殲滅 side:ロイター
更新が遅れてしまい、申し訳ないですm(__)m
初めから、違和感は感じていたのだ。
それが明確に感じられるようになったのは、俺達の部隊を前にして顔色一つ変えない少女を見た時だ。
普通の少女なら、それだけで抵抗する気力を失いその場にへたり込むなどするはずだ。
だが、目の前の少女は強者の余裕とも取れるような雰囲気を醸し出していた。
まるで、以前戦場で共に戦ったことのあるシャロン嬢のような。
それでもこちら側の勝利は揺るがないはずだった。
何せ、総司令官直々に選抜した戦隊五つが揃っているのだから。
――負けるはずがない
そう思っていた。
キース殿が敗れるまでは。
「貴様、何をした!?何故キース殿が倒れている!」
堪らず、俺はそう叫んでいた。
それに答えた少女の言葉は、あまりにも理解しがたく異次元で。
俺の知る限り最強の女性であるシャロン嬢よりもさらに強いではないか。
そんなもの、自分達で太刀打ち出来るはずもない。
シャロン嬢一人にも俺達は敵わなかったのだ。
そして目の前にはそのシャロン嬢よりもさらに強い少女が居る。
だが、組織から下った命令に背くわけにはいかない。
何としてでも、この少女を倒さなければならない。
任務を遂行出来なければ、あの総司令官のことだ…どんな罰を受けるか想像も出来ない。
「この女は早い者勝ちだ!一番始めに倒した者が好きに出来ることにしよう!」
折れかけた心を再び奮い立てるように、俺は周りに控える隊員達に命令を下した。
「「「うおおおおおお!!」」」
雄叫びを上げながら、隊員達は少女に突撃していく。
目を血走らせた者が多数であり、既に勝利を確信しているようだった。
――さすがにこの数を捌ききることは出来まい
俺はそう考えていた。
そんな可能性は、涅槃寂静の彼方にあるとも知らず。
「…それが、あなたたちの答ですか」
冷たく、少女はそう言い放った。
そこから先は、まさに悪夢のようだった。
我先にと少女に突撃していった三人の男が一瞬の内に吹き飛ばされ、隊員達の最後方へと戻される。
三人は、白目を剥いて気絶していた。
その出来事に隊員達は冷静さを取り戻したのか、油断して突撃するのを中止し、連携を組む。
そして少女を円形に囲み、同時に攻撃を繰り出した。
だが、その全てが意味を成さなかった。
少女は隊員達の動きなど意に介さず、一歩も動くことなくその場に立っている。
隊員達はその態度を"諦めた"と取ったのか、勝利を確信したように「もらったぁ!」と、声を上げた。
俺は目を疑った。
視界が白に染まったからだ。
辺りを見回す。
吐いた息が白く染まり、吸った空気が肺を凍り尽かせたように、胸を刺すような痛みが走る。
思わず後ずさろうとして、足を滑らせ転倒してしまった。
――ここら一帯が、一瞬の内に極寒の地と化していた。
「有り得ない…!こんなこと…神の所業だ…」
いつの間にか俺の隣に倒れていた男が、うわ言のように呟く。
――ああ…俺は…
少女が俺と隣の男以外の隊員を蹴散らし、こちらへ向かってくる。
――俺は…とんでもない化け物に…喧嘩を売ってしまったのか…
そして、それが俺の最後の思考になった。
◇ ◇ ◇
――はずだった。
なぜ俺はこうして目を覚まして立っている?
