↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したので貯金します。たぶん。~現代知識で稼ぐ、浪費家の異世界生活~  作者: 千流


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
89/264

じゃあ、また次に

それから数日、ベルクがリーネにいる間に、残っていた話を少しずつ片づけた。


 まず石鹸。セラさんには追加の五個を用意するなら、どれくらい前に伝えればいいのかを確認した。ベルクにもその日数を伝えて、次にエルダへ向かう予定が決まったら、その前にリーネへ寄ってもらうことになった。


 つまり、今は作らない。


 次に必要になったとき、五個だけ追加する。


 これで石鹸の話は一旦終わり。


 そして、もう一つ。


「できたぞ」


 ダリオさんの工房へ行くと、作業台の上に見覚えのあるカバンが置かれていた。


 ベルクが一月使った、あのカバン。


 ただし、少しだけ姿が変わっている。


「これ、肩紐?」


「ああ。前より少し広くした」


 ダリオさんがカバンを持ち上げる。


「厚くしすぎると重くなるし、材料も食う。だから今回は幅を変える方を優先した」


「底は?」


「全部二重にはしてない。擦れてたところを中心に補強した」


 ひっくり返して見せてもらうと、確かに底の角に革が足されている。一月使った現物があったからこそ、傷みやすい場所が分かったわけだ。


「雨は?」


「今回は触ってない」


「うん。それでいい」


「珍しく欲張らなかったな」


「ベルクが一番困ってたのは肩と底だったから」


「なら、まずこれで試せ」


 前だったら、せっかくなら全部改良しようとしていたかもしれない。


 でも今回は違う。必要なところだけ直して、実際に使ってもらう。問題が出たら、またそこから考えればいい。


 ……その方が財布にも優しい。


     ◇ ◇ ◇


 その日の午後、俺とダリオさんはカバンを持ってハンスさんの店へ向かった。


 ベルクは店先で荷物を整理していた。いくつかの木箱と袋が荷車に積まれ、来たときより荷物の中身も変わっている。


「ちょうどよかった」


 俺が声をかけると、ベルクが振り返った。


「何だ?」


「できた」


「もうか?」


「ダリオさんがやってくれた」


「俺だって他の仕事があるんだからな」


「ありがとうございます」


「今言うのかよ」


 ダリオさんに笑われながら、カバンをベルクへ渡す。


 ベルクはまず底を見る。それから肩紐を触り、縫い目まで確認した。


「前より広いな」


「重い物を入れたとき、肩が痛いって言ってたから」


「底も変えたのか」


「擦れてたところだけ」


「なるほど」


 ベルクがカバンを背負う。


 中身は空だから、これだけでは使い心地までは分からない。それでも肩紐の位置を直したり、腕を動かしたりしながら感触を確かめている。


「悪くない」


「本当?」


「背負った感じはな」


「じゃあ成功?」


「まだだ」


 ベルクはすぐにカバンを下ろした。


「荷物を入れて、何日も歩いて、それでどうなるかだろ」


「やっぱり?」


「前のやつだって、最初に背負ったときは問題なかったからな」


 確かにそうだ。


 一月使ったから、肩と底の問題が出てきた。数分背負って分かるなら、最初から直せている。


「じゃあ、もう一回使ってくれる?」


「次にエルダへ行くときならな」


「それまで貸す?」


「いや、俺が持ってても仕方ないだろ」


「あ」


 必要になる前から持っていても仕方ない。


「じゃあダリオさんのところ?」


「俺が預かっとくよ」


 ダリオさんがカバンを受け取る。


「出る日が決まったら取りに来い」


「助かる」


 これでカバンも決まった。


 次のエルダ行きで、もう一度試す。


     ◇ ◇ ◇


「ところで」


 俺は荷車を見る。


「これ、もう出るの?」


「ああ。明日の朝な」


「エルダ?」


「違う」


「じゃあ石鹸は?」


「持っていかん」


「カバンも?」


「持っていかん」


「せっかく準備したのに」


「だから準備しただけだろ」


 ベルクが笑う。


 今回ベルクが向かうのは、エルダとは別の方向らしい。途中でいくつかの村と町を回り、そこで品物を売ったり仕入れたりするという。


「次にエルダ行くのは?」


「まだ先だな」


「どれくらい?」


「そこまできっちり決めて旅してない」


「行商人って、結構適当?」


「予定通りにいかねえのが旅なんだよ」


 道の状態もある。天気もある。商売の都合で予定外の町へ寄ることもある。


 リーネで店を構えているハンスさんとは、同じ商人でも全然違う。


「じゃあ、次にエルダへ行く前は絶対ここ寄ってね」


「分かってる」


「忘れない?」


「お前よりは覚えてる」


「それは否定できない」


 帳面がないと危ない俺よりは信用できそうだ。


     ◇ ◇ ◇


 翌朝。


 ベルクが町を出ると聞いていたので、俺は少し早く家を出た。


 別に見送りまでしなくてもいい気はしたけど、なんとなく来たかった。


 町の出入口には、すでに荷車が止まっている。


「本当に来たのか」


「暇だったから」


「素直に見送りに来たって言えよ」


「それでもいいけど」


「どっちなんだよ」


 ベルクが笑いながら荷物を確認する。


 前にここから出ていったときは、俺の石鹸とカバンを持っていた。


 今回はどちらもない。


 少し変な感じがする。


「次はちゃんと持っていってよ」


「石鹸五個と、あのカバンだろ」


「覚えてるじゃん」


「だから忘れねえって」


「石鹸は出る前に言って。作る時間が必要だから」


「ああ」


「カバンはダリオさんのところ」


「それも聞いた」


「あと――」


「まだあるのか?」


 考える。


 ない。


「……気をつけて」


「急に普通だな」


「いいでしょ」


「ああ」


 ベルクが荷車へ乗る。


「じゃあ、また来る」


「次はいつ?」


「分からん」


「そこは最後まで決まってないんだ」


「それが行商人だ」


 馬がゆっくり動き始める。


 俺は道を空けながら、ベルクに手を上げた。


「じゃあ、また次に」


「おう」


 荷車が町の外へ進んでいく。


 次にベルクが戻ってきたときには、石鹸を五個用意して、改良したカバンも渡す。その先でどうなるかは、またエルダへ行ってみないと分からない。


 とりあえず、ベルクとの話はここまで。


 俺は荷車が見えなくなるのを確認してから、町の中へ戻った。


 そういえば、ハンスさんに頼んでいたことがもう一つ残っている。


 マヨネーズに使う、カラム方面の油。


「……そっちも聞きに行くか」


 一つ終わったら、もう一つ。


 なかなか全部は片づかないらしい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。