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『最弱不遇職の詩人と歌姫』〜効率至上主義の世界で見捨てられた僕らが、世界の理を書き換えるまで〜    作者: muo


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第18話:聖剣の真実と、甘き皇女



蟲との激しい戦闘を無事に終えて、



僕らは地下迷宮〈バシリカ・シスタン〉の光る扉な前にいた。



光り輝く扉を開け、僕は仲間に声をかける。



「皆さん、お疲れ様です」



ドサッ! と、ものすごい勢いで勇者カインが抱きついてきた。



「タナカ! お前も勇者だ。



俺の、いや……俺たちの盟友と呼ばせてくれ!」



「はは……自分で自分を語り継げないので、



それは胸に秘めておきますね……」



僕は苦笑しながら、笑顔でそう返した。



すると、



隣で賢者ミアと剣聖グラハスが自分の手を見つめながら興奮気味に声を弾ませる。



「私の魔法も、これはもう『大賢者』の領域よ!」



「吾輩も、まさかこの歳でこの高みに至れるとはな……!」



それぞれがかつてない興奮と達成感に溢れていた。



だがその瞬間、



僕らの権能によって彼らに顕現していた



「規格外の聖剣」と「超絶バフ」の効果が時間を迎え、



光の粒子となって消失していく。



(あ……消えちゃった)



みんな、自分の武器に戻って、少し名残惜しそうだった。



だが、部屋の中央にはまだ光が残っている。



そこにはボス(ガーディアン)の姿はなく、



ただ一本の『本物の聖剣』だけが、



神聖な光を放ちながら台座に突き刺さっていた。



勇者たちはその光景に目を見張っている。



「……選ばれたってことかな」



僕は隣のクックに、罠や危険がないか小声で確認した。



「クック、バグや危険な反応は?」



「センサーに反応はありません。安全です」



「カイン。大丈夫だとは思いますが、一応気をつけてください」



「ああ、わかった」



カインがセミブラウンの髪を靡かせ、



意を決して恐る恐ると手を伸ばす。



そして、その柄をガシリと掴んだ。



一瞬、視界が真っ白になるほどの光が走り、



時が止まったかのような静寂が訪れる。



――ザッ!!!



力強い音と共に、



カインは台座から『聖剣を引き抜いた』。



その瞬間、



僕らの視界に鮮やかなシステムウィンドウがポップアップする。



【クエスト:地下迷宮の聖剣 ── コンプリート】



【メインクエスト進行:聖剣を手にした男】



さらに、光の球が次々と浮き上がった。



パーティへのアイテムドロップだ。



賢者の杖(魔法威力+45%)


剣聖の剣(斬撃速度+30%)


聖なる短剣(シーマ専用:呪い耐性付与)


(おお、一気に装備が豪華になったな。これは魔王討伐用かな)



見渡してみるが、僕とクックの前には何も浮いていない。



いつもだが、武器をドロップしたことない。



ゲームシステム側に想定されていないらしく、



当然のようにドロップ報酬は何もなかった。



カインは新しく手に入れた聖剣を見つめ、



ぽつりと呟く。



「これで……本当に魔王を倒せるのか……?」



無理もない。



さっきまでクックが出していたチート武器の方が、



明らかに格も攻撃力も、全てが上だったからだ。



本物の聖剣が霞んで見えるってどういうことだ。



「い、いけますよ!