辺りを見回すと、隊員達は地面に胡座をかいて、沈んだ面持ちで座っている。
さっきまで極寒の地と化していたここも、今では既に元通りだ。
――生きていたのか?いや、まさか夢…
そう思った直後、はっとして隊服のポケットへと手を突っ込む。
――…やはり…
そこにあるはずの感覚が無かった。
GPSを取られてしまった。
これであの少女を追うことは出来ない。
まあ、ある意味好都合ではあるのだが。
しかし、これからどうするか。
任務に失敗してしまった以上、俺は組織に戻れない。
戻ったところで、想像するのも勘弁したい程惨い殺され方をされるだけだ。
その前にGPSを無くしてしまっているので、ここがどこなのかも組織の建物がどこなのかも分からないのだが。
「おい、お前たち」
俺は、地面に座り込む隊員達に言う。
「このまま組織に戻って無駄死にするか、俺と旅をするか、どちらがいい?」
その言葉に、隊員達はのそのそと立ち上がり、俺の方へと歩いてきた。
どうやら、俺に着いてくることを選ぶらしい。
そもそも、俺は初めからおかしいと思っていたんだ。
"使徒撃滅連合なんて、俺が住んでいたところでは聞いたことがなかったし、入隊してからもっとおかしなことに気付いた。
それは、俺たち人々がこの組織の存在すら知らなかったにも関わらず、訓練場が"英雄の修練場"だなどと呼ばれていると紹介されたからだ。
それでも、その時の俺はあまり疑っていなかった。
この組織が本当に人類の最後の砦となっていて、そこに自分が居ることが誇らしかった。
そして、俺は戦隊長となり、その中でも強い権力を持つ立場まで上り詰めた。
そこで、俺は組織の闇を見た。
だが、今更引き返すことなど出来ない。
引き返せば死。
そうなっていった奴等を、今まで俺は何度も見てきた。
だからこそ、目の前のこいつらを無駄死にさせたくない。
決めたんだ。組織を抜けると。
恐らく追手を向けられることになるだろうが、GPSを処理してしまえば――
「ぐっ…!?…う…あ…」
その時、胸を焼くような痛みが走った。
「…やはり、お前は組織を裏切ったか」
一人の隊員が突き出した剣が、俺の胸を貫いていた。
「…っく…!どういう…こと…だ…」
痛みを堪え、俺は言葉を紡ぐ。
「ふっ、どうせお前は死ぬのだ。冥土の土産に教えてやろう」
そして、男は話し始めた。
「俺達は、追放した少女を抹殺するというものの他に、もうひとつの指令を受けていた」
それは――と男は続ける。
「カラドボルグ戦隊隊長ロイター、あんたの動向を監視せよ。と言うものだった」
「…!?」
「結果は、さすが総司令官殿。あの方の予想と全く同じだった」
「…感づかれて…いたか…」
「ああ。そして、万が一少女の抹殺に失敗しても、あんたの謀反の疑いがはっきりすれば罰は無しにすると言われている。つまり、俺達は死なない!」
「…そうか」
――良かった。
こいつらは、あんな惨い殺され方はされないのか。本当に、良かった。
この世は腐りきっている。
いや、それは適切ではないか。
腐りきっているのは、人間だ。
俺の住んでいた地域は、差別が酷かった。
差別が存在しているせいで、何度も殺されかけた。
金を奪われ、服を奪われ、家族を奪われ、人としての尊厳も奪われた。
俺には何も残っていなかった。
俺から奪った奴等は、皆住むのには困らない程度の経済力を持っていた。
ただ、奪い、反応を楽しんでいたんだ。
ただの見せ物として、俺達が必死に集めた物を取り立てて、家族の涙を笑った。
俺は誓ったんだ。奴等を皆殺しにすると。
だが、それは家族が許してはくれなかった。
父、母、妹は、優しすぎたのだ。
あんな屑共を、庇ったのだ。
同じ人間ならば分かりあえると、話し合いで解決出来ると。
そんなものは、ただの幻想だった。
次の日、買い出しに行くと俺に伝えた三人は、崖から飛び降りて自殺した。
あんなことを言っておきながら、心の中はどうしようもない程傷付いていたのだろう。
なぜ、俺を一人置いていったのかは未だに分からない。どうせ、もうすぐ俺も逝くが。
こんな世界、もう救いようは無いのかもしれない。
だが、俺より先に組織を抜けたあの少女。
あの少女ならば、何かを変えてくれる予感がする。
俺はその先の世界に居ることは出来ないが、せめて上から見守っていよう。
「…かはっ」
吐血した。
もう命は長くない。
最後くらいは、綺麗に死なせて欲しいものだが、どうやらそうもいかないらしい。
俺はつくづく、神に嫌われているな…。
視界が狭まってくる。
意識が遠くなっていく。
まるで、意識だけが無限に続く旅に出るかのように。
願わくは…世の未来が…明るく…光……輝かん………こと…………を……………。
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