なく川を下ることができないようにするためだ。商船は税を納めなくてはならない。



エイプリルとエルは堤防の石積みにもたれかかって橋と対岸を眺めて楽し気に何か話していた。

エイプリルの左側にはアニーが跳ね上げられている橋を描いている。魔道具を使った跳ね上げ機構は、辺境伯家のウイレムの設計なので、レポートに橋の絵は必須だ。

コーエンとキャメロンが傍についてなにやらチャチャをいれ、ラドクリフがアニーの描く絵を感心しながら覗き込んでいる。見た目は開通式への招待客の子弟が式を待つ間の観光そのものだ。


やがて、対岸に兵が集まるのが見えた。カンデラ公爵紋の付いた馬車が来て、桟橋から馬車まで巻いたカーペットが伸ばされた。公爵家の専用桟橋は、橋よりも川下に設置してある。

待つうちに、川下から帆に風をはらんだ船が現れた。帆を絞って船の速度を落とす、桟橋より少し上流で船を横に向け、船体が受ける風と川の流れが相殺されるように操船し、桟橋で防舷物に頼りながら静かに止める。風魔法を使う様子はない。実に優秀なクルーだ。


姉上、乗っていらっしゃるかしら」

「乗っておいでだといいですね」

「そうねぇ、どうかしら」

「船には公爵旗しか上がっておりませんしね」

「公爵が乗っておいでの時は、公爵妃旗は上がらないものねぇ」

「そうですねぇ」


辛抱強く見ていると、公爵家の馬車に乗り込む婦人の服の明るい色が、警備の兵の頭の上にわずかに見えた。

「姉上でしょうね」

「そうですね、最初に乗られましたもの。公爵より先に乗り込むことができるのは公爵夫人以外にありません」

4人はそこで堤防を離れ、坂の途中の店で評判の菓子を買い込んで館に戻った。


その夜、エル配下の者たちが集められ、いくつかの指示が出た。


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