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転生したので貯金します。たぶん。~現代知識で稼ぐ、浪費家の異世界生活~  作者: 千流


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ラグナで見つけたもの

ラグナを発つ日の朝。


 宿の前では、ベルクさんが荷馬車に積んだ荷物を確認していた。来たときより減った物もあれば、逆にラグナで仕入れて増えた物もある。


「そっちの箱、もう少し奥でいいですか?」


「ああ。揺れて動かないようにしといてくれ」


「分かりました」


 俺も荷物を押し込み、隙間ができないように位置を調整する。


 二回目の旅だからか、こういう準備にも少し慣れてきた。最初にエルダへ行ったときは何をすればいいのか分からず、ほとんどベルクさんを見ているだけだった気がする。


「よし。こんなもんだな」


「もう出ます?」


「ああ。忘れ物ないか?」


「大丈夫です」


「変な筒は?」


「ありますよ!」


「ならよし」


 忘れても困らない気はするけど、6リル払った物を置いて帰るのは嫌だ。


 今のところ用途不明でも、俺の物には違いない。


     ◇ ◇ ◇


 ラグナの町を出ると、来たときと同じ街道をリーネへ向かう。


 行きと違うのは、もうラグナが名前だけの町じゃなくなったことだ。


 旅人が多く、宿や食堂が並び、旅に必要な物がよく売れる。逆に旅人が荷物を減らすために物を手放すから、中古品を扱う店も成り立っている。


 そして白いソースも売れた。


「結局、二軒目はどうだったんですか?」


 荷馬車に揺られながら聞くと、ベルクさんが前を向いたまま答える。


「話はした。ただ、今回は見送りだな」


「売れなかったんだ」


「そんな毎回うまくいくか」


 一軒目で100リル。


 二軒目はゼロ。


 それでも、一つの町で100リルだ。


「何で断られたんです?」


「味は気に入ってた。ただ、油を多く使うのが嫌だったらしい。客に出すなら値段を上げる必要があるし、そこまでして新しい物を増やしたくないってさ」


「なるほど……」


「店によって違うんだよ。美味いから買う、で全部決まるなら楽なんだけどな」


 エルダで石鹸を置いてもらったときもそうだった。


 売れるかどうかは、物がいいかだけでは決まらない。


 白いソースも同じらしい。


「でも、また別の町でも売るんですよね?」


「機会があればな」


「一軒100リルくらいで?」


「相手次第だって言っただろ」


「じゃあ、もっと高く売ることも?」


「あるかもな」


 やっぱり気になる。


 俺が受け取った300リルを超えるまで、あと200リル。


 ……いや、何を数えてるんだ俺は。


 もうベルクさんに売ったんだから、その先はいくら稼がれようと関係ない。


「そんな顔するくらいなら、最初から売らなきゃよかっただろ」


「売ったことは後悔してないです」


「じゃあいいじゃねえか」


「でも気になるものは気になるんですよ」


「面倒くさい奴だな」


 自分でもそう思う。


     ◇ ◇ ◇


 昼の休憩で馬を休ませている間、俺は荷物から紙を取り出した。


 今回の旅で気づいたことを書いておくためだ。


 まず、白いソース。


 作り方そのものをまとめて売る方法もあれば、一軒ずつ教えて金を取る方法もある。前者はすぐ金になるし、その後の手間がない。後者はうまくいけば大きくなるけど、自分で相手を探して回らなければならない。


 どっちが正しいという話ではなさそうだ。


 次に、ラグナの中古品。


 旅人から買い取って、別の人へ売る。壊れている物は直すこともあれば、あえて安いまま売ることもある。同じ種類の物でも状態によって値段が違う。


 自分で何かを作らなくても商売になる。


 これは今までの俺にはなかった考え方だった。


 そして――。


『カイル 中古道具屋』


 そこまで書いて、手が止まる。


「何で名前まで書いたんだ?」


 横からベルクさんに覗き込まれた。


「うわっ、見ないでくださいよ」


「カイルって誰だ?」


「向こうの店にいた人です。俺と同じくらいの歳の」


「友達できたのか?」


「二回話しただけですよ」


 友達というほどではない。


 名前を知って、少し話した。それだけだ。


「じゃあ何で書いた?」


「……また行くことがあるかもしれないから?」


「俺に聞くなよ」


 そう言われても、自分でもよく分からない。


 ただ、あの店は面白かった。


 次にラグナへ来たとき、どんな物が入っているのかも気になる。


 カイルがどんな値段をつけるのか聞くのも面白そうだ。


「ベルクさん、またラグナ来ます?」


「そりゃ来ることはあるだろうな」


「いつ?」


「まだ分からん」


「次、俺も――」


「今帰ってる途中だぞ」


「あ」


 そうだった。


 まだリーネにも着いていない。


 俺は紙を畳んで荷物へ戻す。


 ラグナで使った金は10リル。


 自由に使える金は70リル残った。仕事用の100リルには手をつけず、貯金の4,900リルは当然そのままだ。


 二日間で10リルなら、かなり我慢した方だと思う。


 そのうち6リルは、いまだに何に使うのか分からないけど。


「……次までには使い道考えよう」


「まだ諦めてなかったのか?」


「6リルしましたからね」


「安い勉強代だったと思っとけ」


 それはまだ早い。


 あの筒が何かに化ければ、6リルどころじゃない価値になるかもしれない。


 たぶん。


 ……そういう考え方をするから、物が増えるんだろうな。

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