↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したので貯金します。たぶん。~現代知識で稼ぐ、浪費家の異世界生活~  作者: 千流


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
261/264

俺たちがいなくても、回る?

セルトへ戻ってから、俺たちは再びいつもの生活を始めた。


市場へ出る日を決め、宿に置いてある石鹸の数を確認し、火付け道具を作ってもらっている職人にも顔を出す。リーネへ戻っていた間に大きな問題は起きておらず、少し安心した。


ただ、今回の帰省で一つ大きく変わったことがある。


リーネでは今、エマが俺たちのために石鹸を作っている。


「そろそろ行商人が来る頃だよな」


「予定通りならね」


カイルが荷物の記録を確認しながら答えた。


今回、リーネから送られてくる石鹸は、今までとは扱いが違う。


俺たちが仕入れて運んできた商品じゃない。


行商人がリーネで買い取り、自分の商品としてセルトへ運んでくる物だ。


その行商人が宿へ卸して、宿が客に売る。


俺たちはもう、売れた分の金を宿から受け取る必要もない。


「ちゃんと届くかな」


「行商人は何度もこの道を通ってる人でしょ」


「そうなんだけどさ」


運ぶこと自体は心配していない。


問題は、俺たちが間に入らなくても取引が成立するかどうかだ。


     ◇ ◇ ◇


数日後、例の行商人がセルトへ到着した。


俺たちは以前から取引の話をしていた宿へ向かう。


宿の主人はちょうど荷物を受け取ったところだった。


「おお、来たか」


「石鹸、届きました?」


「届いたよ。さっき商人さんが持ってきてくれた」


主人が棚の下から包みを取り出す。


中には見慣れた石鹸が並んでいた。


「おお……」


思わず声が出る。


「本当に来た」


「来るって話だったでしょ」


カイルに言われた。


そうなんだけど、実物を見るとやっぱり違う。


リーネで作った石鹸が、俺たちの手を通らずにセルトへ届いている。


「受け取りは問題なかったですか?」


カイルが主人に聞く。


「ああ。前に話した数だけ持ってきてくれたし、値段も聞いていた通りだったよ」


「よかった」


「ただ、次も同じように持ってきてくれるんだろう?」


「そのつもりです。売れ方を見ながら数は調整すると思いますけど」


主人は頷いた。


「それなら助かる。あんたたちが帰ったあとも、置いておけるからな」


そう。


そこが今回、一番確かめたかったことだ。


俺たちは半年経ったらセルトを離れる。


でも石鹸まで一緒に消える必要はない。


「ちなみに、もう売れました?」


「今届いたばかりだぞ」


「ですよね」


主人に笑われた。


さすがに気が早かった。


     ◇ ◇ ◇


宿を出たあと、俺たちは行商人にも話を聞きに行った。


今回の取引で、リーネからセルトへ石鹸を運ぶこと自体には問題がなかったらしい。


他の商品と一緒に積めるし、荷物としてもそれほど場所を取らない。


「毎回これくらいの数なら、運ぶのは難しくないな」


行商人はそう言った。


「ただ、買い取った以上は売れなきゃ困る。宿が次も欲しいと言うなら続けるが、増やすのは様子を見てからだ」


「そこは俺たちも同じ考えです」


俺が答える。


最初から大量に送って、売れ残ったら意味がない。


リーネで作れる数にも限りがある。


今は少しずつ増やしていく方がいい。


「ところで、リーネではちゃんと受け取れました?」


「ああ。ハンスの店で話を通してもらった。数も揃っていたし、問題なかったぞ」


「エマさんは?」


「若い女の人か? 荷物をまとめていたな。数を何度も確認してたぞ」


それを聞いて、思わず笑ってしまった。


「エマさんらしいな」


「だね」


カイルも笑う。


まだ働き始めたばかりだけど、ちゃんと自分の仕事をしてくれている。


もちろん、最初の石鹸作りにはセラさんも関わっている。


それでも、俺たちがセルトに戻ったあと、リーネ側で必要な準備を進めてくれたのは大きい。


行商人には、次の仕入れも売れ方を確認してから決めてもらうことにした。


今すぐ増産を約束する必要はない。


まずは今回の分がどうなるかだ。


     ◇ ◇ ◇


部屋へ戻ってから、俺たちは今回の流れを紙に書き出した。


リーネで石鹸を作る。


行商人が買い取る。


セルトへ運ぶ。


宿が仕入れて、客に売る。


「……俺たち、何もしてなくない?」


「何もしてないわけじゃないでしょ」


「いや、今回の石鹸には触ってないぞ」


「最初に宿と話したのも、行商人を探したのも僕たちだよ」


「それはそうだけど」


それでも不思議だった。


以前は、俺が材料を買って、混ぜて、固めて、売るところまでやっていた。


そのうちセラさんに作ってもらうようになった。


ハンスさんの店に置いてもらい、俺がいなくても売れるようになった。


そして今度は、別の町にまで商品が届いた。


しかも俺たちが運ばなくてもいい。


「これ、他の町でもできるかな」


俺が言うと、カイルが顔を上げた。


「もう次?」


「いや、今すぐじゃないよ」


「本当に?」


「本当に」


少し疑われている。


でも、考えてしまうのは仕方ない。


リーネとセルトでできるなら、別の町でもできるかもしれない。


もちろん、売ってくれる店も、運んでくれる商人も必要だ。


石鹸を作る数だって、まだそんなに増やせない。


「まずはエマさんが一人で作れるようになってからだね」


カイルが言う。


「うん。それと、こっちでちゃんと売れるか」


今回届いたのは、まだ最初の一回だ。


荷物が届いたからといって、商売がずっと続くと決まったわけじゃない。


それでも、今までできなかったことが一つできるようになった。


俺たちがいなくても、商品が作られて、運ばれて、店に並ぶ。


あとは、それが売れて、次の注文に繋がるかどうか。


そこまで確認できたら、セルトで始めた商売も、ようやく一つの形になりそうだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。