俺が出来ること
兄弟は、怯えていた。
俺はそう断言していいと思っている。もしかしたら、心を開くのを恐れているのかもしれない。
兄弟にあって一週間が過ぎようとしている。無理やり渡した病院と病室が書かれた紙は見てくれただろうか。
俺には、父親と兄弟がどんな親子関係を築いて来たかわからない。だから踏み込んではいけない、と線を引いてしまっていた。冷静に考えるようになった今では、無理にでも聞くべきだったのではないかと思っている。脆く、儚い黒のような兄弟は人を寄せ付けない。いや、寄せつけたがらないんだ。自分が傷つくのが怖くて、相手を疑うのがいやで、それでも人と関わっていたくてごちゃごちゃした感情が渦めいている。そんな気がしてならない。そうなってしまったのは何故なのか。それを俺は知りたいんだ。兄弟としてでなく、血の繋がりでもなく、そんなの取っ払って1人の人間として…
それでも父親に聞く勇気は俺にはない訳ではないけれど、弱っている父親に少しでも笑ってほしくて暗い顔を見せたくも見たくもない。聞くのは怖い。あの兄弟が言った言葉が耳に残っている。何も知らずに葬式をあげてくれと…
だからこそ、俺は知るべきなんだと思った。父親に聞くのも怖いし、兄弟に無理やり会うのもなにかが違う。母親とは、仲が悪いわけでもないけれど母親にはなんだか聞いてはいけないような気がしてならない。
逃げてはいけない。これは俺と兄弟の問題で、もしかしたら俺だけの問題かもしれない。まっすぐに偽りなく見ていきたいと思っている。
ただがむしゃらにやっていくだけかもしれない、望んだ結果にならないかもしれない、タイムリミットは刻一刻と近づいて来ているのは間違いではないだろう。父親が生きられるのは、残り数ヶ月。
その時間は、父親の望むことをしてやりたい。そのために、俺は会いに行こう。




