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『最弱不遇職の詩人と歌姫』〜効率至上主義の世界で見捨てられた僕らが、世界の理を書き換えるまで〜    作者: muo


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第14話:世界と王女



数時間後、目を覚ましたルクサンドラは、



「すまない……」



と、恥ずかしそうに俯いていた。



そして、力強く宣言する。



「私はまだ『シーマ』の名前と仮面は外さない」



決意の灯火を宿した瞳でそう告げ、再び仮面を装着した。



「わかった。その時が来るまではシーマって呼ぶよ」



クックも同調するように「私もそうするねー」と頷く。



シーマはもう一度。



「ありがとう」



と、照れ臭そうに小さく呟いた。



部屋を出て、クロウに声をかける。



「長時間申し訳ない。助かったよ」



「いいさ。勇者の治療も順調みたいだ。



例のタイド・シェイドも進展があれば共有するよ」



クロウはひらひらと手を振り、軽い調子で付け加えた。



「で、(魔王)はいつ攻略しに行くんだい?」



「......聖女様に止められてるから」



言い訳をして逃げる僕の背中に、



クロウは最後に不吉な言葉を残した。



「……時間はそこまでないから」



ギルドを後にし、歩きながら話す。



そうだ、聞いておかなければ。



「シーマ、その仮面をつけて何か変化は感じない?」



「心なしか身体も軽い。力も湧いてくる気がする……」



(なるほど、効果は出ているのか。



ノクターンの『微増』はこの世界において、



かなりの強化に相当するのかもしれないな)



「肯定します」



「クックさん、心を読まないで」



「シーマ、この世界のこと色々聞いていいかな?」



「例えば職業やレベル、スキルの認識について」



「当然だ」



彼女は笑顔で説明してくれた。



「この世界では、職業は生まれた瞬間に『神言』によって授かる」



「スキルは流派で身につくものだ。私は騎士流の技を修めている」



「あとレベルだったか……?それはわからないな」



レベルの概念はなく、スキルは技術として存在するのか。



「生まれた瞬間か。ってことは、シーマの職業はまさか」



「……王女だ」



少し恥ずかしそうに彼女は言った。



この超レア職だろう。



「言えたらでいいんだけど、特殊スキルとかはある?」



シーマは少し考え込み、



「よく分からないから全部伝える」と紙に書き始めた。



信頼されすぎて少し怯えるが、



悪い気はしない。



その内容を見て、僕は絶句した。


【シーマの特殊スキル】


• 世界の構造への干渉


• 聖剣・神器の起動資格


• 古代契約の継承


• 正統なる国の後継者


• 聖なる血統(救済)


• 呪われた血統(破滅)


• 未来を見通す夢


• 運命を導く(運)



(完全に勇者級のスペックだ。これが王家の力か……)



「世界の構造への干渉」が特に気になる。



呪われたスキルもあるようだが、



他で打ち消し合っているのだろうか。



「ありがとう」



「シーマは……主人公を張れる器だってよくわかったよ」



「お兄ちゃん頑張って! いや、いつも頑張ってるけどね」



クックがなぜか慰めてくる。



「私は……何か役に立つだろうか」



強がって生きてきた反動か、



急に甘えた少女のような顔を見せるシーマ。



「良いことは思いついたよ」



自分の物語は自分で終わらせるべきだ。



きっと彼女なら、



自分の手で名前を取り戻せるだろう。



僕は操作パネルを叩き、



シーマのスキルメモをお気に入りリストに入れて大切に保管した。



宿に戻る頃には、



夜の闇がすっかり深まっていた。



「遅くなりましたが、そこでご飯食べよー!」



クックが指さしたのは、異様な存在感を放つ建物



――いわゆる「ファミレス」だった。



店内に響く電子音と、給仕ロボット。



客はローブ姿の魔導師や商人たち。



凄まじい違和感だが、二十四時間営業で味も保証されている。



慣れるしかない。



「シーマ、この景色を見て違和感はある?」



「ファミレスか?言われてみれば何か……。



いや、いつもと変わらないな」



真剣に考え込む彼女を見て確信した。



僕らは元の世界の景色を知っているから違和感を持つが、



彼らにとってはこれが「ベース」なのだ。



「そんなことより早く注文しよーよ!」



クックが既にメニューを選んでいる。



「僕はかつ丼にしようかな」



この世界で初めて、かつての好物を頼んでみる。



「私もかつ丼が好きだ。同じのにしよう」



かつ丼を食べる元王女。



思わず笑ってしまった。



「私はステーキ! 食後のデザートはいちごパフェ一択だー!」



キメ顔で宣言するクックに続き、



シーマも顔を真っ赤にして小声で頼んだ。



「私も……いちごパフェ……」



届いた料理を囲み、たわいもない会話を楽しむ。



亡くなった両親の顔がふと浮かぶ。



この何でもない時間が、ひどく大切に感じられた。



宿屋に着き、僕はふと気づく。



「あ、いつもクックとは相部屋だから、



もう一部屋取らないと」



「私は構わない。



体調も戻った、野宿でもいいくらいだ」



「いやいや、さすがにそれは……」



「もう寝るだけですし、



三人で一部屋でいいよねー! 私、シーマと一緒に寝る!」



眠たくなったのか、クックが適当に告げる。



「僕が気にするんだよ……」



ドキドキしながら呟く僕をよそに、



二人は同じベッドに入ると、あっという間に寝息を立て始めた。



一人眠れず、窓を開けて夜空を仰ぐ。



ベッドでは美女二人が仲良く眠っている。



「お腹いっぱい……」



「パフェ美味しい……」



(そんな幸せそうな顔で、



そんなセリフを吐いてはいけませんよ……)



ふと、夜風が吹き抜けた。



その風に誘われるように、



僕も睡魔に身を委ねようとした時。



――クックが、目を開けた。



彼女はこちらを見つめ、声を出さずに口を動かす。



『見張られてます。ソルゲアです』



「どうしますか?」と目で合図してくるクック。



(クロウの顔も立てたい。警戒しながら泳がせよう)



僕がそう返すと、クックは再び目を閉じた。



(……もし、クックとシーマに手を出したら)



静かな怒りを胸に、僕も眠りについた。

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