やっとの思いで……
「ごめんなさい」
ハンカチを受け取り取りながら女の人は涙を拭いた。
「どうかされたんですか?」
拭いても拭いても溢れてくる涙を眺めながら僕は尋ねた。
どうしてこの人の涙は見ぬふりができなかったのか今となっては分からない。
自分もどんなにきらいとはいえど、父親が死にそうなっていたからかも知れない。
「今日中に夫が死んでしまうかもしれないの、、、こんなこと他人のあなたに言ったって無駄かもしれないけどあの人が生きてくれるなら私は他に何もいらないの、、、どうにかならないのかしら、、、」
その人はごめんなさいねと言ってまた涙を拭いた。
僕は父親を許してやれないし、死にかけていても死んでしまえばいいと思っていた。けど世の中には相手を思って泣いてくれる人がいる。僕にはそんな人はいるのだろうか。毎日おんなじ日々を過ごして自分のことにも向き合えなくて、ひとりぼっちで誰も味方なんていない。そんな世界で生きていてくれればと言ってくれる人は何人いるだろう。
「もし、旦那さんがお亡くなりになりそうでも最後まで付き添ってやってください。それが残された人ができることだと僕は思っています。僕はもう両親とは絶縁しましたが、人の気持ちというものは最後までその人に伝わるんだと思います。ってこんな名前も知らない高校生に言われても説得力ないですよね・・・」
そっと席を外した。
「ありがとう・・・」
女の人は小さくつぶやいて病室に向かった。




