↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したので貯金します。たぶん。~現代知識で稼ぐ、浪費家の異世界生活~  作者: 千流


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
153/264

これ、本当に売れる?

ラグナからリーネへ戻ると、俺は荷物を家に置いて、その翌日にダリオの工房へ向かった。


 持っていくのは、ラグナで仕入れた壊れた鞄が四つ。全部合わせて9リルだった。


 売れると思って買った。


 ……正確には、売れるかもしれないと思って買った。


「ダリオ、ちょっと見てほしい物があるんだけど」


「おう。今度は何だ?」


「仕入れてきた」


「仕入れ?」


 作業台の空いているところに、鞄を並べる。


 ダリオは一つ目を持ち上げると、俺が説明するより先に金具や革の状態を確認し始めた。


「ずいぶん傷んでるな」


「それは部品を取ろうと思って」


「なるほど」


 金具を動かし、革を曲げ、縫い目を見る。


 俺とカイルも確認したけど、やっぱり職人が見ると細かい。


「この留め具は使える。こっちは駄目だな」


「え、駄目なの?」


「動くだけなら使えるが、ここが削れてる。鞄につけても長くは持たん」


「……ほんとだ」


 言われてから見ると、確かに金具の一部が薄くなっている。


 カイルでも気づかなかったところだ。


「じゃあ、こっちは?」


「これは大丈夫そうだ」


 一個ずつ見てもらう。


 結果、最初に俺たちが使えそうだと思っていた金具の全部が使えるわけではなかった。


「中古って難しいな」


「新品より見るところは多いだろうな」


「安ければいいわけじゃないって言われた」


「誰に?」


「ラグナの店のやつ」


「いいこと言うじゃねえか」


 十四歳くらいの店番に言われたとは、なんとなく言わないでおいた。


     ◇ ◇ ◇


 次は、3リルで買った革鞄だ。


「これは紐だけ直せば使えると思う」


「どれ」


 ダリオが確認する。


「本体は悪くないな。ここもまだ大丈夫だ」


「直せる?」


「直せるぞ」


「いくら?」


「うちでやるなら……そうだな。材料込みで4リルってところか」


「4リル」


 買ったのが3リル。


 直すのに4リル。


 合計7リル。


「これ、直したらいくらで売れそう?」


「中古だろ? 状態を考えても10リル前後じゃないか」


「……3リル」


「何が?」


「うまく10リルで売れても、3リルしか残らない」


「そりゃそうだろ」


「もっと儲かると思ってた」


「買って直して売るだけで簡単に儲かるなら、みんなやってる」


 また普通のことを言われた。


 しかも売れなければ、その間ずっと金が鞄に変わったままだ。


「直す?」


「……お願い」


「いいのか?」


「ここまでやったら、売れるか試したい」


 大儲けにはならなくても、実際に売れるかは知りたい。


 これも勉強だ。


 最近、勉強代が増えている気がするけど。


     ◇ ◇ ◇


 最後に、金具がたくさん残っていた大きな鞄を見てもらう。


「これは悪くないぞ」


「ほんと?」


「ああ。この二つはそのまま使える。こっちの三つも少し手入れすれば大丈夫だ」


「おお」


 ようやく当たりっぽい言葉が出た。


「これ、2リルだった」


「なら安いな」


「だよね!」


 思わず声が大きくなる。


 やっぱり全部が失敗だったわけじゃない。


「こういう金具って、新しいの買うと高い?」


「物によるが、これと同じくらいの物を揃えようと思えば2リルじゃ無理だな」


「じゃあ、こういうの持ってきたら買う?」


 ダリオが俺を見る。


「俺が?」


「うん。ラグナだと、売り物にならない鞄が結構あるんだよ。そこから使える金具を取れれば安く仕入れられるかもしれない」


「状態が良ければな」


「いくらなら?」


「先に値段を決めるのは無理だ。物を見ないと分からん」


「そっか」


「ただ、使える金具なら持ってきてもいいぞ。うちでも修理や試作に使える」


 それだけでも十分だった。


 誰に売るか。


 何を買うか。


 いくらなら価値があるのか。


 前回は何も分からないまま店に入ったけど、次は違う。


「じゃあ、次ラグナ行ったら探してみる」


「大量に持ってくるなよ」


「分かってるって」


「お前の場合、言っとかないとな」


 なんでみんな同じことを言うんだ。


     ◇ ◇ ◇


 その日の帰り、仕入れについて紙にまとめた。


 9リルで買った物のうち、使える金具はいくつかあった。


 3リルの鞄は、修理に4リル。


 部品取り用として買った2リルの鞄は当たり。


 最初の4リル分は、使える物と使えない物が混ざっていた。


 大成功ではない。


 でも、大失敗でもない。


「次はもっと選べるな」


 状態の悪い金具は避ける。


 革そのものを使うなら、表面だけじゃなく曲げたときの状態も見る。


 修理して売る物は、修理代まで考えて買う。


 そして、ダリオが使えそうな金具なら買い手の候補がいる。


 俺は最後に一行書き足した。


『次にカイルにも教える』


 あいつと一緒に選んだ物が、実際どうだったのか。


 次にラグナへ行ったら話しておこう。


 特に2リルの鞄は当たりだった。


 あれについては、ちょっと自慢してもいいと思う。


 問題は、8リルの工具箱を買わなかったことまで思い出して、少しだけ惜しくなっていることだ。


 いや。


 あれは買わなくて正解だった。


 たぶん。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。