第十章~第十一章
第十章 国内行方不明者発生状況
国内における行方不明者数は、年間を通じて一定数報告されている。
その大半は、短期間のうちに所在確認に至るものであり、事件、事故、遭難、自発的失踪等、既存の分類に基づき処理される。
しかしながら、一部の事例においては、長期間にわたり発見されない、あるいは発見に至らない状態が継続するものが存在する。
近年、これら未解決事例の中において、以下の共通点を有する事案が増加している。
・屋内環境における消失
・外部への移動記録の欠如
・争った形跡の不在
・所持品の残置
これらの事例においては、対象が当該空間に存在していたことは確認されているものの、その後の移動経路が一切特定されない。
また、第三者の関与を示唆する痕跡も認められず、物理的な消失過程を再現することが困難である。
さらに、防犯記録、通信履歴、目撃証言等を総合的に参照した場合においても、当該消失が発生した時間帯及び経緯について、合理的な説明が成立しない例が確認されている。
当該事例は、従来の失踪分類(事件、事故、遭難、自発的失踪等)において説明が困難であり、いずれの分類にも完全には該当しない性質を有する。
一部においては「神隠し」として扱われることがあるが、当該呼称は便宜的なものであり、事象の本質を示すものではない。
しかしながら、当該事例の増加傾向については、既存の枠組みのみでは十分に説明できない状況にある。
最後に付記する。
当該事例に共通する特徴は、「消失が確認されているにもかかわらず、その過程が一切観測されていない」点にある。
すなわち、対象の不在は確認されているが、その不在に至る経路が存在しないという状態が成立している。
当該点については、現時点において合理的な説明は得られていない。
第十一章 本書でいう神隠し
しかしながら、本書で説明する「神隠し」は、前項に示したいずれの分類にも該当しない。
すなわち、事件、事故、遭難、自発的失踪等、既存の枠組みによって説明されるものではなく、物理的及び科学的な因果関係が確認されない失踪を指す。
当該事象においては、対象の消失は明確に確認される一方で、その過程は一切観測されない。
発生場所は限定されず、従来の伝承において指摘されてきた境界領域に限らず、屋内環境を含むあらゆる場所において確認されている。
また、当該事象においては、帰還例は一切確認されていない。
この点において、従来の神隠しと決定的に異なる性質を有する。
当該事象は、外形的には従来の「神隠し」と区別が困難であり、世間一般においては同一のものとして扱われる場合がある。
しかしながら、その実態は全く異なるものであり、当該認識の混同は、事象の理解を著しく阻害する要因となる。
すなわち、本書における「神隠し」とは、従来の伝承に基づく現象ではなく、別個の事象として扱われるべきものである。
当該事象については、次項において詳細を記載する。
なお、次項以降の記述には、御神に関する認識を直接的に含む内容が含まれる。
したがって、注意事項に記載された各種徴候が認められる場合には、直ちに閲読を中止すること。
当該判断の遅延は、観測状態への移行を促進する要因となる。
最後に付記する。
本項の内容を理解した時点で、既に従来の認識からの逸脱が生じている可能性がある。
当該点については、各自の判断に委ねるものとする。




