前より、うまく作れる?
翌日。
予定通り市場の売り場は借りず、俺とカイルは混ぜる道具に使えそうな物を探していた。
昨日それぞれで見て回った店をもう一度確認しながら、値段と使えそうな部品を比べていく。
「やっぱり、軸はこれくらいでいいよな」
「それでどうやって回すの?」
「ここに持ち手を付けて――」
説明しながら、ふと思い出した。
前に白いソース用の混ぜる道具を作った時。
最初から全部作ったわけじゃない。
元にした道具があった。
「……そういえばさ」
「何?」
「前に混ぜる道具を作った時、元にした手回しの道具があったんだよ」
カイルが少し考えてから、俺を見た。
「穴を開けるやつ?」
「そう、それ」
「うちの店で買ったやつでしょ」
「あ、やっぱりそうだった」
思い出した。
ラグナに何度か行くようになった頃、カイルのいた中古道具屋で買った物だ。
手で持ち手を回すと、先端が回転する。
元々は穴を開けるための道具だったけど、俺は先端を交換して、混ぜるために使えるようにした。
「まだ覚えてる?」
「25リルもしたからな」
「値段の方なんだ」
「大事だろ」
仕事用の金から出して、あとで追加の部品にも金を使った。
最終的にはミラに20リルで売ったから、金だけ見れば赤字だった。
ただ、ちゃんと使える物にはなった。
「同じようなの、こっちにないかな」
「中古なら探してみる?」
「それが早そうだな」
一から回転する仕組みを作ってもらうより、すでに回る道具を使った方が簡単だ。
しかもここはセルト。
中古品を扱っている店も、市場の露店もラグナより多い。
俺たちは昨日までとは少し探す物を変えて、中古の工具を中心に見て回ることにした。
一軒目。
なし。
二軒目にも、それらしい物はない。
三軒目でカイルが足を止めた。
「これ、近くない?」
店先に置かれていた道具を手に取る。
持ち手を回してみると、先端の軸が回った。
形は前に買った物とは少し違う。
でも、欲しいのは穴を開ける機能じゃない。
回す力を先端まで伝えられればいい。
「使えそう」
「いくらか聞く?」
「聞こう」
店の人に値段を確認する。
「18リルだって」
「前より安いな」
「中古だし、結構使ってるからね」
確かに傷は多い。
持ち手にも少しガタがある。
でも回してみた感じ、まだ使えそうだ。
18リル。
買えない額じゃない。
むしろ前に25リルで買ったことを考えれば安く見える。
「これにしよう」
「待って」
財布を出そうとした俺を、カイルが止めた。
「何?」
「もう一軒見てから」
「でも18リルだぞ?」
「昨日、値段比べてからって話したよね?」
「……しました」
危ない。
安いと思った瞬間、買うところだった。
俺たちは道具を一度戻し、さらに中古道具を扱う店を回った。
似た物はなかなか見つからなかったけど、もう一つだけ使えそうな物があった。
値段は16リル。
ただし、さっきの物より状態が悪い。
「安いけど、こっちは回した時に引っかかるな」
俺が持ち手を回す横で、カイルも軸の動きを確認する。
「2リルしか違わないなら、俺はさっきの方がいいと思う」
「俺も」
安ければいいわけじゃない。
使っている途中で壊れたら、結局また金がかかる。
俺たちは最初の店へ戻った。
「じゃあ18リルの方にするか」
「うん。あとは先端をどうするかだね」
そこは前にもやったことがある。
穴を開けるための先端を外して、代わりに混ぜるための物を付ける。
前回は最初に木で試して、そのあと金属の部品を追加した。
今回は最初から、その経験を使える。
「先端は金属で作ってもらおう」
「いくらくらい?」
「そこは聞いてから」
カイルが少し笑った。
「ちゃんと覚えてるじゃん」
「俺だって成長するんだよ」
18リルの道具を買い、次は金属を加工してくれる場所を探す。
前に一度作っている。
失敗したところも覚えている。
それなら今回は、最初から少しだけ近道ができる。
石鹸を作るために始めた道具探し。
前と同じ物を作るだけなら、それほど難しくない。
でもせっかくなら――前より使いやすい物にしたい。
そのくらいなら、カイルにも怒られない。
……たぶん。




