6.欲しいものは掴み取れ!(5)
「傍に……いてほしいの。私、リベルトが好きだからっ! でも押しつけるくらいなら想うことだけは許してほしくて……」
「だから! どうして聞いてくれない!? 今までずっと伝えてきたけど、まったく伝わってなかった!」
それは期待してもいいこと?
今までリベルトが語りかけてくれた言葉を思い出し、頬が熱くなる。
「いいの? リベルトも同じ気持ちだって思って。私、ただリベルトを傍に置くだけじゃ満足しないよ?」
「これが男だ、魔女だからとかはわからないけど。エレオノーラを特別に想ってる。特別好きだって、ちゃんと感じてる」
魔女を怖がるリベルトからエレオノーラに触れることは、きっとエレオノーラが手を伸ばす以上に怖いこと。
望みなんて口に出来ないなかで、それでもエレオノーラを求めてくれる熱い手のひらに涙が出るのは当たり前だ。
「親愛的なものだと思っていた。私、それでもリベルトと一緒にいたくて……。おっ……同じ気持ちとは思いもしなくて……!」
「男でも許されるなら、俺はエレオノーラにもっと触れたいよ。こんなに大切にされて、好きにならずにはいられないよ」
「! わっ……私も! もっとリベルトに触れたいの! ……ダメ?」
「――ダメじゃない」
出会いは魔女と男だったかもしれない。
今、区分はなくなって、想い合う二人になれた。
周りから許されない恋というのはこういうものを指すのだろうと、エレオノーラは再びリベルトに噛みついて実感する。
外への好奇心。
いつしかそれはリベルトを知りたいという動機と結びついて、世界を見てみたくなった。
誰にも後ろ指をさされない恋人として生きるにはどうしたらいいのだろう?
知りたい。
知るためにはこの城は狭すぎる。
懐いているから好きだと言っているのではなく、奥底まで深く知りたくなる愛情ならば、エレオノーラは全部をさらしだしても構わない。
恥ずかしさも全部、同じように頬を染めるリベルトが見たいから――。
結界で立ち入ることの出来ない寝室にリベルトの手を引いて、扉を閉めて二人の時間に酔う。
歯止めの効かない恋情とはこういうことだ。
飽きずに手を伸ばしてリベルトの唇を堪能するどころか、もっと欲張りになって舌を差し込むと、エレオノーラの身体が疼きだした。
もっともっとと欲しがって、背伸びをして舌を触れあわせるたびに身体が痺れていた。
いっそ火傷して焦げ付いてしまえばいいのにと、盲目になって許されない恋を忘れていた。
「リベルト、来て」
淑女らしい恥じらいを失って、エレオノーラはリベルトの手を捕まえてベッドに引き込んだ。
出会ったときよりも厚みを増した胸に頬を押しあてて、引きしまった腰に腕を回す。
「エ……エレオノーラ……。それ以上は……!」
「ずっと気になっていたの。触るとわかるわね。リベルトの肉付きは私と根本的に違うんだわ」
「……それはどういう意味で言ってる?」
「私のお腹ってぷにっとしているの。お姉様たちは細くて平べったいけれど、私はお肉を掴めちゃうのよ。リベルトも平べったいとは思っていたけど、お姉様たちとは違うなって」
「それって触ってくれと言ってるようなものだよ、エレオノーラ」
「えっ? ――ひゃあっ!?」
エレオノーラの手を丸々覆ってしまえるほど大きな手に捕まれて、指を絡められる。
反対の手がエレオノーラの腹に押しあてられて、くびれのラインを包むように滑っていった。
くすぐったさに笑ってしまうだけでなく、ピリッとした痺れに裏声が漏れた。
(やだっ、なに今の。はっ……恥ずかしい……)
あまり触られると耐えられないとエレオノーラが身をよじると、リベルトはベッドにエレオノーラを横たわらせて上乗りになる。
白銀の髪がベッドに広がって、黒髪がエレオノーラの首や鎖骨をくすぐっていく。
これはいわゆる肌合わせの一環だと気づき、エレオノーラはこの上ない恥ずかしさに悲鳴をあげた。
「まっ……待って! これってリベルトと肌を合わせるってことなの!?」
「? 違うの?」
「ちがっ……そんなつもりじゃ……!」
そのつもりはなくとも、流れにのせられてしまえば許せてしまう浮つき方だ。
ただ両想いになったばかりで肌合わせをするのはいささか不謹慎だと、エレオノーラの貞操観念がブレーキをかける。
散々その気にさせておいてそれはないだろうと、リベルトはムッと口をとがらせてエレオノーラの肩に噛みついた。
「んっ!? なにして……!」
「別に。無理やりすることでもないから」
口ではそう言いながらもリベルトはなかなか肩から唇を離そうとしない。
舌先が噛みつき跡をなぞり、エレオノーラはびくびくと震えながらリベルトの手を握り返して涙を浮かべた。
「いつか……私に勇気が持てたら……。その時、もっとリベルトに触れていい……?」
触れたい気持ちは捨てられない。
触れられるのは覚悟がなく、身を小さくして「待ってほしい」と懇願するしかなかった。
恋人となってもこのスピードは速すぎる。
積極的にリベルトに触れたくせして、情緒にはこだわるワガママさ。
切実な思いにリベルトは困ったように苦笑いすると、身を起こしてエレオノーラの乱れた前髪を指で梳いた。




