↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したので貯金します。たぶん。~現代知識で稼ぐ、浪費家の異世界生活~  作者: 千流


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
168/264

一緒にやるって、話しておこう

カイルと一緒にやると決めた翌日、俺はリーネへ戻った。


 帰りの馬車では、これから決めることを紙に書き出してみた。使う金、利益の分け方、仕事の分担、最初に行く町。それなりに書いたところで、もっと大事なことを思い出す。


『父さんと母さんに話す』


 成人すれば、自分で仕事を決められる。


 だから許可をもらわないと何もできないわけじゃない。それでも、黙って始める理由はなかった。


     ◇ ◇ ◇


「カイルと一緒に商売することにした」


 夕食の途中で言うと、母さんの手が止まった。


「カイルって、ラグナのお友達よね?」


「うん。中古道具屋で働いてる」


「前に何度か話してた子か」


 父さんも覚えていたらしい。


「成人したら二人で町を回って、いろんな場所で商売してみようって話になった」


「へえ」


「反対?」


「まだ何も言ってないだろ」


 父さんが笑う。


 母さんは少し考えてから俺を見る。


「一人で町を回るって言われるよりは安心だけど、その子のことをお母さんたちは知らないから」


「まあ、そうだよね」


「レインはどれくらい知ってるの?」


「何回も一緒に仕入れしてるし、ラグナに行くたびに会ってるよ。最近は店の外でも飯食ったりしてる」


「商売は?」


「中古品の値段とか状態を見るのは、俺よりずっと慣れてる」


「それだけ?」


「あと、俺が買おうとすると止める」


 父さんが笑った。


「それは必要だな」


「そこだけ食いつかないでよ」


「大事だろ」


「大事だけど」


 母さんまで笑っている。


 味方がいない。


「でも、レイン」


 少しして、父さんの声が真面目になる。


「友達と商売するなら、仲がいいだけじゃ駄目だぞ」


「うん」


「金が絡むからな。どっちがいくら出すのか、儲けをどう分けるのか、損したときはどうするのか。始める前に決めておけ」


「ちょうどそれ考えてた」


「ならいい」


「あと、ずっと一緒にやるって決めつけないことね」


 今度は母さんだった。


「どういうこと?」


「やってみたら合わないかもしれないでしょう?」


「ああ」


「喧嘩するかもしれないし、どちらかが別のことをやりたくなるかもしれない。そのときに、一緒に始めたんだから抜けるな、なんて言わないようにね」


 そこまでは考えていなかった。


 一緒に始めることばかり考えていたけど、終わるときのことも決めておいた方がいいのか。


「……それも書いとく」


「書いてるの?」


「馬車でいろいろ」


「見せてみろ」


「まだ駄目。途中だから」


 父さんが手を伸ばしてきたので、慌てて紙を遠ざけた。


 自分でもまだよく分かっていない物を見せるのは恥ずかしい。


「とりあえず、そのカイルって子には一度会ってみたいな」


「俺もそのうち連れてこようと思ってた」


「成人してから?」


「その前でもいいけど」


「じゃあ機会があれば連れてきなさい」


「うん」


 反対されなかった。


 それだけで少し肩の力が抜けた。


     ◇ ◇ ◇


 次にラグナへ行ったとき、カイルにも家で話したことを伝えた。


「会ってみたいって」


「俺に?」


「うん」


「何話せばいいんだよ」


「普通でいいんじゃない?」


「お前の家の普通を知らないんだけど」


「飯食えば大丈夫だよ」


「雑すぎるだろ」


 カイルは嫌そうな顔をしている。


「そっちは?」


「オルドに話した」


「どうだった?」


「反対はされなかった」


「おお」


「ただ、お前のことは聞かれた」


「何て?」


「本当にそいつと金を扱って大丈夫なのかって」


「……オルドさん、俺のこと知ってるよね?」


「知ってるから聞いたんじゃない?」


「どういう意味?」


 カイルは答えずに笑った。


「なんて答えたの?」


「仕事の金まで全部使うほど馬鹿じゃないって」


「褒めてる?」


「一応」


「一応かよ」


 まあ、間違ってはいない。


 俺だって貯金と仕事用と自由に使う金は分けている。


 自由に使う金は減る。


 結構減る。


 でも、仕事用まで好き勝手に使っているわけではない。


「オルドも、始める前に金のことは決めろって」


「うちも言われた」


「あと、喧嘩したときどうするか」


「それもうち」


「途中でどっちかが辞めるときも」


「それも」


 二人で顔を見合わせる。


「同じこと言われてるな」


「大人ってそういうの気にするんだな」


「俺たちが気にしてなさすぎるんじゃない?」


「……それはあるかも」


 昨日まで、一緒にやることが決まっただけで結構満足していた。


 でも、二人で商売するなら、それだけでは足りないらしい。


     ◇ ◇ ◇


「じゃあ、決めるか」


 店の奥にある小さな机に、紙を一枚置いた。


 カイルが向かい側に座る。


「何から?」


「金」


「最初から面倒なの来たな」


「一番大事だろ」


「まあな」


 俺には仕事用の金がある。


 カイルにも自分で持っている金はあるらしい。


 でも、それを全部まとめて二人の金にするのか。


 必要なときだけ出すのか。


 利益を半分ずつにするなら、最初に出す金も同じにするのか。


 考え始めると、次から次へと出てくる。


「……これ、今日だけで決まる?」


「無理じゃない?」


「だよな」


「でも、決めないと始められない」


「じゃあ一個ずつやろう」


「うん」


 紙の一番上に、大きく書く。


『二人で商売するときの決まり』


 その下に、まず一つ。


『金をどうするか』


 俺一人なら、思いついたら動けばよかった。


 失敗しても、減るのは俺の金だ。


 でも、これからは違う。


 二人でやるなら、二人で決める。


 少し面倒になった。


 その代わり。


 一人でやるより、できることは増えそうだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。