↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したので貯金します。たぶん。~現代知識で稼ぐ、浪費家の異世界生活~  作者: 千流


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
209/264

店をやるなら、何を売る?

滞在を一週間延ばすと決めた翌日。


 俺とカイルは、朝から市場を歩いていた。


「まず、似たような店がないか探そう」


「各地の商品を集めてる店?」


「うん。それが普通にあるなら、同じことやっても意味ないでしょ」


「確かに」


 昨日までは、面白そうだと思っただけだった。


 リーネの石鹸や鞄、ノルンの道具、ラグナで見つけた物。それを一か所に集めたら、知らない物が並ぶ面白い店になるんじゃないか。


 でも、セルトは大きな町だ。


 俺が思いつく程度のことなら、すでに誰かがやっていてもおかしくない。


     ◇ ◇ ◇


 結論から言えば、似た店はあった。


「普通にあるね」


「あるなあ」


 市場から少し離れた大通り。


 そこには、各地から仕入れた商品を扱う商店が何軒もあった。


 布。


 食器。


 酒。


 保存食。


 装飾品。


 店によって得意な物は違うけど、別の町から商品を仕入れて売ること自体は珍しくない。


「そりゃそうか」


「街道が三本通ってる町だからね」


「いろんな町から物が来るなら、それを売る人もいるよな」


 当たり前だった。


 危ない。


 危うく「各地の商品を集める店なんて新しいんじゃない?」と得意げに始めるところだった。


「じゃあ駄目?」


「いや」


 俺は店先を眺める。


「もうちょっと見たい」


 同じような商売があるから無理、とは限らない。


 むしろ、すでに店があるなら買う人もいるということだ。


 問題は、その中に俺たちが入る理由があるかどうか。


     ◇ ◇ ◇


 何軒か見ているうちに、少しずつ違いが分かってきた。


 大きな商店は、扱う量が多い。


 布なら布。


 食料なら食料。


 生活用品なら生活用品。


 いろんな町から仕入れていても、商品そのものは似た種類でまとめられている。


「何でも売ってる店もあるけどね」


「ハンスの店を大きくした感じだな」


「うん」


 逆に、珍しい物だけを集めた店もあった。


 ただ、値段が高い。


 装飾品や遠くの酒、見たことのない置物なんかが並んでいて、俺でも気になる。


「これ、ちょっと欲しい」


「何に使うの?」


「飾る」


「宿に?」


「……買わないよ」


 危なかった。


 自由に使える金は、父さんへの贈り物でかなり減っている。


 今は見るだけだ。


「でも、こういう店とも違うんだよな」


「レインが考えてるのは?」


「珍しいだけじゃなくて、使える物」


 石鹸は使う。


 鞄も使う。


 ノルンの道具も、必要な職人には役に立つ。


 カイルが中古品の店で見つける物だって、安くて使えるから価値がある。


「他の町では普通だけど、この町ではあまり見ない物とか」


「それならありそうだね」


「でしょ?」


「でも、それをどうやって見つけるの?」


「……そこなんだよな」


 俺たちはセルトの人間じゃない。


 何が珍しいかを、まだ知らない。


     ◇ ◇ ◇


 午後は商品ではなく、店そのものを見ることにした。


 大通りは人が多い。


 当然、店も多い。


 空いている場所がないわけじゃないけど、聞いてみると借りる金も高かった。


「高くない?」


「人通りあるからでしょ」


「ちょっと横に入ると?」


「かなり下がるね」


「でも人も減る」


「そういうもんじゃない?」


 世の中うまくできている。


 安くて、人が多くて、広くて、便利な場所。


 そんな都合のいい店はなかった。


「最初から大通りはないな」


「まだ店やるって決めてないけどね」


「もしもの話」


「はいはい」


 市場では、一日や数日だけ場所を借りて売る商人もいる。


 町の外から来て、持ってきた商品を売り切って帰る人も珍しくないらしい。


「最初はこっちでもいいかも」


「店を借りる前に?」


「うん。何が売れるか分からないのに、いきなり店借りるの怖くない?」


「それは俺も思う」


 意見が一致した。


 店を持つのは、思っていたより金がかかる。


 場所を借りる金だけじゃない。


 商品を置く棚もいる。


 生活するなら宿代もかかる。


 在庫を持てば、その分の金も先に出ていく。


「……結構使うな」


「楽しそうな顔で言わないで」


「してないよ」


「してる」


 店を作るための道具。


 棚。


 看板。


 商品。


 必要な物を考え始めると、ちょっと楽しくなってきただけだ。


     ◇ ◇ ◇


 夕方、宿へ戻ってから、今日見たことを整理した。


「各地から仕入れて売る店は、もうある」


「うん」


「珍しい物だけ売ってる店もある」


「あるね」


「大通りの店は高い」


「場所代がね」


「市場なら短期間でも売れる」


「そこは使えそう」


 俺は紙に書いた内容を見る。


 昨日までは、各地の商品を集めれば店になると思っていた。


 でも、それだけじゃ弱い。


「俺たちがやる意味、欲しいな」


「安さ?」


「大きい店には勝てなくない?」


「仕入れる量が違うだろうね」


「じゃあ品揃え?」


「それも向こうの方が多い」


「だよなあ」


 いきなり二つ潰れた。


 カイルが少し考える。


「レインが言ってた、使える物ってのは?」


「うん?」


「何でも置くんじゃなくて、俺たちが実際に見て、使えると思った物だけ置く」


「ああ」


「中古品を仕入れるときと似てる」


 なるほど。


 安いから買うんじゃない。


 珍しいから買うんでもない。


 誰が使うのか。


 何に使えるのか。


 その値段でも欲しい人がいるのか。


 俺たちは、今までそれを何度も考えてきた。


「それならノルンの道具も入るな」


「在庫で置くの?」


「いや、あれは高いから見本だけ」


「見本にも一台買う必要あるけど」


「……父さんの借りる?」


「返してあげなよ」


 駄目か。


 でも、売り方はいろいろありそうだ。


「石鹸みたいに普通に置く物もある」


「鞄みたいに数を絞る物もある」


「高い道具なら見本だけ置いて注文を取る」


「中古品なら一個ずつ状態を見て仕入れる」


 少しずつ形が見えてきた。


 全部を同じように売る必要はない。


「なんか、できそうじゃない?」


「まだ商品一個もないよ」


「分かってるって」


 今回は下見だ。


 商品を持ってきていないのは、むしろ正解だったかもしれない。


 適当に持ってきていたら、売ることばかり考えていた。


「残りの滞在で調べよう」


「何を?」


「リーネから持ってきたら売れそうな物。ラグナからなら何がいいか。それと、セルトで仕入れられそうな物」


「全部?」


「全部」


 カイルが笑った。


「一週間延ばしてよかったね」


「まだ足りなくなったりして」


「それは帰ってから考えよう」


 そうだな。


 俺たちは一度帰る。


 そのつもりは変わっていない。


 ただ。


 帰ったあと、もう一度セルトへ来る理由は、少しずつでき始めていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。