作りながら、売ればいい?
セルトで何度か石鹸を作ったところで、一度使った金を確認してみることにした。
油と灰。
それに細かい物まで含めて、作れた数で割ってみる。
「一個……だいたい1.4リルくらいか」
俺が計算した数字を見せると、カイルが首を傾げた。
「それって安いの?」
「リーネで作ってた時より、少しだけ安い。向こうだと一個1.5リルくらいだったから」
今はセラさんから完成した石鹸を一個2リルで仕入れている。
それと比べれば、差はもう少し大きい。
「じゃあ、こっちで作った方がいいじゃん」
「材料だけ見ればな」
一個5リルで売れば、材料だけなら3.6リル残る。
悪くない。
ただし、俺たちが混ぜたり、型に入れたり、切ったりしている時間は入っていない。
俺がそう説明すると、カイルは納得したように頷いた。
「だから、混ぜる道具を作るんでしょ」
「そういうこと」
材料は安い。
売れることも分かった。
あとは、作る手間をどこまで減らせるか。
少なくとも今のところ、セルトで作ること自体は悪くなさそうだ。
「じゃあ今日、道具の方を見に行く?」
カイルに聞かれて、俺は机に置かれた石鹸を見る。
最初に持ってきた十個は残り三個。
それとは別に、ここ数日で俺たちが作った分もある。
作ることばかり考えていても、売らなければ金にはならない。
「市場にも出よう」
「道具は?」
「そっちもやる」
「二人で?」
「いや」
俺はカイルを指差した。
「二人いるんだから、手分けしよう」
「なるほど」
片方が市場で石鹸を売る。
もう片方が、混ぜる道具を作るために動く。
それなら商売を止めずに、次の準備も進められる。
「今日は俺が道具の方を見てくる。カイルは売る方を頼める?」
俺がそう言うと、カイルは石鹸の入った箱を覗き込んだ。
「いいけど、場所代は?」
そこは忘れていない。
毎日4リル払って赤字になったばかりだ。
「今日は借りる。その代わり、明日は借りない」
「売る日を決めるってやつね」
「そう。毎日なんとなく借りるのはもうやめよう」
売る日は売る。
調べる日は調べる。
その方が無駄な金も減る。
市場へ着くと、カイルは石鹸を持って売り場へ向かった。
俺はそのまま、道具を扱っている一角へ向かう。
欲しいのは、前に作った手回しの混ぜる道具。
ただ、まったく同じ物を作るつもりはなかった。
前に作った時は、木の棒を回すための簡単な仕組みだった。
あれでも使えた。
でも今は、ノルンの道具を作った時に回転する仕組みを散々見ている。
もっと楽に回せる形にできるかもしれない。
「……これ使えるかな」
店先に並んでいる部品を眺める。
軸に使えそうな棒。
持ち手。
固定するための金具。
必要そうな物はいくつかある。
でも、見つけるたびに買うのはやめた。
値段を聞いて、使えそうな物を覚えておく。
それから木工をやっている店にも寄った。
欲しい形を説明して、どこまでなら作ってもらえるかを聞く。
全部作ってもらう必要はない。
俺たちでできない部分だけ頼めば、その分だけ安く済む。
いくつか店を回ったところで、一度市場へ戻った。
売り場へ近づくと、カイルの前に置いてあった石鹸が減っている。
「売れた?」
俺が聞くと、カイルが二本指を立てた。
「二個。ちゃんと5リルで」
「おお、いいじゃん」
今日は場所代が4リル。
石鹸二個なら売上は10リル。
材料費は二個で2.8リルくらいだ。
「……今日だけなら、もう場所代は超えたな」
「まだ終わってないけどね」
「じゃあ、もっと売ってくれ」
「それなら交代しない?」
カイルが立ち上がった。
「俺も道具の方を見てくる」
「分かるの?」
「レインが何を探してるかは聞いたでしょ。それに、値段も見ておきたい」
なるほど。
同じ物を別々に見れば、値段の比較もしやすい。
俺は売り場に座り、代わりにカイルが市場の中へ歩いていった。
一人が売っている間に、一人が次の準備をする。
途中で交代すれば、どちらか一人に任せきりにもならない。
二人で商売をするなら、ずっと二人で同じ場所にいる必要はないらしい。
しばらくして、カイルが戻ってきた。
手には何も持っていない。
「どうだった?」
「使えそうなのはいくつかあったよ。でも、まだ買ってない」
「いいのあったなら買えばよかったのに」
そう言うと、カイルは呆れたように俺を見た。
「値段比べてからでいいでしょ」
「……正しい」
俺が一人だったら、たぶん一個くらい買っていた。
危ないところだった。
「じゃあ明日は売り場を借りないで、二人で見て回るか」
俺が提案すると、カイルも頷いた。
「うん。それで何を使うか決めよう」
石鹸を売りながら、次の道具も作る。
セルトに来たばかりの頃みたいに、二人で一日中売り場に座っている必要はない。
少しずつだけど、こっちでの動き方が分かってきた気がする。
あとは――混ぜる道具を、いくらで作れるかだ。




