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転生したので貯金します。たぶん。~現代知識で稼ぐ、浪費家の異世界生活~  作者: 千流


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俺は、何屋なんだ?

ハンスに言われてから、俺は自分が何をしたいのか考えていた。


 成人したら町の外でも商売をしたい。それはたぶん間違っていない。


 問題は、その先だ。


「……俺、何屋なんだ?」


 自分の部屋で呟いてみる。


 石鹸を売っている。


 カバンも売っている。


 白いソースも作った。


 最近は中古品まで仕入れている。


 並べてみても、まったく統一感がない。


「石鹸屋……ではないよな」


 今では作っているのはセラだ。


 俺が毎日石鹸を作って売りたいかと聞かれたら、違う。


「カバン屋でもない」


 あれも作っているのはダリオだ。


 白いソース屋はもっと違う。


 中古品屋も、ラグナから仕入れているだけで店を開きたいわけじゃない。


「じゃあ何なんだ?」


 答えが出ない。


 俺は紙を取り出して、今までやってきたことを書き始めた。


     ◇ ◇ ◇


 最初に石鹸を作ったときは、この世界にない物を作れば売れるんじゃないかと思った。


 カバンも同じだ。


 白いソースは、自分が食べたかったところから始まった。


 中古品の仕入れは少し違う。


 ラグナとリーネで値段や必要とされる物が違う。それなら、安いところから必要としているところへ持っていけば金になるんじゃないかと思った。


「……全部、思いつきじゃん」


 我ながらひどい。


 何か一つの仕事を覚えて、それを続けてきたわけじゃない。


 気になったものを試して、売れそうなら売る。


 自分で作れなければ、作れる人を探す。


 俺がやらなくても回るようになったら、任せる。


 そして時間が空くと、また別のことを始める。


「落ち着きがないだけでは?」


 ちょっと不安になってきた。


     ◇ ◇ ◇


 翌日、トーマの家へ行った。


 ちょうど宿の入口で荷物を運んでいたので、一つ持つのを手伝う。


「急にどうした?」


「暇だったから」


「嘘だな」


「なんで?」


「暇だからって荷物運びに来たことないだろ」


「確かに」


 荷物を置いてから、食堂の隅に座った。


「トーマって、自分が何屋か聞かれたらすぐ答えられるよな」


「何それ」


「いいから」


「宿屋だろ」


「だよな」


「うちは宿なんだから当たり前じゃん」


 即答だった。


 羨ましい。


「じゃあ俺は?」


「レイン?」


「うん」


 トーマが考える。


「……何屋だ?」


「それを聞きに来たんだよ」


「俺に聞くなよ」


「友達だろ」


「友達なら何屋か分かると思うなよ」


 正論だった。


「石鹸?」


「それだけじゃない」


「カバン?」


「それだけでもない」


「白いソース」


「中古品も最近やってる」


「やっぱ分かんないな」


「だろ?」


 本人にも友達にも分からない。


 これは結構な問題なのではないだろうか。


「別に決めなくてもよくない?」


「え?」


「何屋か決めないと商売できないの?」


「……できる」


「じゃあいいじゃん」


 簡単に言われた。


「俺は宿があるから宿やるけど、お前は違うだろ」


「まあ」


「やりたいの見つけたらやって、売れたら続ければ?」


「そんな適当でいいのかな」


「今までそれでやってきたんじゃないの?」


 それも正論だった。


 なんか今日のトーマ、強くない?


     ◇ ◇ ◇


 帰り道。


 市場を歩きながら、店を眺める。


 肉屋は肉を売る。


 パン屋はパンを売る。


 鍛冶屋は金属を加工する。


 宿屋は旅人を泊める。


 俺には、そういう一つのものがない。


 でも。


 市場を歩いていて気になるのは、一つの商品じゃなかった。


「あれ、ラグナだと高かったな」


 籠を見て思う。


「あの布、エルダで似たの見たな」


 別の店で足が止まる。


「これ、向こうで売れるかな」


 気づけば、そんなことばかり考えていた。


 何を作るか。


 どこで売るか。


 誰なら作れるか。


 別の町ではいくらなのか。


 そういうことを考えるのが、たぶん好きなんだ。


「……何屋でもいいのか」


 石鹸だけを売らなくてもいい。


 カバンだけを売らなくてもいい。


 町を移動して、そこで見つけた物を別の町へ持っていくのもいい。


 何か思いつけば、新しく作ってもいい。


 売れなければやめればいい。


「いや、金使ってからやめるのは困るけど」


 そこだけは気をつけよう。


     ◇ ◇ ◇


 家へ帰って、昨日の紙をもう一度開いた。


 上には、ハンスに言われて書いたものが並んでいる。


 商品。


 売り先。


 荷物。


 旅の金。


 売れなかった場合。


 その下に、新しく書き足す。


『町ごとに、売れる物を探す』


 少し考えて、もう一つ。


『思いついた物は作ってみる』


「……これでいいか」


 何屋になるかは、まだ決めなくていい。


 というより、一つに決めない方が俺には合っている気がする。


 町を見て、物を見て、人と話して。


 そこで商売になりそうなものを探す。


 それを続ければ、今まで行ったことのない町にも行く理由ができる。


「金も貯まるし」


 そこは大事だ。


 むしろ一番大事だ。


 100万リルまで、あと994,620リル。


「……やっぱ遠いな」


 一つの商売だけで届く気はしない。


 だったら、いろいろやればいい。


 何屋なのかは分からない。


 でも。


 何をしたいのかは、前より少し分かった気がした。

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