2.白の魔女と黒の男(1)
エレオノーラの私室の隣を繋ぎ、男の部屋とした。
万が一に備えて結界が張られているので、主導権はエレオノーラにある。
「エレナ様……。それって……」
「しばらく私が面倒見ることになったの! だからアリシア。彼の身の回りのもの、用意してちょうだい」
「はぁ……」
何が一体どうなっているのだと、メイドのアリシアはリベルトには近づこうとせず、そそくさと部屋を出てしまう。
とりあえず部屋に連れてきたはいいものの、何をすればいいか見当もつかない。
振り返ってリベルトの様子を窺えば、警戒心はまったく解けておらず、エレオノーラは睨まれるばかり。
悩ましい……。
エレオノーラは魔女ではあるが、リベルトに嫌悪を抱いていなかった。
むしろ同情すると言った方が感覚としては近いだろう。
“蛾の姫”と揶揄され、王族の権威を落としているのがエレオノーラだ。
魔女としての劣等感。
王族としての不甲斐なさ。
なにをとってもエレオノーラを惨めにさせることから、国から排除される男に多少の親近感さえ抱いていた。
「リベルト。そんなに怖がらなくても大丈夫よ。あなたの嫌がることはしない」
とは言いつつも、本に書かれた内容と実際ではどれだけ違うのか気になり、エレオノーラの手はうずうずしている。
何とかして接近する方法はないかと思案し、パッと閃いて目を輝かせた。
「お風呂、入らない?」
「お……ふろ……?」
「そう。やっぱり清潔な方がいいでしょ? ずいぶんと煤で汚れてしまっているからね」
意気揚々と提案してしまったが、リベルトから返事はない。
さすがに強引すぎたかと考え、冷汗が流れ出た。
「せ、せっかくリベルトは綺麗なんだもの! もったいないわ!」
「……キレイ?」
「そう、綺麗なのよ! いい加減に扱ったら空も飛べないわ!」
誰もが羨む色を持っている。
エレオノーラはその色を持たないばかりに外に出ることを禁じられていた。
魔力を持たない身では、外の世界は危険だと言われ、生まれてから一度も城の敷地から出たことがなかった。
そんなエレオノーラにとって、リベルトは外から来た未知の存在。
本でしか知り得なかった存在が目の前に現れたとなると、警戒心よりも好奇心が上回っていた。
アリシアに頼んで風呂の支度をしてもらい、リベルトを浴室に連れていく。
戸惑うリベルトにエレオノーラはにこにこして風呂に入るよう促すが、一向にリベルトは服を脱ごうとしない。
風呂の入り方がわからないのかもしれないと思ったエレオノーラは袖をまくり、リベルトの衣服に手をかけた。
「えっ!? あっ、あの……!」
「お風呂には服を脱いで入らないと。身体もあたたまるからねー」




