僕がぼくとして生きていくために
「なぁ、父のところに行こうと思う」
そう言い出したのは、父だった人が一命を取り留めてから2日後のことだった。家にいつもいる小さいやつは何も言わずに頷いた。あの家族は僕が壊してしまったと思い続けてきた。父の暴力も母の冷たい目も、自分が出来損ないだから、愛してもらえなかったのだと心のどこかで思い、両親のせいにして自分と向き合うことを避けてきた。毎日、繰り返し同じことをこなしてあたかも生きているかのように、普通だと言い張って過ごしてた。
兄弟が僕を訪ね始めてもう、半年が経とうとしている。最初は同じ血が流れている兄弟とは思えなかった。幸せそうで、愛されていて、僕とは違う世界で生きているようにさえ感じていた。あいつに会うたびに僕の存在を否定されている、そう感じていた。
でも、違った。確かに僕の父はとても最低だ。不倫をし、子供を作り、僕と母を捨てた。その背景には、子供の愛し方を、人の愛し方を知らなかった人なのだとあいつに会って知ることができた。僕の父がしたことはきっと一生許すことはできないだろう。だけど、鉛のように重たかった心を溶かしてくれた兄弟は、紛れもなく父の子なのだというもの今ではわかる。
ずっと苦しかった、僕が僕自身を責めて、否定して、ただひたすらに何も考えないでいいように生きていた。生きているというより、ただ全てに無関心で、僕が僕を殺していたんじゃないかすら思う。兄弟は、ただまっすくに僕と父のことを考えて、行動してくれた。一人のただの高校生として、たった一人の兄弟として僕に向き合ってくれた。それがとても嬉しかったのだ。
僕が僕自身であるために、過去の鉛を捨て去るために僕は今日父に会いに行こう。




