↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したので貯金します。たぶん。~現代知識で稼ぐ、浪費家の異世界生活~  作者: 千流


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
219/264

今日から、セルトで暮らします

朝早く、俺とカイルはリーネを出た。


 父さんと母さん、それにハンスたちにも見送られ、ハンスが紹介してくれた商人の馬車に乗り込む。前にも通った道なので、今回は景色を眺めるより、セルトに着いてからの話をしている時間の方が長かった。


 二日ほどかけて、再びセルトへ辿り着く。


「着いたな」


「うん」


 前に来たときと同じ町なのに、門をくぐったときの感覚は少し違った。


 あのときは二週間の下見。


 今回は、ここで半年暮らす。


「とりあえず宿?」


「今日はね。でも先に荷物置きたい」


「じゃあ前に泊まったところ行くか」


 半年暮らすと言っても、今日からいきなり部屋があるわけじゃない。


 まずは数日分の宿を取って、その間に住む場所を決める。


 商売より先に、家探しだ。


     ◇ ◇ ◇


 前にも使った宿へ荷物を置くと、俺たちはすぐ町へ出た。


 下見のときに、安く借りられる部屋がある辺りも確認している。中心の大通りから少し外れれば、値段はかなり下がる。


「一ヶ月12リルくらいだったよな」


「安いところならね」


「二人で24リル」


「別々に借りるなら」


 カイルが言う。


「一緒なら安くなるかな?」


「男二人で半年同じ部屋?」


「嫌?」


「嫌っていうか……狭くない?」


「寝るだけならよくない?」


「荷物もあるよ」


「ああ」


 自分たちの荷物だけじゃない。


 石鹸や鞄も置く必要があるし、これからセルトで商品を仕入れるなら、さらに増える可能性もある。


「広い部屋を二人で借りる?」


「値段次第かな」


「じゃあ両方見るか」


 こういうときは、先に決めつけない方がいい。


 安い一人部屋を二つ借りるのか。


 少し広い部屋を二人で使うのか。


 実際に見てから決めればいい。


     ◇ ◇ ◇


 一軒目は、前に聞いていた通り一ヶ月12リルだった。


 部屋は狭い。


 寝台と小さな机、それだけでかなり埋まる。


「商品置けないな」


「置けても鞄二個くらいだね」


「これを二部屋か……」


 暮らせないことはない。


 でも半年となると、少し窮屈そうだ。


 二軒目は一ヶ月14リル。


 ほんの少し広い程度で、あまり変わらない。


「二人で一部屋は?」


「無理」


「だよね」


 三軒目は、大通りからさらに離れた場所にあった。


 一階には別の家族が住んでいて、外側の階段から二階へ上がる。案内された部屋には寝台が二つあり、小さいながらも机と棚、それから荷物を置けそうな空間があった。


「ここ、二人で借りられるんですか?」


「ああ。二人なら一ヶ月20リルだよ」


「20?」


 思わずカイルを見る。


 別々に12リルの部屋を借りれば24リル。


 こっちなら二人で20リル。


「安い」


「中心から少し遠いからね。その代わり、静かだよ」


 市場までは歩く必要がある。


 でも毎日通えない距離ではない。


「半年借りるなら?」


「途中で出るなら、その月まででいい。先に全部払う必要もないよ」


 それもありがたい。


 半年いる予定でも、商売が駄目なら途中で帰る可能性はある。


 父さんやオルドに言われたことを考えるなら、最初から半年分を払ってしまうのは避けたい。


「どうする?」


 俺が聞くと、カイルは部屋を一周見た。


「ここでいいんじゃない?」


「俺もそう思う」


 決まるときは早かった。


     ◇ ◇ ◇


 最初の一ヶ月分を払い、宿へ荷物を取りに戻った。


 その日の夕方には、俺たちはセルトで暮らす部屋を手に入れていた。


「どっちの寝台にする?」


「どっちでもいいよ」


「じゃあ窓側」


「早いな」


「どっちでもいいって言ったじゃん」


「言ったけど」


 俺は窓側の寝台へ荷物を置く。


 反対側ではカイルが自分の荷物を整理し始めていた。


 商品は棚の近くへ。


 生活用品はそれぞれの寝台のそばへ。


 商売用の金と自分の生活費は、ここでも混ざらないよう別にしておく。


「なんか変な感じだな」


「何が?」


「家じゃないのに、宿でもない」


「半年いるなら家みたいなものでしょ」


「そうなんだけどさ」


 リーネには父さんと母さんがいる。


 カイルにはラグナのオルドのところがある。


 でも今日からしばらくは、この部屋へ帰ってくる。


「俺たち、二人暮らし?」


「その言い方やめて」


「なんで?」


「普通こういうの、女の子とするもんじゃない?」


「知らないよ」


「十五歳で家を出て、知らない町で二人暮らし。そこだけ聞いたら、ちょっとそれっぽいのに」


「相手、俺だけど」


「そこなんだよなあ」


「嫌なら一人部屋借りれば?」


「一ヶ月12リル」


「ここなら二人で20リル」


「カイル、半年よろしく」


「切り替え早いな」


 女の子との二人暮らしには少し憧れる。


 でも、そのために毎月余計に金を払うかと聞かれたら話は別だ。


 そもそも相手もいない。


 前世でもできなかったことを、異世界に来たからって急に期待するのはやめよう。


     ◇ ◇ ◇


 荷物を片づけ終わるころには、外が少し暗くなり始めていた。


「飯どうする?」


「食べに行く?」


「毎日外で食べてたら、月15リルじゃ収まらなくない?」


「じゃあ作る?」


「何を?」


「肉を焼く」


「それしかないの?」


「パンも買う」


「料理って言っていいのかな」


 俺だって分からない。


 でも半年暮らすなら、毎日宿や食堂に頼るわけにもいかない。


「明日、食料も見に行こう」


「市場も?」


「もちろん」


「商売する場所も決めないとね」


「あ」


 そうだった。


 部屋を借りただけで、少し達成感が出ていた。


 俺たちは家探しに来たわけじゃない。


「じゃあ明日は、市場の場所をもう一回確認して、借りられるところを決める」


「商品はまだ出さない?」


「場所決めてからでいいだろ」


「そうだね」


 寝る場所は決まった。


 生活費もある。


 商品も持ってきた。


 ここまでは準備だ。


 明日からは、本当にセルトで商売を始める。


 窓から見える知らない町の灯りを眺めながら、少しだけ気持ちが高ぶる。


 半年後。


 この町を出るとき、俺の貯金はいくらになっているんだろう。


 できれば、5,610リルより増えていてほしい。


 ……いや、増やすために来たんだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。