↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したので貯金します。たぶん。~現代知識で稼ぐ、浪費家の異世界生活~  作者: 千流


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
184/264

そのまま、切れない?

翌日も、俺たちは同じ工房にいた。


 昨日作った道具は、そのまま職人に使ってもらっている。何度か位置を変して試してもらったけど、固定さえしっかりすれば問題なく使えるらしい。


「これだけでも十分じゃない?」


 カイルが言う。


「十分ではあるんだけどさ」


「じゃあ何が不満なんだよ」


「不満っていうか……もったいなくない?」


 職人は道具を使って、何本もの木材に同じ位置の印をつけている。


 そこまでは早い。


 問題はそのあとだ。


 印をつけた木材を別の作業台へ運び、一本ずつノコギリで切っていく。


「ここで切れたら早くない?」


「ここって?」


「この道具の上」


 俺は昨日作った道具を指した。


「長さはもう決まってるんだから、印をつけてから別のところで切るんじゃなくて、その位置でそのまま切る」


「どうやって?」


「それを今から考える」


「まだ考えてなかったのかよ」


 そこまで都合よく完成形が頭に入っているわけじゃない。


 前世で似たような機械を見た記憶はある。


 でも、仕組みまで全部覚えているわけではなかった。


     ◇ ◇ ◇


「ここで切りたい?」


 職人にも話してみると、昨日より食いつきはよかった。


「そうです。長さを決めて、木を置いて、そのまま切れれば楽じゃないですか?」


「そりゃ楽だが」


 職人がいつものノコギリを持ってくる。


 試作品の上に木材を置き、印をつける位置へ刃を当てた。


「これじゃ台まで切るぞ」


「あ」


「あと、木を押さえながら切りにくい」


「じゃあ下に隙間を作れば?」


「切る場所だけか?」


「そうです」


 土台を全部平らにする必要はない。


 切る場所だけ隙間を空ければ、刃が木材を抜けても台には当たらない。


 でも、それだけなら普通のノコギリを使いやすくしただけだ。


「ノコギリ自体をここにつけるとか?」


 カイルが言った。


「固定するってこと?」


「切る場所が決まってるなら」


「それ、ありかも」


 毎回切る位置にノコギリを合わせる必要もなくなる。


 ただ、普通のノコギリは前後に動かして使う。


 固定するなら、その動きをどう作るか考えないといけない。


「前後に動かす……」


 手で押して。


 引いて。


 また押す。


 できなくはなさそうだけど、仕組みが一気に面倒になる。


「なんか違うな」


「自分で言い出したんだろ」


「そうなんだけど」


 もっと単純にできないだろうか。


     ◇ ◇ ◇


 工房の隅に座って考えていると、ふと別の道具を思い出した。


 白いソースを大量に混ぜるために試した、手回しの道具。


 取っ手を回す。


 軸が回る。


 先につけた物も回る。


「……回す?」


「今度は何?」


 カイルが嫌そうな顔をする。


「前にさ、手で回す道具を買ったんだよ」


「また買った話?」


「違う。ちゃんと使ったやつ」


「珍しい」


「失礼だな」


 最終的にはミラの店で使うことになった。


 あのときは先端を回して、白いソースを混ぜた。


 同じように回転する力を使って――。


「丸い刃って作れないかな」


「丸い刃?」


「うん」


 紙を取り出して、円を描く。


 その周りに刃をつける。


「これを回す」


「……それで?」


「ここに木を当てたら、切れない?」


 カイルが紙を見る。


 職人も近づいてきた。


「こんな刃、見たことないぞ」


「俺は……似たようなのを見たことがある」


 前世で。


 もちろん、それは言えない。


「どこで?」


「昔」


「雑だな」


「細かいところは覚えてないんだよ」


 これは本当だ。


 ホームセンターで木材を切ってもらったこともあるし、映像で見たこともある。


 丸い刃が高速で回って、木材を切る。


 そこまでは覚えている。


 でも、その機械を一から作れと言われたら話は別だ。


「手で回して、こんなのが木を切れるくらい回るのか?」


 職人が聞く。


「……分かりません」


「刃も作らないといけないぞ」


「それも分かってます」


「危なくないか?」


「それは……かなり気をつけないと駄目だと思います」


 言いながら、自分でも問題が増えているのが分かる。


 測る道具は木材と少しの金具で作れた。


 今度は違う。


 刃。


 軸。


 回転させる仕組み。


 木材を固定する方法。


 それに、使う人が怪我をしないようにしないといけない。


「急に大変になったな」


 カイルが言う。


「でも、できたら便利じゃない?」


「できたらな」


 そこは否定しないらしい。


     ◇ ◇ ◇


「まず刃だな」


 職人が紙を手に取った。


「木を切れる丸い刃が作れないなら、他を考えても仕方ない」


「作れる人、知ってます?」


「鍛冶屋なら何人かいる。ただ、こんなの頼まれたことはないと思うぞ」


「じゃあ聞いてみましょう」


「今から?」


「思いついたときに聞いた方が早いじゃん」


 立ち上がると、カイルがため息をついた。


「待て」


「何?」


「予算」


「……あ」


「昨日決めたのは、あの道具の試作までだろ」


 そうだった。


 測る道具は一応できた。


 ここから先は別物だ。


「相談するだけならタダじゃない?」


「相談したあと、そのまま注文するなよ」


「しないって」


「本当に?」


「……値段は聞くかも」


「聞くだけな」


 信用がない。


 でも、今度ばかりはカイルの言う通りだった。


 丸い刃なんて特注になるかもしれない。


 思ったより高ければ、簡単に試せるものでもなくなる。


 まずは作れるのか。


 作れるなら、いくらかかるのか。


 それを聞いてからだ。


「じゃあ鍛冶屋、行こう」


「相談だけだぞ」


「分かってるって」


 昨日までは、同じ長さを何度も測るのが面倒だというだけだった。


 それが今は、測って、そのまま切るところまで考えている。


 できるかどうかは、まだ全然分からない。


 でも、こうやって少しずつ形が変わっていく感じは嫌いじゃない。


 むしろ、かなり楽しい。


 問題は。


 楽しくなってきたときほど、俺は金を使いたくなるということだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。