僕らは……皆さんのステータスにさらにバフを重ねがけできますから、



この武器でも十分に倒せます……きっと!」



僕もそう苦笑いで答えるしかなかった。



「……よし、帝都に戻ろう!」



カインだけは聖剣を片手に、力強く前を向いた。



それから僕らは、



新しく手に入れたドロップ武器の感触を確かめるように、



道中のモンスターを討伐しながら帝都へと戻った。



やはり、さっきの「規格外バフ」を体感した直後だからか、



本人たちは自分の本当の強さに半信半疑の顔をしていた。



けれど、



一度最高峰の感覚を体感したことで向上した彼らの技や動きは鋭く光り、



彼らは確実に自らの実力を引き上げていた。



帝都コンスタンティノープルにある広大な教会。



中に入ると、聖女ティアが優しい微笑みを浮かべて出迎えてくれた。



「皆さん、やり遂げたのですね。



これでようやく、魔王討伐に向けて大きな歩みを進められます」



本当に良かった、とホッとした顔で告げるティア。



「ティア。それで、肝心の魔王の状況はどうなの?」



賢者ミアが真剣な表情で尋ねる。



全員の視線がティアに集まった。



「……今もまだ、魔王城に留まっています。ただ──」



ティアは少し表情を曇らせ、言葉を続けた。



「魔王城から『ワールドコネクト(世界共振)』を行っている、



とシステム神言が出ております」



(ワールドコネクト……? なんだろ、それ。新しいイベントか?)



僕が首を傾げていると、隣にいた勇者カインが、



見たこともないほど顔を青ざめさせた。



「ワールドコネクトだと……!?」



「カイン、それって一体──」



僕が詳細を聞こうとした、



その瞬間だった。



「それは世界を作り変える……奇跡の所業……」



背後から、



鼓膜にまとわりつくような、あまりにも甘い声が聞こえた。



全員がハッとして振り返る。



そこに立っていたのは



──トプカプ宮殿にいた、皇女メフリマスだった。



彼女の後ろには、



まばゆい黄金の鎧を纏った近衛騎士たちが数人、静かに控えている。



「皇女殿下……!」



勇者パーティの面々が、



一斉に片膝を突いて最敬礼で出迎える。



やばい、と思って僕も慌ててその動作に倣った。



「皆様、頭を上げてください。



ここではそのような礼儀は必要ありませんわ」



メフリマスはふわりと微笑んだ。



その場にいる全員を魅了するような、



あまりにも甘美な雰囲気。



「それに」



皇女は言葉を繋ぐ。



「勇者たちには国を……



いえ、この世界を救って頂かないといけませんものね」



その言葉遣いは完璧で、優しさに満ちている。



……けれど、跪いたまま彼女を見上げた僕は、



奇妙な違和感を覚えた。



その瞳の奥──美しく光り輝いているのに、



どこか底が知れないほど「黒い」のだ。



「メフリマス皇女、どうぞお任せ下さい」



カインたちが力強く応える。



そして、誰よりも力の籠った声で、



剣聖グラハスが深く頭を下げて告げた。



「イエス。マイロード(我が主よ)」



そうか、



グラハスからしたら彼女はいわば直属の上司にあたるわけだ。



その異様な光景を、



僕はクックと並んで静かに見守っていた。



すると、メフリマス皇女が長いドレスの裾を揺らし、



こちらへとゆっくり近づいてくる。



「タナカ……だったかしら?」



誰もが心を奪われるような、完璧なお姫様の笑顔と声。



これが皇族パワーというやつか。



「はい。皇女様。宮殿ではありがとうございました。



何か僕たちにご用でしょうか?」



「……さすがですね。スマートな対応ができる方は素敵ですわ」



皇女の放つ圧倒的なオーラに気圧されながらも、



なんとか冷静に対応したのが評価されたのだろうか。



まあ、伊達に最近、元王女(シーマ)を相手にしていない。



「いえ、光栄です……」



メフリマスはふふっ、



と鈴を転がすように笑いながら本題を切り出した。



「先ほどのワールドコネクトについてです。



魔王がその儀式を完全に完了してしまう前に、



私たちは魔王を討伐せねばなりません」



その言葉を聞いた瞬間、小さな引っかかりが生まれた。



何かがおかしい。



少しだけ違和感がある。



……それが何なのかはわからない。



「よって……皆様は準備ができ次第、すぐに宮殿に来てくださいな」



(皇女自ら、わざわざ僕らを迎えに来てくれたのか?)



「……分かりました。



一度、宿に戻って準備をしてから向かいます」



僕が答える横で、



クックの身体がわずかに強張るのが分かった。



やはり、この皇女には何かがある。



それに……今日はずっと、隣にいるシーマの様子も変だ。



一言も喋らず、微かに震えている。



「それでは、宮殿にてお待ちしておりますわ」



メフリマス皇女はそう言い残し、



部屋の中に甘いユリの残り香だけを漂わせて、優雅に去っていった。



閉まった扉を見つめながら、背中に冷たい汗が伝わった。

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